第26話 研究者たち(6)
Side:三上・葉山・伊島・水無月
若桜が戻ってきた。
被験者の精液提供の同意を得たと報告後、直ぐに解析に戻る。
しばらくした後、被験者の入った個室の鍵の解除信号が上がったので、再び若桜が被験者の対応へ向かった。
それを見た羽佐田が、進捗確認しようと言い出した。
「若桜さんが、居ないけどいいの?」
と水無月が問うと
「
俺達の中で医者は、葉山と若桜しか居ない。
しかし、葉山は医者より研究者体質だ。
被験者に寄り添えるのは、若桜だけだ。
だから、俺達の暴走を止めることが出来る。
現状、研究より被験者の安全を優先するためにもブレーキ役が必要だ」
羽佐田の言葉に全員が同意した。
我々は、現状解析が終わった情報を持ち寄り確認を始めた。
◯
・鳴動は、
・膨張時間・大きさは時間を追うごとに増大。
・鳴動する
・体内外にある魔力は、女性因子魔力。
・生成される男性因子魔力は、全て魔力塊の維持に回されている為、自然放出は無い。
◯男状態の遺伝子状態
・遺伝子状態は、女性化以前の遺伝情報に比べ
・遺伝情報から推察される魔力の質は、
性転換前
許容量:15
把握量:7
生成量:201
耐久力:980
抗魔力:997
修復力:998
現状
許容量:11
把握量:3
生成量:141
耐久力:250
抗魔力:742
修復力:602
◯現状の魔力の質
・男性因子の魔力
放出魔力が無い為、判定不可
・女性因子魔力の質(推定値)
許容量:1000(1400)
把握量:1000(1200)
生成量:1000(1250)
耐久力:1000(1700)
抗魔力:1000(1400)
修復力:1000(1600)
お互いに持ち寄ったデータを確認を始めると異常だらけだ。
葉山「男の時の体質って、もろ
伊島「そうだな、再性転換後の値は大幅に落ちてるな」
水無月「それよりも、女性因子魔力の方がおかしいよ。なんで測定限界値超えてるのよ」
葉山「それは、俺もおかしいと思って、何度もデータの見直しと計算を直したんだ」
三上「間接データからも試算したが、この位が推定値になった」
羽佐田「鳴動の理由は、男性因子魔力で女性因子魔力を封印しよう事に対する反発だろうな」
水無月「このままで、女性因子魔力が爆発しそうよね」
葉山「そうなるだろうな」
水無月「その場合、被験者どうなるんだろう?」
羽佐田「考えられる可能性は、
1.魔力暴発による死亡。
2.男性因子魔力を打消し、女性因子魔力が取って代わる。
3.男性因子魔力が、このまま女性因子を抑えこんで現状維持
4.男女両方の魔力喪失。
5.男女両方の魔力が融合。
6.男女の魔力因子が
7.
これぐらいか」
伊島「そうだな、魔力暴発で死亡する確率はかなり低いと思うよ。
鳴動で漏れ出す魔力量が増えてきているから、急性魔力中毒で死亡する確率の方が高いと思う。ただね、現時点で前兆現象が起こってもおかしくない量が確認されているのに確認出来ないから可能性は低いと思う」
三上「そう考えると、
葉山「一番起こりそうなのは、女性因子魔力が占有することで再性転換が起こることかな・・・ここでは
水無月「前例がない
現状男女因子で取込み合いしているから」
羽佐田「そうすると、割合的には
魔力が融合する確率は、1%未満
2つの魔力が共存する確率は、5%
女性因子魔力が占有する確率が70%
男性因子魔力が占有する確率が20%
その他、4%
ぐらいか」
三上「そうなると、臨界がいつ起こるかだな。
鳴動の膨張率と漏れ量から判断できるか?」
羽佐田「男性因子の魔力値が不明だから、遺伝情報の値で計算してみるか」
水無月「
葉山「それは、辞めたほうが良いな。
薬に影響されるのは、男性因子の魔力だけだろう。
抑制薬を増加薬に変えも効果より先に臨界に達するだろう」
水無月「そっか、上手く薬で抑えて、両方の因子のバランスを整えて共存出来たら、男女間を自由に変更できるかなっと思ったんだけど」
葉山「それは、面白いな。
誘導パルスと薬で制御すれば可能性はあるな。
そういう事ができるなら、
今まで、複数の
羽佐田「臨界点までの想定時間が出たぞ。
現時刻から4~8時間中に起こる可能性が高い。
幅が有るのは、漏れ量のバラツキが大きいからだ。
水無月、葉山、面白そうな事言ってるな。
そんな調整をやるなら24時間管理で年単位で掛かるぞ。
それこそ、
葉山「それ、悪の組織っぽくていいね」
水無月「あはは、私達マッド・サイエンティストになっちゃうのかな」
伊島「しかし、それで
三上「
魔力過多や魔力欠乏の根本的な治療が可能になるかもしれん」
水無月「そうすると、臨界点突破後の被験者をどうやって確保する?」
葉山「そんなの、適当な理由で延長すれば良いんじゃあない?」
羽佐田「そうだな、これだけ貴重な検体だ。出来るだけ情報も欲しいし、治療目的で拘束すれば良いんじゃあないか?」
伊島「それは、やり過ぎでは」
三上「臨界点突破後、検査次第という所が妥当だろう」
若桜「皆さん、好き放題言ってますね」
葉山「げ、若桜、いつ帰ってきた」
若桜「水無月さんが、優ちゃんをどうやって確保するか言い始めた所からです。
優ちゃんは、15歳の少年?なんですよ。
貴方達の玩具じゃありません。
出来るだけ速やかに社会復帰させるべきです。
そうでなくても、貴方達の思いつきで苦しんでいるんですよ」
若桜は、軽食と飲み物を持って戻ってきた様だった。
三上「すまん。
その通りだな。
つい悪ふざけが過ぎた」
葉山「ああ、済まない」
羽佐田「すまない。つい興味深い研究対象だったから」
水無月「ごめんなさい」
若桜「それで、何かわかりましたか?」
それから、羽佐田が現在の情報と今後の予測を若桜に説明。
若桜「そういうことなら、明日の朝まで経過観察を行い。
男性のままなら、リハビリと検査で延長入院1週間
女性になったら、検査結果で異常が発見された場合、延長入院
異常が発見されなかった場合、退院で良いのでは。
現状想定される予測の中で、女性化して問題が見つからない場合の確率が最も高いのでしょう。」
葉山「おい、貴重な検体を手放すのか?」
若桜「優ちゃんは、検体ではありません。今を生きる人間です」
三上「若桜の方が正しいな。研究者としては葉山の気持ちもわかるが、区切りを着けるべきか」
水無月「でも、経過観察は必要だよね。」
伊島「その通りですね、当面は定期的に診察・検査を行うべきかと」
羽佐田「なら、バイタルメーターを着けたままにするか。100km圏内ならいつでもデータを収集する事が可能だし、アレ自身も3年分のデータを保管出来る。
受信用の端末も幸い3つ持ってきている。ここに置いていくから取得データを共有してくれ」
葉山「お前のバイタルメーターは、高性能過ぎだな。データ共有は、俺も頼む」
水無月「私もデータ共有お願い。
気になっていたんだけど。
あのバイタルメーターってなんで手足にも着けてるの?
