第151話 通常授業の始まり

 7時55分、朝の訓練を終了する。

 田中さん達4人は、まだ1分程度しか維持出来ないが、昨日は30秒がやっとだったので大きな進歩だ。

 一方、高月さんは、放出魔力量の減少は微々たる物だったが、全身の魔力の流れは格段に良くなった。


「4人は、訓練校の訓練時間も今朝の訓練同様、魔力纏身まりょくてんしんを行って下さい。

 高月さんは、この訓練を続ければ放出魔力量の低下と威力の上昇が見込めます。」


 田中さんが困惑した感じで

「訓練時間にそんな事して怒られない?」

 と聞いてきたので


「今月は、魔力塊マナ・コアの活性化が目的です。

 既に活性化している訓練生は、次の訓練に進む様です。

 皆さんの場合、魔力の最大出力を維持する様に言われるはずです。

 なので、魔力纏身まりょくてんしんの訓練をしていても文句は言われる事は無いでしょう」


「そう、だったら訓練時間にもやってみる。

 注意されたら、その時は言われた事をすれば良いよね?」


「それで構いません。それでは、そろそろ校舎に行きましょう」

 と声を掛けると高月さんが、

「もう少し、ここで訓練したいだけど良いかな?」


「ダメです。

 貴方達二人っきりにすると、平田さんも訓練を始めてしまうでしょう。

 だからダメです」


「そうか、それもそうよね」

 と言ってアッサリ引いてくれた。

 その陰で、コッソリと落胆している平田さんが居た。


 魔力制御訓練棟の前で高月さんと平田さんと別れ、校舎に向かう。


 今日から通常授業に入る。

 訓練校の授業は、通常の教科に副教科と能力訓練でみっちりと詰まっている。

 通常科目は、普通の高校と変わらない。


 副教科は、

 武道が週2時限で私達のクラスは月木に1限ずつある。

 月曜日は、男子が剣道、女子が柔道

 木曜日は、男子が柔道、女子が剣道になる。


 技術工作・家庭科は、週1で2時限通しで行われる。

 月毎に入れ替えで、今月は男子が技術工作、女子が家庭科で行われる。


 情報学は、週1で2時限通しで行われ、基本的なパソコンの使い方やオフィスソフトの使い方やプログラミングの基礎を学ぶ。


 この他にも、

 能力アビリティの基礎教養が週1時限。

 技能スキルの基礎教養が週1時限。


 それに能力アビリティ訓練が週5で2時限通しで行われる。


 そのため、平日は17時まで授業が行われる。

 色々と大変だなーと思いながら、教室に向かうのだった。


 学科については、復習なので授業内容に問題はない。

 ただ、普段の勉強速度とは比べ物にならない程ゆっくりなので退屈なだけだ。


 今日の武道の時間は柔道だ。

 武道の授業では、各人の経験に合わせて3組に別れて授業を受ける。

 未経験者、経験者、有段者の3組に分かれる。

 教導隊で対魔庁式近接戦闘術を習得しているとはいえ、柔道や剣道は未体験だ。

 なので、未経験者の中に混じって武道の授業は普通に受けた。

 まあ、最初なので基本の動作と単独受け身で終わった。


 あと、この日は能力アビリティの基礎教養も有ったのだが、内容は魔力制御の基礎理論の説明だけだった。


 能力訓練の時間になり宿泊棟に行くと、女性隊員2人に出迎えられた。

 彼女達が今日の担当で、今後のシフトを見せて貰った。

 そこには、見事に伊坂さん達男性陣が全く居なかった。

 なので、伊坂さん達男性陣が居ない理由を聞くと


 伊坂さんは、同性異性に関係なく戦闘能力にしか興味を持っていない。

(これはこれで、問題だと思う)

 久喜さんは、既婚者。

 で、山本さんは平田さんに猛烈アタック中。


 この状況で伊坂さん、久喜さんの二人が何処まで山本さんを抑えられるかと言うと、たぶん無理だろうという話になり、当面男性隊員の出入り禁止になったそうだ。


 特に今回の護衛兼訓練任務は、男女問わず機動戦略隊を中心に志願者が多数出ていただけに、今回の処置で多くの男性隊員が涙を飲んだそうだ。


「どういう事?」

 と聞くと

「先日の模擬戦にて、己の未熟さを思い知った者達は非常に多く。

 教導官殿から個別訓練を受ける機会に恵まれるこの任務を望む者は非常に多いです。

 また、先日の模擬戦に参加出来なかった者達も、是非とも教導官殿と手合わせしたいと願い出る程です」


「はぁ、分かりました。

 貴方達は、私に教導して欲しいということですね。

 それとこのシフトだと、1周回るのに2ヶ月は掛かりますね。

 それと、言葉遣いを改めなくて良いですよ。

 普段通り喋ってください」


「そうですか、分かりました。


 シフトについては暫定です。

 中部駐屯地は400名強の隊員が在籍し、女性隊員は約3割の120名です。

 資源ダンジョンに遠征中の62名中12名が女性隊員で、彼女達も戻れば参加すると思います。


 なので、神城教導官が訓練校の能力訓練時間にどの程度の人数に対応可能かを知る為にも、今週は2名ずつとなっています。


 なので、来週からは参加人数が増えると思います」


「分かりました。平田さんの診察を終えたら教導に移ります」


「「はい、お願いしています」」


 平田さんを診察後、地下の訓練場に移動して教導を行う。

 ここでも平田さんは、見学している。


 二人の戦闘能力は、先日の模擬戦で把握済みなので、魔力全開の魔力纏身まりょくてんしんを行わせる。

 やはり、二人の放出魔力量は多い。

 なので、放出魔力量を下げる訓練を行わせる。

 アドバイスを与えるが、それ程上手くいっていないので、外部から干渉して魔力の調律を行う。

 調律を行った瞬間「ヒャン」なんて声を出していたが、無視して調律を行い、その状態を維持する訓練に切り替えた。

 訓練時間終了までに、何度も調律を行う事になってしまった。

 二人は荒い呼吸に頬を染め、上気した顔になっているが、どうしたのだろう?

 あえて突っ込まない方が良い気がしたので、気にしない事にした。


 教室に戻ると田中さん達4人は、クラスメイトに注目されている感じがした。

 話を聞く前に、霧崎教育官が入ってきたのでそのままホームルームとなり、終礼・解散になった。


 田中さん達と一緒に厚生棟に行くと、平田さん達が待っていたので、合流して夕食を食べる。

 その際に、教室の様子が変だった事を聞くと、クラスの中で田中さん達4人だけが先の訓練に進む事が出来た為に嫉妬された様だ。

 それを聞いていた平田さん達からは、「訓練校あるあるネタ」らしい。

 食事中は、その訓練校あるあるネタで盛り上がる事になった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る