第108話 訓練校の入学式(1)

 真新しいカッコイイ系ブレザーの制服を身に纏い、部屋を出で鍵をかける。

 女子寮の玄関で、靴に履き替える。

 寮の下駄箱と郵便受けは、鍵付きの物になっているうえ、監視カメラが見張っている。

 過去に、イジメやいたずらが行われた結果、鍵と監視カメラが着いたそうだ。

 それでも、まだ被害が出る事があるそうだが、直ぐに犯人は捕まるそうだ。

 ちなみに、私の部屋の前にも、監視カメラが設置されている。


 寮を出て体育館を目指して歩く。

 周りも思い思いに体育館を目指している。


 周りは、私を見てひそひそ話をしている。

 周りを無視して毅然として歩く。


 体育館の前に来るとガラの悪い男子生徒の5人組が道を塞ぎ、明らかなあざけりと侮蔑ぶべつを含んだ声で

「おや~、こんな所に小学生が紛れ込んでいるぞ。

 ここは、ガキがくる所じゃないんだ。

 さっさと帰りな。」

 と言って、馬鹿笑いしている。


 私は、男達を無視して横をすり抜ける。


 男「おい、待て。人を無視するとはどういうつもりだ。」


 当然、私は無視をして進む。


 男「おい、こら」

 そう怒鳴って、私の肩に手を掛けようとした男の手を、別の男子生徒が掴み捻りあげる。


 男「イテテ、何をしやがる。」


 男子生徒「それは、こちらのセリフだ。

 お前達、下品すぎるぞ。」

 そう言と、仲間の男達の方に突き飛ばした。


 仲間の男達に受け止められた男が「テメー」と唸り声を上げた直後、背後に回った教育官達に特大の拳骨が落とされて、全員が頭を押さえて蹲っている。


 「霜月、コイツラはこっちで処理をして置く。お前はお嬢さんのケアを頼む。」

 教育官達は、アイアンクローで5人を吊り上げ、連行していった。


 5人組の「はなせ」とか「痛い」と騒いで暴れている声と音も程無く声も聞こえなくなった。


 私は、助けに入った霜月さんにお礼を言った。

 私の予想だと、霜月教導官の息子さんだと思う。


 霜月「神城さん、初めまして。

 2年の霜月しもつき 冬弥とうやです。

 貴方の事は、母より聞いています。」


「神城 優です。よろしくお願いします。」

 うん、やっぱり、霜月教導官の息子さんだ。


 霜月「しかし、災難でしたね。

 毎年の事とはいえ、ああいう馬鹿が湧くので、我々上級生と教育官が目を光らせていますから、安心して下さい。

 それでは、受付までご一緒致します。」


 霜月先輩に案内されて、受付を済まして別れた。

 体育館内の指定された椅子に座って開始時刻を待つ。

 本来なら、受付前で両親と会う予定だったのだが、あの馬鹿共のせいで居づらくなったので、席に着く事にした。

 そして、私の席の周りに人は居ない。

 見事に避けられている。


 式の時間が迫ると、渋々といった感じで周りの席も埋まった。

 5席程空きは在るけど、開始時刻になった。

 式は滞りなく進んだが、学園長の話は長かった。

 どうして、偉い人の話は長いんだろう。


 式終了後、教室に移動する。

 今年の入学者は、153名の1クラス約30名の5クラスになる。

 私のクラスは、1-A組で、章と零士とは別のクラスだ。

 基本的に同じ学校の出身者は、別々のクラスになる様に配慮されている為だ。


 教室の入口に張り出された座席表を確認すると、後ろの扉の直ぐ側だった。

 全員が席に着くと、1席だけ空きが出た。


 担任「問題を起こした生徒が来るまで待機だ。」


 少しして、問題を起こした生徒、朝直接絡んできた馬鹿が連れてこられた。

 そして、空いた席に座ったが、机に足を載せて態度が悪い。

 直後に、担任に殴り飛ばされた。


 倒れた生徒をアイアンクローで吊り上げ、魔力で威圧されながら

 担任「ここで、舐めた態度を取れば徹底的に体に教え込むからな。

 訓練校入学の際の契約書にも明記されているが、どうせ読んでいないだろう。

 だから、言っておこう。

 ここでは、個人の自由と権利を制限している。

 特に、能力、暴言、社会性に対しては特に厳しく躾けており、体罰も行う事も辞さない。

 それとも、強制収容所の方に行きたいか?」


 生徒「それは、嫌だ。」


 担任「だったら、大人しくしろ。」

 そう言うと、そのまま無理やり席に座らせて、開放した。

 開放された直後に、何か言おうとしていたが、威圧されて憮然とした顔で押し黙った。

 周りの生徒もかなりビビっている。


 先程の担任の言葉通り、入学時の契約書に明記されていたし、別紙には事細かな事例が書かれていた。

 ここは、厳格な寄宿学校か軍隊学校に近い場所なのだから、一般的な高校の感覚でふざけた態度を取ると手荒い歓迎を受ける事になる。

 訓練校の場合、生徒の態度が悪く、改善の見込みが無い場合、退学では無く強制収容所にて、矯正教育に変わるだけだ。

 こちらは、刑務所に収監された方が天国というレベルの厳しさで、最低5年の訓練と5年間の強制労働が待っている。

 最低10年間、社会から隔離されて過ごす事になる。

 あくまでも最低10年だ。上限は無い。

 この厳しさが、能力者の犯罪発生率を低く押さえている要因だから、仕方がない半面も在る。

 普通に過ごす分には、全寮制の高校位の厳しさらしい。


 初っ端からハプニングがあったが、最初のホームルームが行われた。

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