第258話 1年次夏期集中訓練 2日目(7)

 私が作った完全体のゴーレムの次に見たものは、解体されたゴーレムのパーツだった。

 美智子さん達は、興味深げに見ている。

 女性研究者は、解体されたゴーレムの説明をしている。

 郁代さんは、真剣に聞いている。

 その後ろで私は、解体されたゴーレムを見て何故か悲しくなった。


 その隣に置いてあるのは、狼型のゴーレムだ。

 完全体と解体された物が並んでいる。

 こちらも私が作ったものだ。


 女性研究者は、狼型ゴーレムの説明をしながら、人形ひとがたとの比較も説明していた。

 女性研究者の説明も終わり、「ここでの解説を終わります」と言われた。

 お昼休みももう終わりの時間なので、意識を訓練に戻していると、1人の男性研究者が入って来て

「もう少し見て欲しいものがあるのだけど、見てもらえませんか?」

 と言うと、郁代さんが

「はい。見ます」

 と即答した。


 説明してくれた女性研究者を含め、全員でその研究者に案内されて更に下層の格納庫に移動する。


 格納庫に入ると角々した人形ひとがたのロボットが歩いていた。

 そのロボットは、3m位の大きさで、肩から上が無く、その場所に研究者が乗っていた。

 それを見た郁代さんは

「うわー。ロボノ○ドだ」

 と声を上げた。


 反対側からは、ロボノ○ドみたいだが全体的に丸っこい感じがするロボットが歩いてきた。

「今度は、魔導ア○マーだ」

 と声を上げる。


 今度は警報がなる。

 音がする方を見ると、ロボットの乗った架台が起き上がって来る。

 そのロボットは、全高が8m位、細身でスタイリッシュで、両肩にパトライトが着いている。

 白と黒の2色で塗装さて、胸の先端には警察のマーク朝日影あさひかげが着いている。

 股間部にナンバーとウィンチが着いている。


「うぉー、イン○ラムだ」

 と大興奮している。


 私は美智子さん達を見て

「知っているのある?」

 と聞くと、一斉に

「知らない」

 と返ってきた。


 案内をしてくれた研究者が

「今動かす事の出来るロボットなんだけど、どうかな?

 完全再現は無理だけど、結構良い線行っていると思うよ」

 と言うと

「サイコーです。

 モビ○スーツとかナイト○アフレームとかアーマ○・コア的な物は無いのですか?」

 と返した。


「残念ながらまだないね。鋭意研究中だよ」

 と答えが返ってきて

「残念。でも楽しみ」

 と嬉しそうに答えていた。


 美智子さん達もびっくりしている。

 普段、郁代さんは私が素を出さないと怒っていたのに、思金おもいかねの研究所に入ってからは思いっきり素が出ている。


 ふと、私達の方を振り向き「しまった」という顔をして

「軽蔑したでしょ」

 と恥ずかしそうに言った。


 急に話しを振られ、あたふたした美智子さん達は

「え! いや、そ、そんな事ないよ」

「そうそう。ちょっと驚いただけ」

「そうだよ。趣味なんて個人の自由なんだから」

 と言う。


 沈黙を保っている私に視線が集中する。

 私が首を傾げると、何故か、4人共首を傾げた。

「別に気にする必要って、どこにあるのですか?」

 と言うと

『え?』

 と揃った声が返ってきた。


「だって以前から、こういう物が好きなのは分かっていた事だし。

 ココ東海支局思金に居るのは、オタクを超えた人達ですよ。

 ココでは、オタクで無い人と常識人を探す方が難しいのです。


 そんな人達を見ている私が、郁代さんを見て特に思う事なんてありませんよ」

 と言うと、郁代さんを始めとした4人は唖然とした表情だ。


「むしろ、沼に沈めようとしないだけで、十分常識人です」

 と言うと、一斉に視線を外す研究者達。


 その様子を、郁代さん達も見て

「ひょっとして優ちゃんが超然としているのは、こういう状況に慣れすぎているから?」

「可能性が高いね」

「うん、なんというか、喜怒哀楽が乏しいのは、こういう状況に慣れすぎて耐性がついた結果なのかも」

「普通ならあり得ないと言いたい所だけど、ココに居ると世間の常識って何?って言いたくなる」

「あー、分かる。

 ココにあるもの全て、普通に生活していたら知る事無い事ばっかりだもんね」

「漫画やアニメ、映画やゲームの世界でしか実現していない物でいっぱいだものね」

「あー、そうすると、訓練校とかも温すぎてツマラナイのかも」

「ありえる」

「まだ2日目なのに、訓練校の日常が遠い世界に感じる」

「そう言われると、そう思える」

「わたしも」

「わたしも」

 と言って、4人は共感している。


 そんな4人に

「そうそう。戦闘隊員の中にも、ちゅ、ちゅ、ちゅう」

 と言って言葉に詰まる。


「ネズミ?」


 ポンと手を叩き

「厨二病だ」

 と言った後

「戦闘隊員の中でも、かなりの数の厨二病症状の人が居ますよ」

 と言うと、4人は私を凝視した。


「ほら、戦闘技能スキルって技名を叫ばなくても使えるのに、わざわざ叫んだり、必要のない動作モーションを着けている人も結構います。


 私からしたら、無駄な動きでしか無いのですがね」

 と言うと

「うん。優ちゃんらしい」

 と言う感想が返ってきた。

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