第75話 年末年始の神城家(3)
大晦日の朝も普段通りに起きて、朝のルーティンを熟してから台所に入る。
リビングでは、父さんと爺ちゃん達が寝ている。
朝なので、野菜多めの味噌汁と焼き魚と卵焼きを作る。
普段なら、もう母さんが起きてくる時間だけど、昨夜は洗い物の後に晩酌に参加していたから、まだ寝ているみたいだ。
朝食の準備が終わる頃に、大人組が起き出してきた。
婆ちゃん達に朝食の準備を手伝って貰い、母さんが舞達を起こしに行った。
舞達が、眠い目を擦りながらやってくる。
時間的に7時ちょっと過ぎた位だから、それ程早い時間では無い。
今日は、人数分の朝食を準備するのに1時間位が掛かったけど、普段なら30分程度で母さんと一緒に作っている。
皆で朝食を食べる。
皆、美味しいと言って食べてくれたけど、私が作った事が分かると希ちゃんと香織ちゃんは、顔を見合わせて微妙な顔をした。
「口に合わなかった?」と聞いてみたけど、二人して首を振ってから「違います。美味しいです。」と言ってたけど、微妙そうな顔のままだった。
食後は、片付けを母さんと婆ちゃん達がやってくれて、父さんと爺ちゃん達が散歩に出て、舞達は部屋に戻った。
私も自室に戻って、魔力制御訓練を行っていた。
9時を少し過ぎた位に、章と零士が来たので迎え入れて舞達を呼んで、私の部屋で勉強会の続きをやらせる。
私は、台所で昨日仕込んだクッキー生地を5mm幅に切り、クッキングシートを敷いた天板の上に並べ、180度に予熱したオーブンで焼いていた。
10時の休憩のお茶請けに出すつもりだ。
結構な数が焼けそうなので、おやつ時にも出せそうだ。
焼き上がって粗熱の取れた1枚食べてみると、しっかりとしたバターの風味とサクッとした軽い食感が美味しかった。
完全に冷めると、少し硬くホロホロと崩れる食感になる。
出来上がりを楽しみにしながら、クッキーを焼いていく。
10時過ぎに、母さん達とお茶の準備をして、散歩から帰った父さん達にお茶とクッキーを出す。
勉強をしている5人にもお茶とクッキーを差し入れをした。
5人の進捗状況は、ぼちぼち進んでいたので、頑張って今日で終わらして欲しい。
台所に行き、母さん達と一緒にお昼の準備を始めた。
一方、勉強会会場
舞はクッキーを1枚食べて、ひっくり返った。
舞「お姉ちゃん、女子力爆上すぎ。」
香織「昨日のバウンドケーキも今朝の卵焼きも美味しかったです。」
章「卵焼き?」
希「今日の朝食は、優おに・・・お姉ちゃんが作ったんです。」
零士「優が作った。以前だと想像もつかないが、今だと違和感がない。」
舞「もうね、外見だけでなく中身も別人だよ。」
何処か拗ねた様に聞こえる。
零士「それは、俺も思う。」
香織「私も」
希「私も」
章「俺も。今の優を前にすると、何を話せば良いか分からない。」
零士「女性化して間もない頃は、男の頃の癖が見て取れたんだが、最近はそういうのが全く見えない。
始めの頃は、男の頃との落差が激しすぎて、優と認識が出来なくて混乱していたんだが、今は女性として意識してしまって、以前と同じ様に接する事に抵抗を覚えてしまった結果、どう対応すれば良いの全く分からなくなってしまった。」
こちらもかなり落ち込んえいる。
舞「以前の様に打ち解ける切掛になればと、クリスマス・パーティを計画したのに、お姉ちゃんたら終業式終わって直ぐに訓練所に行っちゃて台無しになったし。」
希「訓練所?」
舞「お姉ちゃんの保護先で、対魔庁の訓練施設なんだ。」
希「普段は、そこにいるの?」
舞「女性化した10月から、12月までずーと訓練所に居た。
12月に入って、平日だけ帰ってきて、週末は訓練所で過ごしている。」
希「なんで、平日だけ?」
舞「うーん、なんでも家族と過ごす時間に慣れるためとか言ってた。」
章「週末家に居るっていうのが普通だと思うんだが。」
舞「私もそう思う。」
香織「メッセージとかでやり取りしないんですか?」
零士「ああ、以前はそうだったんだが、今はちょっとな。
優が女性化してからは、優が寝る前30分位しか相手にしてくれなくてな、それで余計に疎遠になってしまった。」
章「それだけじゃない。
優の好みが大きく変わってしまって、会話が続かないんだ。
それに、久しぶりに優の部屋に入ったけど、物が無くなっていてびっくりした。」
章と零士が揃ってため息をつく。
舞「お姉ちゃんが家に居る様になって、部屋の物を殆ど処分しちゃったんだよ。」
零士「そうか」
沈黙が暫く続いたあと、
香織「優お 姉ちゃん、寝るの早くてビックリしました。」
希「あんなに早く寝る人って居るんだね。」
章「早すぎるよな。」
零士「訓練所の就寝時間に合わせている内に習慣化したのかもな。
俺と章は、優と以前と同じとは言わないが、普通に会話出来る様に成りたい。」
章「それが難しいんだよなー。」
香織「でも、優お姉ちゃん、章さんと零士さんの事、普通に接してましたね。」
章「俺達が意識しすぎているのかな?」
零士「むしろ、普通過ぎて戸惑っているんだが。」
希「共通の話題は、無いの?」
章「 ない」
零士「俺も思いつかない。」
舞「訓練所での生活とか聞いても、寮生の人に勉強を教えてもらってるとか、護身術を教えてもらってる位しか教えてくれない。
詳細な事を聞いても教えてくれない。」
香織「謎なんですね。」
舞「うん、謎」
零士「そろそろ、勉強を再開しないと、今日中に終わらないぞ。」
時計を見ると30分以上話し込んでいた。
皆、再び自分の課題に取り組みだした。
お昼が出来たので、勉強している5人も呼びお昼を済ませる。
午後も、勉強会の為部屋を使われているからどうしようかと思っていたら、婆ちゃん達がおせち料理を拡充するために作ると言うので手伝うことにする。
家のおせちは、いつも購入しているので、こういう機会は初めてだ。
今回は、両家から3品追加して、両家のお雑煮も準備することになった。
食べ比べ出来るのは嬉しい。
おやつ時には、勉強している5人にクッキーと紅茶を差し入れした。
おせちとお雑煮の準備と夕食に簡単に食べれる物を準備したら、17時を過ぎていた。
勉強会の方は、18時を少し回った所で、全員課題を完了させたて終了した。
私は、いつも通り夕食を取って、風呂に入ってから自室で勉強をしていた。
本当は、魔力制御か
いつも通り、21時30分から寝る準備をしていると、舞達から近所の神社に二年参りに行かないかと誘ってきたけど、キッパリと断った。
フードやマフラーを巻けば、誰かわからないからと言ってきたけど、私自身の立場を考えると、そういうイベントに参加する事は出来ない。
それに、年末年始は家から出ないと約束した以上守らないといけない。
未練タラタラの舞を尻目に、自室に戻り扉に鍵を掛けて防音の結界を張る。
設置型の結界は、事前に十分な魔力を籠めて設置すれば、籠めた魔力がなくなるまで起動してくれるので、防音結界を起動したまま寝ることも出来る。
そのまま、眠りに着いた。
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