第272話 1年次夏期集中訓練 3日目(6)
「そうそう。
アレ程の
報告された状態よりも改善されて、絞った雑巾からツイストドーナツになっていた。
まだまだ時間が掛かるだろうが、良い傾向を示していたぞ」
と言われたので
「そうですか。
問題が無いのなら良かったです」
と答えると
「そうそう、研修島に集まっていた訓練生の落ちこぼれ達の約2割は、毒島程ではないが
残りは、
だから、神城式を教えておいたぞ」
と言う。
「なんですか?
その神城式というのは?」
と聞くと
「簡易魔力計を使った
今まで誰も思いつかなかった画期的な方法だ。
今回連れて行った
と返された。
私は
「驚く程の事では無いでしょう」
と返すと
「
そして
それが常識だった。
だが今回の調査で、
そういう者の訓練に、簡易魔力計を用いた訓練は非常に有効だ。
それに簡易魔力計は、訓練校に自動能力測定機が導入される前に魔力量測定で用いられていた物だ。
だから、どこの訓練校の備品庫に眠っている。
そして、新しい測定器の購入を行わくて済むから直ぐに広がるだろう」
と言われた。
私は、気恥ずかしくて黙っていると美智子さんが
「
と質問すると、三上さんは
「そうだな。
君は利き腕を間違えるか?」
と聞くと、美智子さんは
「間違いません」
と即答する。
三上さんは、大きく頷き
「そうだろう。
普通利き腕を間違えないよな。
それと同じで、自転している
だから、感知できないはずは無いと思われていたんだ」
と答えた。
次に都さんが
「簡易魔力計を使って回転方向を知る方法って、今まで誰もやらなかった事なんですか?」
と質問する。
三上さんは
「ひょっとしたら誰か行っていたかもしれないが、私が知る限り、簡易魔力計を使って
と答えると、千明さんが
「じゃあ、魔力計を使った訓練って、画期的な事なんですね」
と言うと、三上さんが
「その通りだ。
簡易魔力計は、その名の通り魔力量を計る物だ。
だから、魔力量を気にすることはあっても、数値の変化と
だから、神城が
我々も気づかなかった盲点に光を当てたんだ。
もう一度基本を見直す必要が出てきた
色々と忙しくなるぞ。
そうそう。
これからは、
最低限、夏期集中訓練時に落ちこぼれ連中の検査はやるべきだな」
と嬉しそうに語った。
「そうなると、落ちこぼれる人が減りますね」
と美智子さんが言うと
「そうであって欲しいものだ」
と返ってきた。
ずーと考え込んでいた都さんが、意を決した様に
「その検査って、能力が未発露の人にも出来ませんか?」
と言うと、三上さんは少し考えてから
「非常に興味深い提案だ。
だが、現状では難しい」
と答えると
「そうですか」
と少し落ち込んだ感じで返事をした。
三上さんは
「どうして、未発露者に検査をしたいと思ったのか教えてくれないか?」
と言うと、都さんの顔が苦々しくなった。
そして
「私、中部方面隊官舎で育ったんです。
そこには同級生の幼馴染が4人居て、その中の1人の娘と特に仲が良くて。
小さい頃は、大きくなったら一緒の部隊でコンビを組もうって話していた程の仲良しだったんです。
ですが、私達5人の中で彼女だけが
そして、彼女は弟が2人居たのですが、その2人は
彼女の親族の中で、彼女だけが
その為、彼女の居場所が無くなって。
以前は、明るく自信に満ちた性格だったのに。
自信無くオドオドした性格になって。
親友だと思っていたのに。
私からも逃げる様になって。
疎遠になってしまったんです。
そして、何も告げず、県外の学校に転校したのです。
彼女の家族に聞いても、何も教えてくれなくて。
それ以降、音信不通で。
当然、長期の休みにも戻って来ないんです。
だから、検査を受ける事が出来たら。
また違った未来があったのかなと思って」
ポツリ、ポツリと苦々しい思い出と共に話してくれた。
三上さんは
「そうか。
それは辛かっただろう。
現状、未発露者への検査は難しい。
なにせ、まだ診断可能な機器が1台しかないからな。
将来的には、未発露者への検査が可能になる様に善処しよう。
まずは、小型化と低価格化が課題だな」
と言って、考え込んでしまった。
私は、その娘の気持ちが何となく分かる。
聞いていて辛くなった。
照山さんと梅原さんが、話題を変え明るい話をするが、私の気持ちが回復する事がなかった。
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