第257話 1年次夏期集中訓練 2日目(6)
布から出てきたゴーレムを見た郁代さんは
「か、かっこいい」
と言って見入っている。
都さんと美智子さんも
「カッコイイけど、何処かで見たことある気がする」
と言って、2人して首を傾げた。
千明さんは、興味なさげに見ているだけだ。
たぶん、もう飽きていると思う。
「この細身で、シュッとした出で立ち。
それでいて、防衛課の一般隊員を圧倒する出力。
まさしく理想的なゴーレムです」
と何処か誇らしげに説明する女性研究者。
この部屋で見てきたゴーレムは、
でもこのゴーレムは、アニメからそのまま飛び出してきた様なデザインなのだ。
「現在は、色々な角度から分析を行い、再現に取り組んでいます」
と女性研究者が言うと
『再現?』
と3人が言う。
「ええ、再現です。
今の我々では、このゴーレムと同等はおろか劣化版すらも作れません。
なので、一部のゴーレムを解体して調査・研究・再現に取り組んでいます」
と女性研究者が言うと
「えー。解体しちゃったんですか?もったいない」
と郁代さんが反応した。
「ええ、本当に勿体ないです。
本当に本当に苦渋の決断でした。
いくら総数88体居るからと言っても、これ程の物を解体するのは苦渋の決断でした。
苦渋の決断の結果、5体のゴーレムを解体して研究を行っています」
と女性研究者が言うと
『まだ、83体もいるの(か)?』
と武井さん、都さん、美智子さんの3人が驚きの超えを上げていた。
「ひょっとして、関西支局の羽佐田さんの作品?」
と照山さんが疑問を呈すると
「いいえ、羽佐田氏の作品ではありません。
あの方の作品なら、こんなに数作りません」
と女性研究者が言うと
「あ、確かにそうですね」
と照山さんが納得する。
「そうすると、一体誰だ。
羽佐田さんに匹敵する魔具の制作者なんて思いつかないんだが」
と武井さんが言う。
伊島さんと戸神さんは、ニコニコしながら私を見ている。
「このゴーレムを譲り受けてきた研究者の話しでは、演習中にその場で一瞬で作りだしたそうです。
これ程の性能の物を瞬時に作り、使い捨てに出来るなんて、とんでもない能力者です」
と女性研究者は熱弁を振るう。
それまで興味の無さそうだった千明さんがゴーレムをジーと見ていた。
「コレ、宿泊棟に置いてあるゴーレムと同じものじゃない?」
と発言すると、郁代さん・都さん・美智子さんもゴーレムに近寄り、細部まで確認を始めた。
そーと離れ様としたら、後ろに戸神さんが立っていた。
見上げると、ニコニコと笑いながら、両肩に手を置かれた。
「本当だ。細部までそっくりだ」
と美智子さんが声を上げた。
「と言うことは、コレを作ったのって優ちゃん?」
と郁代さんがゆっくり振り返りながら言う。
「その通りです。そのゴーレムの制作者は神城さんです」
と戸神さんが答える。
一斉に研究者が集まり質問攻めに晒される。
質問内容には、自分達が知らない技術やゴーレムから理解出来た技術の発展型に関する物ばかり何だけど。
と言うか、一斉に言われても答え様がないのにと思っていると伊島さんが手を叩き、パンと音を鳴らして研究者達の質問攻めを止めた。
「はい。皆さん注目。
確かに、神城さんの技術は凄いですよ。
ですが貴方達の様子を見ると、ほとんどの技術が既知と見えました。
なので、制作者の神城さんに聞く必要は無いと思います。
神城さんに答えを聞くより、解体したゴーレムの詳細を再分析した方が貴方達に取って有益な技術の蓄積が出来ると思いますよ」
と伊島さんが説得すると、研究者達も理解した様で
「よし、作業場に行くぞ」
「ああ、このゴーレム以上の物を作ってみせるぜ」
と息巻いていた。
そして、私達と案内をしている女性研究者を放置して部屋を出ていった。
その女性研究者も直ぐに行きたそうにソワソワしているが、案内をしている以上、私達を放り出す事はしなかった。
ただ
「このゴーレムは、神城さんが作った物なんですよね?
それもインスタントで」
と聞かれたので
「そうです」
と答えると
「制御核はどうしたのですか?
これ程精密な物は、即席で作ったと思えないのですが?」
と聞くので
「オリジナルの制御核は、羽佐田さんが作った物です。
それを私が自分用に改造した物です。
自分用の制御核の制御陣を記憶していますので、即席で作り出せますよ」
と答えると
「そんな方法が有ったのか。
制御核なんてゴーレム事に新規で作るか改造するかしてきた。
共通制御と共通骨格で制御核を作る事で、即席でもココまで高度な物が作れるのか。
だから、狼型も同じ制御核が使用されていたのだな。
これは制御そのものを、再研究する必要があるな」
とぶつぶつと言った後
「ありがとうございます。参考になりました」
と言って頭を下げた。
「こいつ。規格外すぎる」
と武井さんがボソっと零し、郁代さんは
「優ちゃん。私にもゴーレムの作り方を教えて」
と目をキラキラさせてお願いされた。
「土の
と答えると
「がんばるぞー」
と大きな声を出して、両手を突き上げた。
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