第156話 やらかした
澪さんと萌さんのやり取りを聞いて飛騨さんも落ち着きを取り戻した。
周囲は手早く食べて訓練に向かう者と落ち着いてご飯を食べる者に別れた。
そんな中、澪さんが
「優ちゃん、自主訓練する場合のアドバイスを頂戴」
と言うので
「普段と調律状態の魔力の状態を比較する事をオススメします」
と答えると
「ありがとう。
食べ終わったら、魔力制御訓練室に行って確認する。
その後、違いを検討する。
二人もそれでいいね?」
二人が了承すると同時に数人が席を立ち上がり
『魔力制御訓練室に急ぐ。混み合う前にデータを取るぞ』
誰かの号令の元、走って出ていった。
「他にアドバイスは無い?」
澪さんは、更にアドバイスを要求してくる。
「訓練時の注意事項と魔力分布に気を付けてください。
これ以上は無いですよ」
「残念。極意まで聞きたかったのに」
「極意ならありますよ」
「え、ホント? 教えて」
「別に構いませんよ」
「極意ってどんなの?」
澪さんは興味津々と言った感じで、周囲は固唾を飲んで待っている。
「魔力調律状態を24時間維持し続ける事です」
周りはキョトンとしている。
「この訓練の最終到達点は、魔力の状態に関わらず魔力調律状態を維持する事です。
なので、無意識下でも最低限の魔力制御として調律状態を維持出来る様に成ることです」
「それって、今やっている事はほんの入口って事?」
「その通りです。
私や伊坂さん、平田さんの様に常時魔力調律状態を維持出来る事こそが、この訓練の極意です」
「要するに近道は無いと言う事ね」
「そうです。だから、頑張ってください」
「なら焦っても仕方ない。毎日コツコツやるのが最短」
そう言うと、またゆっくりとご飯を食べ始めた。
以前は流行りモノが大好きな普通の女性だったのだけど、私の訓練に付き合って相手してくれる内に、何故か黒崎教導官と意気投合してからは言葉数が少なくなったし、物事を合理的に考える様になった。
だた、相変わらず自分の好きな事になるとマシンガントークが飛び出す。
何が彼女を変えたのは不明だ。
食事後、今日の担当護衛官と一緒に宿泊棟に戻り、平田さんを診察する。
どうやら、やらかしてくれた様だ。
「平田さん。魔力使いましたね」
「えーと、なんの事かな?」
明後日の方向に顔を向け、目が泳いでいる。
「とぼけても無駄です。
貴方の
平田さんは観念したように
「なんで、ほんの少ししか使っていないのに分かるの?」
問うので
「貴方の感覚でほんの少しのつもりでも、今の貴方の
「でもさ、本当にほんのちょっと何だよ」
「今は、魔力を使わず安静にする様に言いましたよね」
「でも、感覚的には問題無いよ」
「ダメです。
今の貴方は、F3程度の魔力でもダメージを負う程弱っているのに
C1レベルの魔力を流して無事の訳無いでしょう」
「げげ、使用量まで分かるの?」
タブレットを取り出して見せる
「
誤魔化すだけ無駄です」
怒られてた小さい子供の様に縮こまっている。
「今の状態は、退院直後より悪化しています。
平田さんの
その状態から、徐々に魔力量を増やしながら回復を促進する予定だったのですが、今の状況だと最低4週間は魔力の使用禁止期間を延長しないといけません」
「そんなー」
「自業自得です。
主
安静期間は伸びますが、魔力が使えない様に一時的に封印も検討しないと行けないかも知れません」
大きくため息をつきながらそう言うと、平田さんは何か閃いた感じで
「だったら、今制限している魔力量を増やせば回復速度も上がるんでしょ。
主
「そんな危険な事はしませんよ。
次に
現状を
だから、
私の決意を聞いて
「あ、その、ごめんなさい」
完全に落ち込んでしまった。
「まあ、正直、平田さんの
「え?」
「平田さんの
現在、貴方の
なので、万が一が無い範囲で回復に利用しているのです。
これからは、自損を行う行為を止めていただきたい。
これ以上自損行為を続けるならば、結末は貴方を殺すか
今にも泣き出しそうな声で
「ごめんなさい。もうしません」
と謝っていた。
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