第274話 1年次夏期集中訓練 3日目(8)
「理解できましたか?」
と問うと、郁代さんからは
「
あとは、三上主任が偉い人だと言う事。
それ以外は、よく分からない」
と返ってきた。
美智子さん達も頷いている。
伊島さんは、ニコニコとしているが、他の大人は苦笑いをしている。
本部制は、本年度から始まった組織変更だ。
昨年度までの戦術課は、山本長官直下の特務機関だった。
防衛課は、長官の下に幕僚監部と北方、東北、東部、中部、西部の5つの方面管理部があり、方面管理部の下に各県の部隊に分かれていた。
幕僚監部と方面管理部が廃止され本部制に行こうしたのは、神埼一派を排除した事による人材不足と統制の為に行われた。
防衛課の改革は、まだまだ始まったばかりだ。
私は、美智子さん達を見て
「まあ、取り敢えずそれで良いですよ」
と投げやりに答えると、千明さんが手を上げ
「さっき言っていたイノベーションってなんですか?」
と聞いてくる。
「革新的な技術や全く新しい何かを生み出す事だよ」
と武井さんが答えると千明さん達は
「それは、すごい」
「あの地下を見たから納得しかない」
「でもあれ。氷山の一角よね」
「じゃあ。もっと凄いものもあるって事だよね」
と言うと私を見た。
「私も全容を知りませんから、期待しても無理ですよ」
と答えると、武井さんの方を視線が集中するが
「俺もココでは部外者だからよく分からない」
と答えると、照山さんも
「私もよく分からないわ」
と先手を打って答えた。
「まあ、機会があったら見せてもらえると思うよ」
と伊島さんが言うと、千明さん達の目線を集めた。
「研究者って言うのは、それなりに承認欲求が強い人が多いからね。
お披露目が出来る機会があれば、向こうから寄ってくるよ。
まだ時間もあるから、楽しみにしたらいい」
と伊島さんが言うと、千明さん達は
『はい』
と声を揃えて返した。
そろそろお昼休みが終わるので、それぞれの訓練に戻る。
美智子さん達と別れた私と照山さんは、高エネルギー射撃室に移動する。
高エネルギー射撃室で、射座も向かおうとすると照山さんが
「今回は、水中攻撃と同じもので撃ってみて欲しい」
言われたので
「具現化系の
と問うと、結界等の操作をしていた研究者から
「もちろん大丈夫だ。排水機能もあるぞ」
と返ってきた。
「分かりました。やってみます」
と答え、射座に向かう。
射座で右手を突き出して構える。
水中戦を意識した
的の中央に当たり、
的に傷1つ付いていない。
レーザーに比べるとかなり威力が低いな。
破壊力を上げる為の工夫を始める。
より鋭く、より速く、より強く撃ち出す。
工夫を加えながら、魔力貯蔵庫が満タンになる連射を続けた。
結局、的に多少傷をつける程度で終わった。
まだまだ改良が必要だな。
第二プールに移動して、水着に着替えプールサイドに移動する。
軽く体をほぐしていると、照山さんがダイビングウェイトとフィンを持ってきた。
「午後は、これを装備して水中射撃訓練します。
重力の
と言われ、ダイビングウェイトとフィンを手渡された。
「ウェイトは、体重の1/10から1~2kg引いた重さに設定してね。
ウェイトは左右対称になる様に配置して、腰付近に斜めにならない様にしっかりと締めてね」
と言われた。
えーと、そうすると1.3kg~2.3kg位か。
ウェイトを確認すると最小が1kgの物しかなかった。
2個で2kgか。
範囲内だからOKと言う事にしよう。
ベルトにウェイトを取り付け腰に巻く。
かなりベルトが余ったからどうするか悩んでいると
「万が一の時は、ウェイトを捨てるからそのままにしてくれ」
と見崎さんに言われたので、そのままにして水に入る。
中性浮力を確認すると、やや沈み気味になってしまったが、今これ以上に軽いウェイトが無いのでこのまま訓練を行う事になった。
一気に水深15mまで潜り、水中静止を行いながら的に向かって撃つ。
ただ、重力の
その為、命中率が悪い。
10回中1回位した当たらない。
しかも、的の中央に当たったものは無い。
四苦八苦しなが撃つが、一向に命中率が上がらない。
そんな状態をしばらく続けると、水上に上がる様に指示が出た。
水から上がり、プールサイドのベンチに腰掛けフィンを外す。
照山さん達も水から上がり、ウェットスーツの上半身だけ脱いでベンチに座った。
全員がベンチに座ったところで、照山さんが
「神城さんの水中射撃が逸れる原因が分かったわよ」
言った。
私は、照山さんを凝視して
「本当ですか?」
と聞くと、照山さんはいたずらっ子の様な笑顔で
「ええ、間違いないと思うわ。
あと、命中率が悪い原因もね」
と言った。
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