市販の物でも、チョーカータイプか腕輪タイプで十分測れるのに?」
羽佐田「市販のバイタルメーターは、生理情報、自然放出魔力程度しか
俺のバイタルメーターは、生理情報、自然放出魔力、
それだけの情報を、検査室と同等の精度でだ。
流石に環境試験室での精密検査には及ばないがな。
それだけの精度を出すには、流石に一箇所からでは不可能だった。五箇所からの同時測定を行うことで高性能化した。
それに、バイタルメーターに使用している金属は、チタン合金を使用して軽量化と強度を与えている。そこに俺の能力で、各種センサーと演算機能を持たした。しかも、装着者の負担にならないように密着し伸縮自在だ。稼働に必要な魔力も装着書の自然放出量で十分に
葉山「相変わらずお前の能力はデタラメだな。金属の特性を変えたり追加したり、魔力回路を書き込むことでいろんな機能を着けることが出来るのだから」
羽佐田「それが
俺の場合、欠点は金属にしか出来ないことだな」
伊島「それなら、バイタルメーターを着けて退院して貰っても問題ありませんね。
経過観察での通院回数も大幅に減らせるでしょう」
若桜「そろそろ、優ちゃんの食事を終わったと思うから、行ってきますね。
その際に今の決定事項も伝えます。あと、人材育成課とご両親にも連絡しますね。
時間は、明日の10時で設定します。
どういう結果に為るにしても、正式に報告する義務がありますからね」
そう言うと、若桜は出ていった。
伊島「やはり、若桜君は良いブレーキ役に成ってくれましたね」
三上「そうだな、我々だけだとやりすぎてしまう。」
羽佐田「取り敢えず、今後の指標が出たんだ、せっかく若桜が軽食を持ってきたんだから食べよう。
その後、仮眠だな。被験者の臨界を見逃したくない」
葉山「その通りだ」
水無月「言われたら、お腹すいた。お昼も食べていなかった」
三上「さっさと食べよう」
○深夜2時
我々は監視室で被験者の映像とバイタルメーターのデータを見つめていた。当然、若桜も一緒だ。
羽佐田「これは、臨界に達したようだ」
葉山「まだ、被験者の様子に変わりは無いな」
伊島「おい、周辺環境魔力が急激に下がっているぞ」
羽佐田「放射魔力も止まったぞ」
そのまま見守ること5分
水無月「被験者が光った。あ、縮んだ」
三上「変態が始まったか」
水無月「終わった」
羽佐田「バイタルメーターからは、生理データ正常、魔力は女性因子魔力。
魔力値は、変態直後が3、現在:7512 秒間:1252回復
臨界到達から5分後に
変態所要時間は10秒
男性因子魔力の確認は、出来ないか」
三上「朝の検査は、遺伝子検査と魔力精密検査だけで良さそうだな」
葉山「遺伝子は、前回との差異の確認。
魔力精密検査は、魔力塊の状態と男性因子魔力の確認だな」
羽佐田「被験者の容態は、極めて安定している。
朝まで仮眠を取るか」
翌朝の検査
若桜「遺伝子情報の検査で差異を発見。
3種類のサンプル全てで確認」
その言葉で、
水無月「
他のサンプルもダメってことは、性転換の切っ掛けには使えない」
伊島「男性因子
その言葉に、全員が集まる。
三上「男性因子
羽佐田「ちょっと待ってろ。今精密測定する」
葉山「これは、機能停止してないか」
羽佐田「そのようだな。今あるのは完全に残骸だ。いずれ消えるだろう」
伊島「どうやら、被験者から性転換能力は完全に消失したようですね」
水無月「うーん。もったいない」
三上「仕方ないことだ。
被験者には男に戻ることを諦めてもらうしか無いな。
一通りのデータの収集は、完了したか?」
伊島「あと5分くれ。
念のため、まだ未確認エリアに残骸が無いか確認する」
三上「他の項目に異常は一切ない。
では、被験者は退院ということで問題ないな。
若桜、検査が終わったら被験者を診察室に連れて行ってくれ。
私は、報告用の資料を作成してから向かう」
葉山「俺達は、撤収準備に入るか」
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