第51話 現状確認(4)

 怪我をした人達は、強制的に病院に搬送されていった。

 全員、最後まで抵抗していたけど、怪我をしているのだから大人しく治療を受けて欲しい。


 残った研究員と応援に来た研究員が周りを片付けている中で、私の放出系の確認を行うことになった。

 まず、私が放つことが出来る風属性の技を撃つ。

 空気弾に真空刃を単複で撃つ事しか出来ないのだけど。


 戸神さんに、指導される事で威力は上がったがまとには傷一つ付かない。

 あと、強風や旋風等も教えて貰ったが、攻撃というより足止め用だと言われた。

 おまけで、風壁ウィンド・ウォールも教えて貰った。

 戸神さんは、風壁ウィンド・ウォールに攻撃力が無いしそれ程強度が無いので、無能力者やFランクの犯罪者を取り押さえる時に風壁ウィンド・ウォールで挟み込んで相手を無力化しているそうだ。


 私の放出系の評価は、ランク相応だという事で今回の示威行動には使えないと言う判断になりました。


 これで終わりかと思ったら、太和さんが自分達の能力アビリティも習得可能か試して欲しいと言ってきた。


 三上さんに指導を受けながら、魔力回路転写術を実行してみた。

 太和さんからは、放出系:地

 霜月さんからは、具現化系:氷

 戸神さんからは、放出系:火

 を試した結果、発露出来たのは具現化系:氷と放出系:氷だけだった。

 三上さんの見解では、放出系:氷が発露したのは、元々発露寸前の能力アビリティにあったので、相互干渉で発露したのではないかとの事。


 放出系:火と地は、発露までいかなかっただけで、定着まではきちんと出来ているので、訓練を積めば発露する可能性が高いとの事。


 ついでに、自分自身を鑑定する方法も習った。

 その結果、

 身体強化:S1

 放出系:風B2、氷F1

 具現化系:氷F1

 特殊系:耐日光C1、魔力回復A2、能力鑑定A1

 魔力量:1.48GMPギガ・エムピー


 色々と能力アビリティが増えた。


三上「取り敢えず、検証は終わりだな。

示威作戦の内容を考えよう。

神城は、今の内に新しく手に入れた能力アビリティを中心に訓練をしてみろ。

直ぐに成長するはずだ。」


伊坂「太和、霜月、戸神、三上主任に水嶋君は、こちらに来てくれ。

現状で可能な示威作戦の内容を検討したい。」


実験場に置いたるテーブルを囲って話し始めた。


五島さんが、少し離れた場所で片付けの邪魔にならない所に誘導してくれた。


若桜「何を練習しよっか?」


風壁ウィンド・ウォールを使って、少しやってみたいことが有ります。」


若桜「何をするの?」


風壁ウィンド・ウォールって、叩いても硬かったので上に乗れるかなっと思って。」


若桜「上に乗る?」


「まず、風壁ウィンド・ウォールを水平に展開して。」

風壁ウィンド・ウォールを膝の高さに展開する。

展開した風壁ウィンド・ウォールを手で叩いてみる。

ペチペチと音がしたので、上に乗ってみると乗れたので立ってみた。

軽く風壁ウィンド・ウォールの上で飛び跳ねると、パリンという音共に割れて床に飛び降りる事になった。


「割れちゃった」


五島「風壁ウィンド・ウォールのサイズを小さくして、厚みを増す様に展開すればもっと強度が出ますよ。」


「やってみる」


先程は、戸神さんが見本で見せてくれた縦横2m、厚さ3cmの風壁ウィンド・ウォールを水平展開したものを縦横40cm、厚さ10cmで魔力量を変えずに展開して上に乗り飛び跳ねてみる。


「おお、今度は大丈夫だ」

更に飛び跳ねるが、壊れる気配はない。


五島「大丈夫そうですね。今度は、どこまで丈夫かを試してみてはどうですか?」


「どうすればいいのかな?」


五島「身体強化を使って踏み抜いてみてはどうですか?」


「やってみる」


最初に成功した風壁ウィンド・ウォールは、身体強化を使ったらあっさりと壊れた。

その後、五島さんと安藤さんも知恵を出して貰いながら試行錯誤を繰り返して、直径20cm、高さ20cmの円柱の足場で、出力75%の身体強化にも1撃なら耐えられるものになった。

その後は、空中に足場を作りながら歩いていた。


若桜さんと氷室さんは、私の行動を微笑ましく見ているが、今日会った4人は目が点になっていたが我に返ったのか若桜さんと氷室さんに色々と聞いていた。


ある程度自由に歩けるようになったので、ぴょんぴょん飛び跳ねていたら、安藤さんが、『少しずつ距離を伸ばしながら飛んでみたらどうだい。』というのでアスレチックの八艘飛はっそうとびの様に左右に飛びながら距離を開けていく。

最初の内は、先に着地地点に風壁ウィンド・ウォールを展開していたけど距離が開く程に正確に設置出来なくなったので、着地する時に風壁ウィンド・ウォールを展開する様に変えてどんどん距離を伸ばす。


気づいたら、一度に20m以上を飛ぶ事が出来るようになったし、飛んでる最中に新たに出した風壁ウィンド・ウォールを蹴ったり、手で押し返す事で軌道を制御出来る様になった。

今は、実験場内を縦横無尽に飛び回っている。

若桜さん達を始め、研究員達も飛び回る私を見て歓声を上げてる。


これ、楽しい。


太和「なんじゃこりゃー」

下から大声が聞こえた。


示威作戦の対応を検討していた人達も驚いている。

霜月さんが手招きをしているので、霜月さんの前に降りた。


減速は、硬い風壁ウィンド・ウォールを試行錯誤中に出来た柔らかい風壁ウィンド・ウォールを薄く展開して複数枚突破する事で行った。


「何か用ですか?」


霜月「いや、どうやって飛んだのだ?

