第4話 問診
車に乗り込み移動を開始する。
対魔庁の研究医療機関は、ここら1時間ちょっとの場所にあるらしい。
移動中は、私が緊張して固まっていたが、母さんと氷室さんは雑談に花を咲かせていた。
対魔庁の研究医療機関は、普通に大きな総合病院に見えた。
「ここって、普通の病院に見えるんですが?」
駐車場から病院の方を見ながら氷室さんに尋ねると、
「ああ、あそこに見えるのは一般診療所だからね。
対魔庁の研究機関は、ここの裏手だから少し歩くよ」
氷室さんに続いて歩くこと10分
途中でセキュリティゲートを2つ程通った先の建屋の診察室に着いた。
「ようこそ、対魔物対策庁研究機関
私は、能力研究課主任の
いかにも研究者といういで立ちの女性が出迎えた。
「神城 優です」
私も挨拶を返した。
三上さんは、自分の前の椅子に腰掛けるように指示する。
母さんは、少し離れた壁際に椅子に座った。
「では、早速問診から始めよう。
リラックスしたまえ、無理にかしこまる必要もないぞ。
女体化は、いつから?」
「今朝、起きた時点で女体化していました」
「男性に戻ろうとはしたか?」
「はい、試しました。でも、戻れませんでした」
「あら、いつの間に試したの?」
いつの間にかに真後ろに母親が立っており、低音ボイスで訊いてくる。
「...着替えが終わって、氷室さんが家にくる間にリビングで・・・」
しどろもどろに答えると
「それは気づかなかったわ。
でも、元に戻れなくて良かったわ。
その格好で元の姿に戻っていたら、ものすごい格好になっていたわよ」
この服装のまま元の姿に戻っていたら?
そんな事全く考えていなかった。
女の姿と男の姿では、体格差があり過ぎるのだ。
結果など火を見るより明らかである。
この格好のまま男に戻った姿を想像して、真っ青になっていた。
「まあ、次は気をつけるように」
三上さんが助け舟を出してくれた。
「はい、気をつけます」
そう言うと、母さんは椅子に戻っていった。
「では、女体化して感じる事はあるか?」
「感じることですか?」
「そう、今までの体とは全く違う体になったのだから違和感とか感じないか?」
「そうですね。
視線が下がったのでいろんな物の見え方が変わりました。
あと、遠くの物も良く見えます。
今まで見えなかった様な遠くの看板の小さな文字とかも読めました。
体を動かした感じでは、違和感を感じ無いとう言うより妙にしっくり来る感じです。
あと、体の奥? お腹の奥あたりに何か塊みたいなものを感じます」
「ほう、それはどんな感じなんだい?」
三上さんが食いついてきた。
「えーと、熱い様な冷たい様な感じの塊です。
お腹の中でテニスボール位の珠が自転している様な感じがします」
目をつぶってお腹に両手を当て、今感じる感覚を言葉にして返答する。
「実に興味深い。おそらく今感じているのは魔力の塊だろう。
この後の検査で、貴重なデーターが取れるかもしれんな」
クククと忍び笑いをする三上さん。
「マッド・サイエンティスト!?」
思わず溢れた言葉に。
「あー 気にしなくても良いよ。
この人そういう感じだけど、仕事は迅速丁寧でしかも正確。
色々と注文つけるけど、嫌なことは嫌だと答えれば、基本的に嫌がることはしないから」
と氷室さんからフォローが入った。
どうやら優秀な人らしい。
「さて、この後の予定を話しておこう。
今日 午後から神城さんには身体検査を受けてもらう。
検査には、半日は掛かるからな。
明日は、能力検査だ。
様々なテストを受けてもらうから丸一日掛かる。
何事なければ3日目には、ライセンス証の発行を行って自宅に帰れるはずだ。
その期間の間に男に戻る方法も検討しよう。
ただし、性転換者の症例が少ない上、元に戻った事例が無いため検討だけで終わるかもしれないがな」
一応、男に戻る方法を検討してくれるのか。
なんとか元に戻れると良いな。
「神城さんを部屋に案内を頼む。
あと、施設の利用の仕方も教えてやってくれ」
三上さんは、近くにいた看護師さんに指示をだした。
看護師さんの先導で、診察室を後にするのだった。
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