第121話 起きない理由
制服に着替え教室に戻ると、皆ぐったりしていた。
皆の処に行き
「初めての能力訓練はどうだった?」
と聞くと
「魔力を最大状態で維持するのって思ったより大変だった」
「ちょっとでも気を抜くとすぐ霧散してしまう」
「1分も維持できなかった」
等々、苦戦していたようだ。
クラスを見渡してみると、皆疲労しているのが見て取れる。
いつも絡んでくる宮園さん達も、ちょっかい出す気力も無いようだ。
直ぐに霧咲教育官が教室に来たので席に戻った。
ホームルームが始まり、初めての週末の過ごし方の注意事項を言い渡されて解散となった。
ホームルーム後、皆から一緒に夕飯を食べようとお誘いを受けたが「ごめんなさい。この後すぐに行かないと行けない場所があるので行けない」と謝ってから急いで寮に戻り、寮監の市松さん(本日の担当)に事情を説明し、外出、外泊する旨を伝えると折れた腕と肋骨の具合を聞かれたので「もうなんとも無い」と答えると、「あんた、優秀な治癒師なんだね」と感心された。
部屋に戻ると血で汚れた作業服を取り出して、浄化の
こうすると血痕がよく落ちるのだ。
シャワーを浴びてから常装に着替える。
対魔庁の常装は、上は男女同じだけど下は男性がズボン、女性はスカートになっているが、戦闘系職に就く人の常装は男女共にズボンになっている。
当然私もズボンを履く。
鞄に替えの服(私服、下着、作業服)等とノートパソコンと入れて時間を確認すると、17時50分を指していた。
戸締まりを確認してから玄関に降りると、高月さんが寮監の市松さんと雑談していた。
「遅くなりました」
高月「まだ時間前だから大丈夫よ。
服装は常装にしたのね。
私服でも良かったのに」
「この時間に私服で外出すると、色々と言ってくる人が多そうだったので」
市松「ああ、そういう奴はいっぱい居るね」
高月「独り善がりの馬鹿は何時の時代も居るわね」
市松「そういう奴が居たら私達に言うんだよ。
しっかり、折檻しないといけないからね。
あんまり聞き分けが悪いのは、強制収容所へ送るからね」
敢えて周りに聞こえる様に言いながら周囲を睨みを効かせている。
寮の前に止めてあった1BOXに乗り込む。
運転席に久喜さんが座り、助手席に高月さんが座った。
運転席後ろの席に平田さんが寝かされている。
私が、助手席後ろの席に座る。
3列目の席に押し込まれる様に、伊坂さんと山本さんが座っている。
伊坂「久喜、車を出してくれ。
これから中部対魔庁病院に向かう。
先方への連絡も済んでいる。
ここから病院までは、この時間帯なら1時間位かかる。
神城さんは、平田の事を色々と気にしていたみたいだから、この移動時間に診てやってくれないか?」
「分かりました」
平田さんに触れながら能力鑑定の
その様子を硬い表情で見つめる伊坂さんと山本さん。
高月さんは、気になる様で後ろを覗き込んでいる。
久喜さんは、後ろが気になるからか、時折バックミラーで確認している。
診察が終わったのでスマホを取り出す。
時間を見ると18時10分だったので、10分近く診察していたようだ。
電話を起動して呼び鈴がなる。
呼び鈴がなっている間に通話をスピーカーに切り替えると相手が出た。
『神城、こんな時間にどうした』
「夜分すいません。今お時間頂いても大丈夫でしょうか?」
『ちょっと待て、…… よし、良いぞ』
「ありがとうございます。
今日、平田 南曹長と模擬戦を行い、
『! そうか。それでどうだった』
「魔力が7.51MMPから211MMPに激増。
それに伴い、身体強化がC7からA2に変わり、具現化系風もC2からA2に変化しました」
『それはまた極端だな。
実際に戦ってみてどうだった?』
「両腕と肋骨を折られました」
『それは派手にやられたな。
治療は、…終わっているから電話してきたんだな』
「はい。そうです。
平田さんは、伊坂さんと山本さんによって止められました」
『確か、強烈な一撃を加えて意識を奪って止めるだったか?』
「その通りです。
今、平田さんを能力鑑定で精密検査した結果、現状脳死状態です」
『脳死状態だと!!』
車内に緊張が走った。
「はい、伊坂さんが正面から気を引いている間に、背後から近寄った山本さんの一撃が脳天に直撃、その後崩れ落ちました。
その場の鑑定では異常を発見出来ませんでしたが、再度鑑定の結果、脳挫傷を起こし、その修復に狂戦士の回復能力が集中している事が確認できました。
おそらく完全回復後、一定時間経つ事で自然と目を覚ますと思います」
『そうか。他にも報告があるのだろう?』
「はい、平田さんの
平田さんの中に2つの
2つの
小さい
そして、小さい
正直、いつ切れてもおかしくない程です」
『ふむ、普段確認出来ない
実に興味深い。
そして、かなり危険な状態だという事も理解した。
電話からの雑音から察するに、中部対魔庁病院に移動中か?』
「はい、そうです」
『分かった。そちらに関しては私の方から手を回そう。
神城達は、そのまま病院に向かってくれ』
「分かりました。よろしくお願いします」
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