第175話 ゴールデンウィーク(3)

 恵ちゃんは、私を含め各人を振りまわしながら遊んでいた。

 こうして、平和な時間は過ぎていくのだが、それとなく私が注目されているのには気がついている。

 観光中も注目を浴びていたが、護衛役の4人が要所要所で視線を遮る事で、それ以上に注目されるのを防ぎ、人に囲まれるのを防いでいる。


 その御蔭で、久々に外でゆっくりとした時間を過ごしていた。

 それなりの時間が経ち、恵ちゃんも疲れたらしく、母親の由寿さんの元に戻り抱きついて眠ってしまった。

 なのでマイクロバスに戻るべく、名城公園内を移動して風車の側まで来た時、空間が揺れた。

 しかも、連続して揺れている。


 私は即時に

「総員停止、戦闘準備」

 号令を聞いた隊員達は、即時に予備装備を取り出し、無線連絡用のインカムを身につける。

 由寿さんも恵ちゃんを土田さんに預け、予備装備とインカムを身につける。

 当然、平田さんも持参している予備装備を取り出している。

 都竹さんは、予備装備を入れていたカバンを集めている。


 私の号令とその後の一連の行動に何が起こっているか分からず、オロオロとしている田中さん達4人を尻目に、観光中に貰ったパンフレットの地図部を開き

「インコムは、15番を使用。

 久喜さんは、清正石前で待機。

 石巻さんは、乃木倉庫前で待機

 石破さんは、東門前で待機。

 石川さんは、体験の森で待機。

 石原さんは、フラワープラザ前広場で待機。

 残りは、こども広場の奥と愛知国際アリーナの間にて待機。

 平田さんと非戦闘員は、私と共に行動。

 詳細な指示は、インコム経由で行います」

 場所を指さしながら指示を出し、全員の顔を見渡した後

「散開」

 の号令と共に、久喜さんと護衛役4人が名古屋城方向に走り、高月さんと由寿さんが愛知国際アリーナ方面に走って行った。

「私の側に来て下さい」

 と田中さん達に声を掛けると、非常警報が鳴り響いた。

 その警報音で、びっくりした恵ちゃんが大声で泣き出した。


 あたふたと恵ちゃんをあやす土田さんを尻目に、大音量の音声放送も加わる。

「名古屋城及び名城公園で、大規模な空間振動が確認されました。

 該当地域に居る人は直ちに最寄りのシェルターに避難して下さい。

 Large-scale spatial vibrations were confirmed at Nagoya Castle and Meijo Park.

 People in the affected areas should immediately evacuate to the nearest shelter.」


 音声放送中に、散開した5人から待機位置に到着した事を告げる報告が入る。

 それとは別にインコムには、対魔庁の緊急通信も複数入ってきている。

 なので、駐屯地と繋ぎ

「こちら、神城准尉。

 空間振動発生地域にて、隊員4名と非番隊員3名と共に迎撃態勢を構築。

 これより、対処に当たります」

『了解。こちらも直ちに応援部隊を送ります。ご武運を』

 直ぐにチャンネルを変え

「総員、空間亀裂発生まで後20秒。速やかに排除しろ」

 という私の指示に

『了解』

 の返答が返ってくる。


 田中さんや都竹さんは、私や平田さんに状況を聞きたい様子で声を掛けるべきかどうか悩んでいる様子で、土田さんと鳥栖さんは恵ちゃんに手を焼いている。


 そうしている間にも時間は過ぎ、あちこちに空間の亀裂が発生する。

 私は、発生した空間の亀裂に爆裂土槍エクスプロージョン・スピア火球ファイヤーボールを内包した土槍アースランス)を撃ち込んでいく。

 撃ち込まれた土槍アースランスは、亀裂内で爆裂する事で亀裂から出てくる前に魔物諸共吹き飛ばす。

 そのため、土槍アースランスを撃ち込まれた亀裂も消え去っている。

 だた、亀裂の有った周辺に魔物の残骸が撒き散る事も有った。


 私は頭上に無数の爆裂土槍エクスプロージョン・スピアを生成し、風車の側から公園中央、北側、西側に発生した直後の空間の亀裂に爆裂土槍エクスプロージョン・スピアを撃ち込む事で、魔物を地上に湧き出る事無く迎撃しているが、他の隊員達はそうもいかない。

 亀裂から湧き出た魔物を地道に倒している。

 なので、討ち漏らした魔物は、私が遠距離から討伐している。


 戦闘開始から15分経過しているが、空間振動はまだ収まらない。

 その為、空間の亀裂の発生も収まらない。

 非常警報と違うサイレンが、遠くから多数聞こえる。

 警察車両と消防車両と救急車と地域防衛隊の車両のサイレンだ。

 本部に応援部隊の接近を報告し、そちらの指揮系統に空間振動範囲内への突入は行わなず、包囲する様に指示する。

 警察や消防に何が出来るかと言うかもしれないが、完全武装の警察官はランクE1相当の戦闘能力を有する。

 消防は、ポンプ車などから行われる高圧放水は、牽制として十分な威力を発揮する。

 現状、現れる魔物はゴブリン、コボルト、火蜥蜴サラマンダー土蜥蜴アースサラマンダー、カルキノス(カニの魔物)、黒い犬ブラックドッグ影狼シャドーウルフ雪狼スノーウルフ等の通常兵器でも倒す事が出来る魔物達だが数が多い。

 下手に介入されると、個別に壊滅させられる可能性が高い。

 防衛課と共に包囲網を構築してくれた方が助かる。


 更に5分程経つと上空に大型輸送ヘリが到着し、完全武装の機動戦略隊の隊員30名が飛び降りてくる。

 ちなみに彼らは上空25m位のところから、パラシュート無しの降下だ。

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