第11話 検査(3)
しばらくすると、再びモニターに戻ってきた。
「それでは、今回の魔力測定の説明をする。
分からないことが、都度聞いてくれ」
「分かりました」
「今回の魔力測定は、精密な魔力測定だ。
この部屋は、外部の魔力・電磁波・音を遮断する。
また、高感度のセンサーを全周に配置し、立体的な魔力像を収集することが出来る為、精密な魔力測定に最適な環境なのだ」
「へぇ~、すごい設備だな」
感心しながら呟いた。
「今回、君の精密な測定を行う理由は、いくつかある。
1つ目が、君の魔力の状態の調査と能力の判定だ。
2つ目が、君が世界的に実例が少ない性転換者だということ。
実例が少ないため、魔力検査のデータが存在しないんだ。
是非とも後学のためにデータを集めたい。
3つ目が、君の男性体の時の魔力値が異常だったこととの因果関係の調査
正直、君の男性体のデータは異常値を示していた。
にも関わらず、対魔庁の異常魔力値調査履歴がなかった。
神城さんは、今まで魔力の精密検査を受けたことはあるか?」
「いいえ、ありません。」
「それは、何故だい?
学校の魔力検査で精密検査を受けるように指示はなかったのか?」
「ありませんでした。
魔力検査の時、『君は魔力欠乏症だから魔力の生成量が少ないのだから気にするな。」と、検査官の人から言われていました」
「ほう、親にはその事を話したのか?」
「いいえ、検査官の人が『周りの人に言うと親・兄弟まで馬鹿にされるから親族にも秘密にしなさい』と言われていたので喋っていません」
そう答えると、三上さんはかなり険しい顔つきになった。
「小学校から毎年検査があった検査で、都度言われたのかね?」
「はい、毎回言われました」
「その検査官は、同じ人物だったか?」
「はい、毎回同じ人です。
他の検査官の時も、結果が出るとその人が来て呼ばれてました」
三上さんは、モニターにA-Hの番号が付いた8人の写真を写した。
「この中に、その検査官は居るかね?」
「Gの写真の人です」
三上さんは、画面外の人に
「証言は取れた。馬鹿供を取り締まれ」
と怒鳴った。
「えーと、どうしたのですか?」
恐る恐る聞いてみた。
「あー、済まない。
とんでもないロクでなしの大馬鹿がいた事が発覚してな。
被害者の証言も必要だったのだ」
三上さんは、後頭部を掻きながら答えた。
「まあ、状況を説明すると今までの学校で受けた君の魔力検査データは異常で、本来なら対魔庁への報告後、対魔庁から精密検査の案内・調査を行うのだが、君の場合、報告・調査履歴がなく検査結果だけがある状態だった。
明らかに誰かが不正を行ったのだ。
人命にも係る重要案件なのに今まで誰も気づかなかった。
我々の落ち度だ。本当に済まない」
姿勢を正し、かなり強い口調で静かにお怒りの様子でしたが、本気で謝っているのが分かりました。
「魔力が少ないだけで命にかかわるのですか?」
魔力の
「それは、少し説明が長くなるが良いか?」
三上さんが、そう尋ねてきたので
「お願いします。」と返答した。
「まず、魔力について説明しよう。
一般に魔力と呼んでいるものは、魔力量を指す。
それは、魔力の一側面だけだ。
魔力は、「許容量」「把握量」「生成量」の魔力量と「耐久力」「抗魔力」「修復力」の能力値に大別出来る。
他にも細かく分類出来るのだか、ここで割愛はする。
許容量は、魔力を体内に蓄積できる量。
把握量は、一度に取り出せる魔力量。
生成量は、単位時間当たりに生成する魔力量。
耐久力は、魔力に対するダメージの許容値
抗魔力は、魔力に対する耐性
修復力は、傷ついた耐久値の修復する力だ。
学校等で行っている一般的な魔力測定は、魔力放出量と
魔力放出量は、自然に体から放出される魔力で「把握量」と「放出圧」の積で表せる。
この放出圧は、「許容量」に比例する為「放出圧」を調べると「許容量」が分かるとうわけだ。
漏洩魔力量は、体全体から出ている「総魔力放出量」から「魔力放出量」を引いたものになる。
通常なら、この値が限りなく0になる。
完全に0にならないのは、測定誤差や環境影響によるためだ。
この測定方法は、9割の人には適している。
残り1割の人に魔力の異常があるわけだが、この事例は大きく分けて「魔力過多」と「魔力欠乏」の2種類だ。
「魔力過多」は、死亡事例の多いため注目されている。
それに、漏洩魔力量を調べれば直ぐにわかるからな。
一方「魔力欠乏」は、死亡例が少ないため注目されていない。
「魔力放出力量」と「放出圧」が少ないため、判別が難しいのだ。
だが、「魔力欠乏」の場合、「隠れ魔力過多」が混ざっていることもある。
死亡事例の殆どが、この「隠れ魔力過多」だ。
他にも、体に重大欠陥を抱えているため魔力を生命維持に使用していた事例もある。
だから、「魔力欠乏」を甘く見てはいけいのだ」
どうやら、私が思っている以上に重要な事だった。
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