第183話 ゴールデンウィーク(11)

 マイクロバスから手を振る恵ちゃんに手を振り返しながら見送る。


 寮に戻る途中、厚生棟付近で平田さんと護衛役4人の宿泊棟組と別れ寮に戻る。

 田中さん達は一旦部屋に戻ってから厚生棟のシャワーを浴びに行く。

 連休中は、共同浴場も開いていないのでシャワーを浴びるためだ。


 私も部屋に戻りシャワーを浴びた後、今日の戦闘の報告書を書く為にパソコンを立ち上げた。

 報告書を書きながら買ってきたサンドイッチを食べたが、半分も食べられなかった。

 改めて自分の食の細さを実感した。

 残りは、明日の朝に食べよう。


 報告書を1時間程で書き上げ、内容を再確認してから中部駐屯地のサーバーにアップロードした。

 その後、三上さんと若桜さんにレストランで久喜さんから指摘を受けた件を、私の考察も交えたメールを送った。


 その後は、勉強と室内で出来る能力アビリティの訓練を行い、今日買ってきたプラモデルの1つを30分程作成してから寝た。


 翌朝、普段通り起きて、昨日の残りのサンドイッチと昨日購入したカップサラダ(小)を朝食として食べた。


 普段通りに魔力制御訓練棟での自主訓練を終えた後、田中さん達と護衛役4人を加えた訓練を行う。

 彼女達には、普段通り魔力調律の訓練を行ってもらう。

 そして今日から平田さんの魔力訓練を始める。


 平田さんに、これから行う訓練の内容を説明をする。

「これから行うのは、魔力塊マナ・コアの本格的な回復の為の前準備です。

 まず最初に行うのは、2つの魔力塊マナ・コアを繋ぐパスを使った主・副の魔力塊マナ・コアの魔力循環です。


 まずは、ランクE1の魔力量でパスを慣らす必要があります。

 新しく追加した3本の内2本のパスを副から主への魔力移送に使い、残り2本のパスで主から副への魔力移送に使って、魔力を巡回させます。


 5分魔力を巡回させたら10分休憩を1セットとして、5セットを朝昼夜それぞれに行います。


 そして重要な事は、決して、E1を超えた量を流さない事と回数を守って下さい。

 現状でパスが安全に耐えられるのは、魔力量E1までです。

 また、回数超過は、パスを必要以上に消耗する事になります。


 パスが慣れてきたら、少しずつ移送魔力量や時間を増やして行きますので、決して焦らないで下さい。


 それと、小傷こきずでも作った場合、2週間以上は回復に当てる事になります。

 当然、それ以上の傷を作った場合は、更に数週間が掛かります。

 だから、気おつけてください」

 と念を押しもしておく。


「うん、分かった。

 魔力量がE1を超えないようにして、循環させれば良いんだね。

 でも、何でパスがこんなに弱いの?」

 と平田さんから疑問が返ってきた。


 なので

「それは、平田さんの魔力塊マナ・コアが、それ以上の強度のパスが作れない程弱っていたからです。

 なので、まず最初のパスの強化を行わないと次に進めません。

 2周間は、ランクE1での魔力循環になると思います」

 と答えると

「分かった」

 と返事が返ってきて、スマホのタイマーを起動して、魔力の循環を始めた。

 ちなみに、平田さんはきちんと魔力量と時間と回数を守って行っていました。


 8時30分頃まで魔力調律の訓練を行ってから宿泊棟に移動した。

 宿泊棟の訓練所で、護衛役4人が田中さん達4人にマンツーマンで格闘技の基礎を教えている。

 結構派手に転がされたりしている。


 私は、田中さん達の格闘技の訓練を戦術課隊員に任せて、先日久喜さんに言われた内容から、思い付いた事を確認する為、訓練用のロングソードをもって彼女達と離れた所に移動する。


 私は、魔力による補正が無ければ見た目通りの力しか無い。

 だから、魔力による補正を切った状態での訓練も行っていたが、大した筋肉がつかなった。

 だから、筋肉がつきにくい体質だと思っていたが、昨日の久喜さんの一言で思い付いた事を試す。


 体格に合わないロングソードを、魔力を切った素の筋力だけで振るう。

 当然、ロングソードの重量の為、まともに持ち上がらず、身体が振り回される。

 それを強引に筋肉の力で制御しようとするから、一振りで体中の筋繊維が何本も切れる。

 能力鑑定の能力アビリティを使って、回復する様子を詳細に観察する。


 回復したら、再びロングソードを振るって筋繊維を切断させ、観察する。

 何度も観察して分かったのは、回復と治癒の能力アビリティが相互に干渉して過剰回復している事だった。


 そして、この過剰回復でも間に合わない時に、筋肉の超回復が見られた。

 私の場合、回復がランクD1、治癒がランクC7と高位なので、超回復を行う程の筋繊維の破断を行うのは結構過酷だ。

 それに、そんな事を繰り返していたら、直ぐに回復と治癒のランクが上がってより条件が厳しくなる。

 試行錯誤の結果、不完全だが回復に治癒の能力アビリティの干渉を制限する事が出来た。

 この時、超回復を行う上限が大きく下がった。


 訓練時は、回復と治癒の能力アビリティの相互干渉を切り離して、回復の能力アビリティしか作用しない様に制御するしかない。

 ただ、この方法、思ったよりも大変だった。

 少しでも制御が疎かになると、超回復が起こらない。

 でも、一歩先に進んだので良しとしよう。


 後で、結果を三上さんと若桜さんにも連絡する事にして、この訓練を9時45分まで訓練を行った。


 田中さん達にも声を掛け10時まで休憩する。


 休憩後は、高圧縮学習を使った学習を行う。

 既に南雲さんが手ぐすねを引いて待っている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る