第139話 4人の初訓練(2)

 私の宣言を聞いて、姿勢を正す4人。


「訓練の最初は、各人の魔力塊マナ・コアの知覚です。

 体の中にある魔力塊マナ・コアを知覚してください」


 田中さんが手を挙げて

魔力塊マナ・コアってなんですか?」

 と聞いてきた。


魔力塊マナ・コアは、体の中にある魔力の塊です。

 能力者の魔力は、この魔力塊マナ・コアから生成・維持・管理されています。

 まずは、魔力塊マナ・コアを制御出来る様に訓練します。

 意識を体の中に集中して、魔力塊マナ・コアの位置を探ります。

 では、始めてください」


 4人共目を瞑り、意識を体内に集中している。

 都竹さんと土田さんは、お腹に手を置いている。

 田中さんは、胸の前で手を組んでお祈りをしているみたいだ。

 鳥栖さんは、腕を下ろし、拳を握っている。


 魔力塊マナ・コアの位置は個人で異なるが、多くは鳩尾みぞおちから丹田たんでん(お臍から指3本分下の位置)の間にある事が多い。

 極稀に、心臓や頭部にある人も居るが、基本的にお腹辺りにある。

 あと、一般的に魔力塊マナ・コアの位置が心臓に近い方が強いという迷信があるが、これは全くの嘘だ。

 余談だがある程度魔力制御が出来る様になると、魔力塊マナ・コアを体内限定で移動する事が可能になるが、放って置くと元の位置に戻ってしまう。


 ちなみに彼女達の魔力塊マナ・コアの位置は、腹部にあり、大きさはビー玉サイズだ。


 時折唸り声みたいなものが聞こえるが、そのまま魔力塊マナ・コアの探知を行わせた。


 魔力塊マナ・コアの探知を初めて、5分経過してから

「なにか感じ取れた?」

 と声をかけると、皆首を横に振り

「全然ダメ」

 と言って落ち込む。


「今から、私が皆の魔力塊マナ・コアを外部から刺激するから、感じ取ってみて。

 まずは、田中さんから始めるよ」


 田中さんの前に立つと、

「えーと、私は何をすればいいの?」


「体の中に意識を向けて、刺激された魔力塊マナ・コアを感じ取って」


「分かった」


 女性能力者の場合、子宮近傍に魔力塊マナ・コアがある事が多い。

 田中さんの魔力塊マナ・コアの位置は、子宮の中で体の奥の方に位置している。


 右手をお腹に当て左腕を背中に回し、細心の注意を払いながら、私の魔力を田中さんの魔力の共振波長に合わせて、魔力塊マナ・コアに干渉させて揺さぶる。


「え、あ、ちょっ、あ、あ、あ、、、、」


 田中さんの切羽詰まった声が聞こえ、私の体にしがみついてきた。


「そのまま、揺さぶられている魔力塊マナ・コアをしっかりと感じる」


「あ、これ、ダメ、あ、おかしくなる。あ、あ、あ、う、う、う、う」

 何かを堪える様にして耐えている様だ?

 急速に鼓動と呼吸が早くなっている。


 魔力塊マナ・コアに刺激を与える方法は、衝撃波を加えて衝撃を感じる方法、魔力を流し込んで違和感を与える方法、魔力の共振で揺さぶる方法等がある。

 前者2択は、私の魔力で行うと高確率で魔力塊マナ・コア自体に損傷を与えてしまう。

 最悪、死亡案件になってしまう。

 最後の共振による振動も加減を間違うと損傷を与えてしまうが、前者2択に比べるとその可能性はかなり低い。


 そのまま、30秒程魔力塊マナ・コアを揺さぶり続けた。


 魔力塊マナ・コアを揺さぶるのを辞めると、真っ赤な顔で、ちょっと人には見せられない表情をして脱力して座り込んだ。


「じゃあ、次は土田さんね」

 笑顔でそう告げると、田中さんの様子を見て、顔を赤らめて呆けて居た土田さんが正気に戻ったが、抵抗する前に捕まえて田中さんと同様に魔力塊マナ・コアを揺さぶった。

「へ、あ、ちょっとまってーーー、あ、あ゙、あ゙、あ゙、、、、」

 変な声がするが気にしない。


「はい、しっかりと魔力塊マナ・コアを感じてください」

 しっかり、30秒揺さぶってから開放する。

 こちらも、座り込み、顔を赤らめて放心しています。


 残り二人を見ると、鳥栖さんが逃げ出そうとしたので、素早く回り込んで魔力塊マナ・コアを揺さぶる。

 仰け反って、激しく反応しているが、構わずに続けた。

 終わると、魂が抜けた様に床に伏せた。


 最後の都竹さんを見ると、顔を真赤にして、内股になった膝がガクガクと震えている。

「大丈夫、怖くないよ」

 と笑顔で声を掛けるが、顔が引きつっている。

 そのままゆっくり近づいて、他の3人と同じ様に魔力塊マナ・コアを揺さぶる。

 声にならない悲鳴みたいな物をあげていた。


 都竹さんの魔力塊マナ・コアの刺激を終了してから5分程放置したが、4人共放心したままだった。

「そろそろ、訓練を再開しようか?

 魔力塊マナ・コアの位置を特定したら、魔力塊マナ・コアを自身の魔力で覆ってください」


 4人は、ノロノロと顔を私の方に向けるだけだった。


「まだ、魔力塊マナ・コアの位置の特定にはが足りなかったかな?

 追加で、刺激を与えましょうか?」

 笑顔で問いかけると、魂の抜けた表情をしていた4人の顔に生気が戻り、直立不動で声を揃えて「いえ、大丈夫です」と返した。


 その後は、手をお腹に当て、目を瞑り、自身の魔力塊マナ・コアの位置を懸命に探知している。

 若干、顔が赤い気もする。


 訓練校で魔力塊マナ・コアを知覚する訓練は、一番最初に行わる訓練である。

 まず、魔力塊マナ・コアを活性化させる為にひたすら魔力を高める訓練を行う。

 ある程度活性化した魔力塊マナ・コアなら比較的容易に知覚できるし、上手く知覚できなくても、衝撃波を当てる事で知覚出来る様になる。

 ある程度活性化して大きくなった魔力塊マナ・コアなら、衝撃波で損傷する危険性も大幅に低下する。


 4人が魔力塊マナ・コアの位置を知覚した時には、8時を少し回っていた。

「8時を回ったので、今日の訓練時間は終わりです。


 提案なのですが、この後の予定が無いなら、訓練時間を延長しませんか?

 訓練初日なので、このまま終わっても問題ないのですが、その場合、明日の訓練は魔力塊マナ・コアの知覚から始めます。

 当然、知覚出来なかったら、また外部から刺激を与える所からやり直しになります」


 4人は、顔を見合わせ、頷いた後

「訓練の延長をお願いします」

 と声を揃えた返答が返ってきた。

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