第49話 現状確認(2)
10分程で、準備が完了したみたいだ。
水嶋さんが、準備が完了したと呼びに来たが、周りのスタッフは忙しく
水嶋「周りは気にしないで良いですよ。
次の
まずは、この
結界の中に鎮座する
どうすれば良いか分からず周りを見ると
「取り敢えず、最大魔力で
と太和さんに言われた。
「分かりました」
と答え、言われた通り魔力最大で
周りは、静まり返り
そして、研究員達からは感嘆の声が上がるが、霜月さん達の顔は渋いものだった。
「全然ダメだな」
と言いながら、太和さんは私の所にやってきた。
「まず、
と言われたので、
「神城は、武術の経験は無いだろう」
「はい、ありません」
「そうか。なら基本の正拳突きのやり方を教えよう」
それから、正拳突きのやり方を教わった。
足は、左足を前に出し右足の
両腕を体に着ける様にして両手の拳を顔の前に持ってくる。
突きの初動は、右足から左足へ体重移動と右膝を左に
身体が
左手の場合は、左右逆転で行う。
その動作を太和さんに手取り足取り指導されながら繰り返す。
太和さんが形になったと言うまで30分以上かかった。
その感覚を忘れない内に、次の
暫くすると、
「よし、次は踏込みで正拳突きだ」
それから、5分程練習をして3つ目の
3つ目の
4つ目の
太和さんから、
その結果、
私は、強烈な脱力感に襲われ、その場に座り込んでしまった。
これには、全員言葉を無くしていた。
我に返った若桜さんが、慌てて駆けて来る。
「優ちゃん、大丈夫?」
「大丈夫です。
なんか力が抜けて動けないだけです」
駆けつけた霜月さんにそのまま抱き上げられた。
「取り敢えず、この場を離れるぞ」
そのまま、三上さん達の所まで連れてこられた。
若桜さんと三上さんから診断を受けた結果、魔力を使い果たしただけだった。
「若桜、神城の回復量はどうなっている?」
と三上さんが声を上げる。
若桜さんは、タブレットを出して数値を確認している。
「現在の生成量は、秒間13,000弱です。
現在、総量の1%弱です。
完全回復まで、約1日掛かります。
ちなみに、検査入院時の約10倍の回復量です」
と若桜さんが言うと三上さんは、大きなため息をつき
「魔力生成量も桁違いに大きい。
他国のSランク能力者を含めても、回復量が1,000超えてる者はあまり居ないぞ。ましてや、
しかし、この感じだと最大魔力量と生成量は、まだまだ増えそうだな。
そういえば戸神教導官、君は魔力回復に特化した
と言って、戸神さんを見る。
「持っていますが、魔力を消費させないと発動出来ませんよ」
と戸神さんが言うと、水嶋さんが
「それなら、丁度良い物がありますよ。
と後ろに控えていた研究者達に声を掛けた。
「
「魔力を破壊光線に変換して放つ兵器です。
通常、魔力量C1以上の隊員5名で放つ事が出来る物で、A1ランク以上の破壊力を発生することが出来ます」
と水嶋さんが説明した。
「それは、凄い武器なんですね」
と言うと
「それ程凄い武器ではないぞ。
確かに、実力以上の破壊力をもたらす兵器という意味では素晴らしいが、一発の破壊力が強すぎるので使える状況が限られてしまう事に加え、サイズが大きすぎるので、取り回しが悪い。
それに、一発撃つと射手の魔力が尽きるから連射が出来ない。
それ故、一撃必殺で使い所を選ぶし、現場で実運用する場合、複数の射手と
現場の主力が、Dランクの者達だからCランクの射手を確保するのが難しいのが実情なんだ。
それに、
本来の性能を出すには、その10倍の50
この状態なら、S1ランクに匹敵する破壊力を発揮する。
実質、Aランク以上の大型魔物専用兵器としか使えない」
と霜月さんが酷評すると
「今では世界各国で配備が進んでいる兵器なんですがね」
と苦笑いしながら、水嶋さんが答えた。
そうしている内に、
その外見は、全長2m弱の某TV番組のスーパー戦隊の合体バズーカ砲の様な外見だった。
「持ち運びが容易になるように、合体分離機構を組込んだ最新型です。
分離状態でも、低出力の破壊光線が出せます。
アサルトライフルの魔力版として使うことも可能です」
と水嶋さんが説明する。
「どうして、この様な形に?」
と伊坂さんが問うと
「霜月教導官が指摘した様に、運搬・整備性が悪いから組立・分解が容易にして欲しいという要望と、アサルトライフルの魔力版が欲しいという要望が結構上がっています。
そこで、子供の玩具の合体兵器の様に合体分離が出来れば、状況に併せた運用が出来るのではないかと思い試作した次第です。
性能は、合体時の出力は従来の5%増強に成功。
分離時は、アサルトライフル相当です。
運用性、耐久性、整備性の調査はこれからです」
