第97話 資源ダンジョン(8)

 私達の居る広間も真っ白になった。

 幸い結界が間に合ったので、結界内は何事も無かった。


 太和「やっぱり、罠か。

 どちらの道を選んでも、挟撃される様に仕組んでいたとなると、確実に宰相チャンセラーがいるな。」


 戸神「これで、将軍ジェネラル宰相チャンセラーが居る事が確定ですね。」


 霜月「それで、これからどうする。

 そこの下層への道も、多分行き止まりだと思うぞ。」


 戸神「あからさまなキルゾーンですからね。」


 太和「取り敢えず、着た道を戻ろう。

 此処に来るまで一本道だったが、俺達が見落とした通路が有るはずだ。」


 もと来た道を戻る。

 入り口から真っすぐに20m程進んで左にゆるく曲がっている。

 前例があるから、頭上を注意しながら左に曲がる道を進んでいると違和感が有った。


 思わず足を止めて、今通り過ぎた所を振り返った。


 霜月「どうした?」

 霜月さんの声で、皆の足が止まった。


「何となく違和感を感じて。

 何がどう違和感を感じているのかが、ハッキリしないんです。」


 太和「何処で違和感を感じた? 大体の場所で良いから。」


「そこの曲がり角の所です。」


 太和「その辺りを、調べてみよう。」


 全員で調べてみるが、何も見つからない。

 当然、天井付近に照明弾を上げて、天井付近も能力アビリティで探索しても何も無い。


「何も見つからないけど、違和感を何処で感じるんだろう。」

 そう呟いてから、もう一度探索する。


 周りも気の所為だったかと、思い始めた頃にもう一度照明弾を撃ち上げた。

すると山奈さんが、指をさして「あったー」と叫んだ。


 太和「何処だ?」


「あそこです。あそこだけ、本来の影と反対側にも影があります。」

 山奈さんが指さした天井にある岩には、影が2つ存在していた。


 黒崎「確かに、影が2つ有る。

 しかし、探知には普通に天井があると判別している。」


 太和「だったら、直接確認するしか無いだろう。

 戸神、神城、二人でそこを調べてくれ。」


 戸神「了解」


「はい。」


 私と戸神さんが、空中跳躍で問題の岩に近づく。

 あと5mまで近づいた時に、風景が変わった。

 目の前に、真上に空いた穴が有った。


「戸神さん、これはどういう事でしょう?」


 戸神「幻影の結界が張られていたのでしょう。

 一旦戻りましょう。」


 下に降りて、居残り組に天井付近での出来事を話してから、下から見た状況を聞くと、天井付近で私達が消えた様に見えていた。

 そして、次に問題になったのが、どうやって天井まで登るかだった。

 私と戸神さんは、飛べるので問題が無いが、他のメンバーは身体強化を使っても、17m位までしか飛べない。

 装備を外して、身軽に成っても20mも飛べない。

 ここの天井は、約40m。

 全然足らない。

 ロープ等も持ってきていない為、壁をよじ登るか、私と戸神さんが抱えて運ぶか2択しかない。


 山奈「20m以上の足場があれば、飛び上がれそうなんだけな。」


「足場!」


 太和「?  どうした?」


「足場を作れば良いんですよ。」


 太和「確かにそうだが、どうやって作る?」


「こうやって、土の能力アビリティで。」

 そう言ってから、私達の足元の地面を持ち上げるように上昇させる。


 地面が持ち上がる振動に、山奈さんが悲鳴を上げて尻餅をついた。


 黒崎さんは、地面に石突を突き立てて、揺れに堪えている。


 太和「うぉぉぉー。 地面が上昇している。」


 太和さんと戸神さんと霜月さんは、足を踏ん張って耐えている。

 そのまま、天井付近の幻影結界を超えると、風景が一変した。

 剥き出しの岩肌が、加工された岩に変わっており、直径10mの穴が開いている。

 足場を更に上昇させて、穴の中に突入する。

 この穴も、綺麗に加工されている。

 縦穴内を30m程昇ると、巨大な広間にでた。

 200m四方の正方形で、天井まで50mはありそうだ。


 私達が居るのは、この部屋の一辺の中央当たりで、正面の壁に100m×40mも有る大きな通路と、左右の壁に50m×20mの通路があった。


「どうしますか?」


 太和「正面の通路の先に、支配者階級が待っているんだろうな。

 周辺を調査を優先しよう。

 右側の通路から調べる。

 それと神城、乗ってきた足場はそのままにしておこう。

 タラテクト共が戻ってきた時の障害物になるだろう。」


 隊列を組み、右側の通路を進む。

 ここの通路は、きれいなアーチを描いており、撃ち上げる照明弾が、通路灯の様に均等に並んでいく。

 通路の先に有ったのは、左右に100m、奥行き300m、高さ50mは有ると思われる部屋に、天井まで続く本棚を連想させるマス目の棚が沢山並んでいる。

 マス目は、1つが5m×5m×5mのサイズがあり、縦横に9マスで一つの棚を形成している。


「ここは、何なんだろう。」


 戸神「おそらく、騎士ナイト工兵エンジニアの待機所か育成場だと思います。」


 霜月「探知はどうだ?」


 黒崎「何も反応なし。」


「私もです。」


 太和「此処の奥まで真っすぐ進んで、何もなければ2班に分かれて壁沿いに此処に戻ろう。」


 奥まで確認して何にも反応が無く、2班に別れてこの部屋の入口を目指して壁沿いを移動するが、何も見つからなかった。


 次は、入り口の広間の反対側の通路を調べるが、こちらも同じ様な棚のある部屋で、何も見つからなかった。


 この時点で13時を回っていたので、入り口の広間に戻り、一番大きい通路の反対側の壁際で、通路の真正面から少し外れた位置で、休憩することになった。


 昼食を食べ、休憩中

 太和「相変わらず大通路の先は、探知出来ないか?」


「出来ません。何故か通路から10m先からは何も探知出来ません。」


 黒崎「確実に、特殊な結界が張られている。

 恐らくボス部屋に繋がっていると思う。」


 太和「さて、進軍か撤退か、悩みどころだな。」


 此処まで来たら、一気に攻め込むものだと思っていたのだが、太和さんが悩み始めるとは。


 霜月「どうした、不思議そうな顔をして。

 恐らく、太和が進退について悩んでいるのが不思議か?」


「え、はい。そうです。てっきり、進軍オンリーだと思っていたので。」


 太和さんが、苦笑いをしている。


 霜月「気持ちは分かる。だが、我々は先遣隊であって、情報収集が主任務だ。

 討伐は可能なら行う程度で、生還が必須の任務だ。

 ここまで、優ちゃんのお陰で消耗無しに来られたが、この先に居るのは、将軍ジェネラル宰相チャンセラーだ。

 最悪、女王クイーンまで居ると考えるべきだ。


 確実に討伐するなら、機動戦略隊の応援を待つべきだ。

 しかし、そうなると軍隊アーミータラテクト側にも時間を与える事になる。

 そうすると、多少なりとも立て直しを図ってくるだろう。

 それで、どの程度強化されるか分からない。

 だから、現状取り得る行動は、

 1.多少の危険性を覚悟の上、ボスの部屋に乗り込む

 2.より確実性を求めて、機動戦略隊の先遣隊と合流後、ボスの部屋に乗り込む

 3.機動戦略隊の本隊を待って、改めて攻略する

 の3つだ。

 正直、優ちゃんが居る時点で負ける要素は無いと思っているが、どの程度被害が出るか分からない。」

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