第190話 ゴールデンウィーク(18)

 お昼食べている最中に田中さん達は

「そうだ、連休が終わったら中間テストだった」

 と頭を抱えていた。


 南雲さんを見ると、高圧縮学習装置のデータの事を考えている様だったので、反応が無いかもと思ったが

「南雲さん」

 と声を掛けると

「どうした」

 と返してくれた。


「田中さん達の学習状況って、どの様な感じですか?」

 と聞くと

「学習進捗か?

 端末が手元に無いから、確かな事は言えないが、中間テストなんて問題ないと思うぞ」

 と返ってきて、田中さん達は『え?』と驚いた。

「そうだな、高圧縮学習装置の使用頻度は、週2の1回1時間から1時間30分で、1日に2回だな。

 そして、毎週使っているから4週間位だから、使用時間は最低16時間というところだ。

 ゴールデンウィークでの使用時間とかも考慮すると、30時間を超えていると思うぞ。

 科目は2巡目に入っているし、総学習時間は70時間を超えているはずだ。


 それに使用している教材は、結構な学習速度で進められていたはずだから、テスト範囲を十分カバーしていると思う。


 その辺りは、各人が試験範囲を思い返してみればわかるのでは?」

 と返されて、田中さん達は、お互いの顔を見合わせてから

「うーん」

 と唸りながら思い返している。

 そして

「そう言われて思い返してみると、何となく大丈夫のような気がします」

 と土田さんが返すと

「私はちょっと不安だな」

「私も、ちょっと不安」

「私も、なんとかなるかも?」

 都竹さん、鳥栖さん、田中さんも答えた。


「試験まで、まだ3日もありますから復習すれば良いし、午後と土日も高圧縮学習装置を使うのでしょ。

 だったら、特に問題も無いとおもいますよ」

 と私が言うと

「そうだな、いっその事、復習しないでテスト受けてくれた方がこちらとしてもありがたいな」

 と南雲さんが零すと、皆の視線が南雲さんに集まった。

 特に田中さん達4人は、「何言っているの」という表情だった。


 そんな周囲の状況に構わず

「その方が、高圧縮学習装置の学習効果を検証するのにちょうど良いからな」

 と茶化す様に言った。


 それを聞いた4人は、お互いにきちんとテスト勉強をしようと確認していた。

 そして、私の方を見た。

「私は、きちんと復習していますよ」

 と答えると、何故か絶望的な顔をしている。


 お互いに顔を見合わせ

「神城さんは、優等生だから仕方ない。お互い頑張ろう」

 と鳥栖さんが声を掛けると

『おー』

 と3人が応答していた。


 なんだか腑に落ちない。



 お昼を食べ終わった後、食後の片付けを田中さん達4人がやっている間に、今日の隊員達がやって来た。


 その隊員達8人は、昨日作ったゴーレムで遊んでいる。

 後片付けが終わった田中さん達も加わり、良く分からないダンス対決をしている。

 ゴーレムが、一斉に動き出しクネクネと奇妙な動きをした後、ピシっと決めポーズを決めて一喜一憂している。

 まあ、楽しそうにしているから良いんだけど。


 13時から午後の訓練を始める。

 普段通り魔力調律状態の維持だ。


 号令と同時に全員が始めがるが、鳥栖さんを除いた訓練生組は、まだ自力で調律状態になれないので、強制的に調律状態にする。


 今日居る隊員組は、しっかりと訓練をしてきた様で、調律状態の維持時間は5分から10分も維持出来た。

 訓練生組が20分を超えている事を考えると少なく感じるが、魔力量の差を考えると隊員の方が難度が高く、訓練生より圧倒的に少ない自主訓練時間で行った事を考えても、十分な成果を出しているといえる。


 それでも、魔力制御能力はまだ推奨値に達していない。

 今は推奨値の40%に届くかな?と言った状況だ。

 今後も頑張って欲しい。


 訓練生組も頑張っているが、鳥栖さん以外は今朝とほとんど変わらない結果となった。

 その鳥栖さんは、調律時間が31分と伸び、魔力纏身まりょくてんしん時間も1時間4分と伸ばした。


 その結果、隊員組も含め他の人は悔しがっていた。


 2回の魔力調律状態の維持訓練の後、高圧縮学習装置を使った学習を行う。

 午後は、各人の上限で行われる。

 そして今日から、田中さんと鳥栖さんの条件が変わった。

 田中さんは、圧縮率2.5倍から3倍になった。

 鳥栖さんは、圧縮率2.2倍から2.4倍になり、維持時間が1時間35分から1時間45分に伸びた。

 能力アビリティの取得と、自力で調律状態に成れた事に依る結果だと思う。


 そして、この事は彼女達のやる気を刺激した。

 なにせ結果が、目の前に明確な数値として現れたのだから、やる気を刺激されて当然である。


 当然の事ながら、南雲さんも大いに興奮していた。

 単に順応したのではなく、より適応した事がハッキリと分かったからである。

 もう、これからデータを見るのが楽しみでたまらないと言った感じだ。

 そんな感じで2回目の高圧縮学習装置を使用する。


 他の人達より一足先に終わったので、夕食の準備の為台所に向かうと、既に平田さんと隊員達が夕食の支度を始めていた。

 結局、夕食作りに参加出来ず、食後の片付けも田中さん達に取られたので、手持ち無沙汰になった。


 夕食後、田中さん達と隊員達がシャワーを浴びに行くのに合せて自室に戻り、普段通りに過ごした。

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