と説明された。
コメントのしようがない。
大人が真面目に全力を出した趣味兵器と言うべき物が目の前にあるだけ。
何とも言えない沈黙が流た。
戸神さんが、沈黙を破る様に
「・・・取り敢えず、これの試射で魔力を減らしますよ」
そう言うと、新しい
ほんの数秒で、魔力の充填が完了したらしく砲身に2本の線が点灯した。
しかも、充填時は砲身後部から先端に光の線が伸びていく演出付きだった。
「撃ちます」
と宣言後、
戸神さんは、こちらに向き直ると
「三上さん。
魔力も減りましたから、魔力回復の
と言うと
「ああ、すまん。ちょっと放心していた。
また、訳の分からない物を作って・・・。
制作理由は、理解出来たが遊びすぎだろう。
直ぐ準備をする。
神城、戸神教導官、ちょっとこっちに来てくれ」
と三上さんに呼ばれた。
私が三上さんの所に行くと、背中から覆いかぶさるようにして両手を取られて、三上さんの顔が私の右側にある。
「まず、目に魔力を集める」
言われた通りに、魔力を集める。
「私が、神城に魔力を流して干渉する。
その流れに逆らわずに、その流れに載る様に自分の魔力を流してくれ」
と言われた直後から、身体にチリチリとむず痒い感覚が襲ってくる。
これが魔力の干渉なんだろう。
四苦八苦しながら、むず痒い感覚に沿って魔力を流そうとする。
上手く流れた時は何も感じないけど、魔力の流れが乱れたり、振れ幅が大きいとむず痒い感覚が強くなる。
都度、三上さんからアドバイスが飛び、なんとか魔力を流す事ができた。
「その状態を維持。
まず、自分のお腹当たりにある
お腹の当たりを見ると、視覚的には見えていないはずなのに白く淡い光を放つ球体が見えている。
「白く淡い光を放つ球体が見えます」
と答えると
「それが、神城の
このまま、戸神教導官の所に移動するぞ。
戸神教導官は、そのままの状態で待機してくれ」
と言うと、三上さんに手を取られたまま、戸神さんの前に連れてこられて、戸神さんのお腹に手を当てられた。
「戸神教導官の腹当たりをよく見てみろ。
何が見える?」
「ちょっと暗い赤っぽい色の光を放つ球体が見えます」
「それが、戸神教導官の
今、私の魔力で示す場所は何が見えるか?
場所が分かったら、視線の先に魔力のマーカーを置いてくれ。
マーカーは、マジックの先をちょんと着ける感じで魔力を当てれば良い」
なんとなく、場所が分かる。
示している場所が、点滅している気がする。
その場所に、マーカーを着ける。
「これで、良いですか?」
と問うと
「上出来だ。その場所が
この部分に形成された回路が
この場所を拡大して視る。
拡大縮小は、目の魔力の方向性を調整することで出来る。
ここは、個人差が大きいから自分で調整してみろ」
と言われ、よく分からないけど目の魔力を色々とやった。
最初の内は、明るくなったり、暗くなったり、ぼやけたり、ハッキリ見えたり、大きくなったり、小さくなったりが複数組合って、よく分からない映像になって気持ち悪くなったけど、急にハッキリ見え、自在に拡大縮小が出来るようになった。
「どうだ少し誘導したのだが、上手く視えるようになったか?」
と言われ
「はい、ハッキリ見えます」
と答えると
「よし、私のマークした所を拡大してみろ」
と言われ、三上さんがマークした場所をハッキリと視える。
そこには、魔力の紋章の様な物があった。
「今見ているのが、風の魔力回路だ。
その右隣にあるのが、火の魔力回路だ。
こちらは、上位の火炎魔力回路が上書きされかけているので近い内に進化するだろう。
本命は、この奥にある回路だ。
この稼働中の魔力回路が、魔力回復だ。
この回路は、魔力生産量増加回路と周辺魔力吸収回路が合わさった上位回路だ。
この魔力回路と魔力の流れをよく見て、それを自分の
大丈夫だ、落ち着いてやれば出来る」
私は、何度も戸神さんの魔力回復回路を見ながら、自分の
途中、何度も三上さんの補助が入りながら再現する。
回路が、自分の
もう一度、戸神さんの魔力回復回路と見比べている最中に回路が起動した。
若菜さんの
「え? 優ちゃんの魔力回復量が2桁上がった」
と言う驚きの声が上がる。
「上手くいったな。
もう、戸神教導官から手を離していいぞ。
今は、その回路を維持する事に注力してくれ。
おそらく、そのまま程維持すれば30分とかからず定着するはずだ」
と三上さんが言うと、私から離れた。
「三上主任、優ちゃんが魔力回復の
説明願います」
と若桜さんが言う。
周りの人達も一様に、状況を知りたいようだ。
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