何かを蹴って飛んでいる様に見えたが、実験室の壁を蹴っていない上、空中で軌道を変えていたから気になったのだ。」


三上さんもやって来て、私を鑑定している。

なんとなく、鑑定されている事も分かるようになった。


三上「飛翔に関する能力アビリティは有していない。」


風壁ウィンド・ウォールを足場にして飛び跳ねていました。」


太和「風壁ウィンド・ウォールを足場にって、あれそんなに強度無いだろう。」


戸神「ええ、ありません。」


「ても、こんな感じで作ったら、75%の身体強化でも壊れませんでした。」

目の前で、実演してみせた。


戸神「目から鱗とは、正にこの事ですね。

確かに、風壁ウィンド・ウォールは空中に固定出来る。

足りない強度は、小さくする事で強度を上げるとは。

しかし、この短時間でそこまでの事が良く出来ましたね。」


「五島さんと安藤さんも手伝ってくれたよ。」


霜月「楽しかったかい?」


「うん、楽しかった。」


霜月「そうか。」

少し、脱力して微笑んでいた。


周りを見ると、皆脱力している。


太和「調子が狂うな。だが、これでなんとかなりそうだな。」


水嶋「もっと広い所で検証が必要ですが、示威行動に組み込むのも有用です。」


戸神「地上で一度検証を行いましょう。確かこの時間は空いていたはずです。」


伊坂「では、地上で空中跳躍くうちゅうちょうやくの検証を行ってから、解散としよう。」


私達は、売店側のエレベーターに乗るために移動を開始すると、実験室に居る研究員達が、検証に必要な機材を大慌てで掻き集めて搬送しはじめた。

私達と反対方向だから、工廠棟こうしょうとう側のエレベーターを使うのかな。


地上に出てると、後ろからドタバタと機材を抱えた人や軽トラに機材を載せて運搬して設置いる。


待っている間に、氷の放出系と具現化系を練習する。

現状では、ほんのり冷たい冷気と小さな氷の塊がでるだけだった。

成長すれば、氷の塊を射出できたり、風と合わせて吹雪を起こしたり出来るらしいので、何時か出来るようになったらいいな。


機材の準備が出来たので、無線を着けてから飛び上がる。

まず最初は、グランドを斜めに横断する様に飛ぶ。


流石に一回の跳躍では、対岸まで届かないので空中を駆ける様にして飛ぶ。

4秒かからず対岸に着き、空中で足場を作り元の場所に向けて飛ぶ。

それを5往復したところで、グランドの縁を時計回り周回する様に飛ぶ。

10周したところで、反時計回りで10周飛ぶ。

その後は、グランド内を円を描きながら徐々に中心に向かう様に円周を縮めながら飛び、中央で真上に飛び上がる。

その後は、無線指示に従って高度の変化を加えながら様々な軌道を飛ぶ。

たぶん30分位飛んだ所で、戻って来る様に言われたので戻る。


伊坂「神城さん、体調等になにか変わりはあるかね?

あと、屋外を飛んで感じたことはないかな?」」


「身体は、なんとも無いです。

飛んでみて感じたことは、風が顔に当って痛かったです。

最初、目を開けるのも大変だったので、風壁ウィンド・ウォールで顔の全面に風よけを着けても結構痛かったです。

服が風でバサバサと音を立てて震えるので、体勢を維持するのを邪魔されている感じがしました。

あと、風切り音と服の音がうるさくて、無線が聞こえづらかったです。」


伊坂「他に感じたことや、思ったことは有ったかい?」


「空を飛ぶのは、大変だけど面白かったです。」


伊坂「そうか。これで、検証を終わりにしよう。

三上主任、済まないが神城さんに私の能力アビリティ、広域探知と空間把握の転写をお願いできますか。」


三上「わかった。」


「広域探知と空間把握?」


伊坂「広域探知は、広範囲を知覚する能力アビリティ

空間把握は、空間情報すなわち自分と周辺情報を正確に把握する能力アビリティだ。

空を飛ぶならこの2つの能力アビリティを使えるようになった方が便利だ。

是非とも習得して、使いこなして欲しい。」


「はい、頑張ります。」


伊坂さんは、微笑みながら頷いている。

三上さんに誘導されながら、広域探知と空間把握を転写・定着に成功して、伊坂さんに使い方を指導受けた結果、見事に発露しました。


「これ、すごい。

まだ、ハッキリと分からないけど、何となく周りの状況が分かる。

範囲は、10m位かな?」


伊坂「習得したてだと、普通2~3mなんだけどね。

基礎魔力量が桁違いすぎるから検知範囲が広がっているだろう。

出来るだけ常時起動させて慣れて欲しい。」


両手のこぶしを胸の前で握って

「分かりました。頑張ります。」


伊坂「霜月君、神城さんを寮まで送っていってくれ。

その後は、会議室に。」


霜月「了解です。」


霜月さんに寮まで送って貰った。


ちなみに今の能力は以下の通りだ。

魔力:1.48GMP (UP)

身体強化:S1

放出系

 風:B2 (UP)

 氷:F1 (NEW)

具現化系

 風:C1 (NEW)

 氷:F1 (NEW)

特殊系

 耐日光:C1

 魔力回復:A2 (NEW)

 能力鑑定:A1 (NEW)

 広域探知:F1 (NEW)

 空間把握:F1 (NEW)

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