第71話 年末のある日

 今日は、2学期の終業式だ。

 私は、この後28日まで訓練所で訓練の日々を過ごしてから、年末年始は自宅で過ごす事になる。

 クラスの雰囲気も冬休みだからって浮かれた雰囲気は無い。

 皆、高校受験を控えているからだ。

 特に、期末試験が悪かった者は、追加の課題が出ているため頭を抱えている。

 その中に章が居るのはいつも通りだ。

 

 一旦自宅に帰り、荷物を置いて通知表を母さんに渡す。

 先週の3者面談でも言われたけど、成績はかなり上がっている。

 だから、胸を張って渡すことが出来る。


 私服に着替え、今日の護衛の山下さんと一緒に家を出て訓練所に向かう。

 自宅に戻ってからも、基本的な生活習慣は寮に居る時と変わっていない。

 朝5時20分に起きて、シャワーを浴びた後、起きてきた母さんと一緒に朝ごはんを作って、朝ごはんを食べる。

 護衛の人が来るまで、魔力制御の訓練を行う。

 放課後、1時間ほど待機室で訓練をした後帰宅。

 風呂と夕飯(母さんの手伝いで作ったりもしてます)を済ませた後、オンラインの勉強会に参加して寝るの繰り返しで、週末は訓練所で研修と訓練を行い、夜は寮生の人に直に勉強を教わる日々だった。


 振り返ってみると、遊んでないね。

 まあ、魔力制御や能力アビリティの訓練は楽しいから良いか。


 作業服に着替えて研究所の食堂でお昼を済ませた後、第三射撃場の高エネルギー試験室に来ている。

 水嶋さんから、破壊小銃ブラスターライフル試作機の実験の協力依頼が来ているからだ。

 何でも、一般隊員用破壊小銃ブラスターライフル試作機では榴弾グレネードムが生成出来ないらしい。

 色々と試しているけど、結果が出ないそうだ。


 そこで、もう一度私からデータを取得して調査したいらしい。

 という訳で、私専用破壊小銃ブラスターライフルKU-03に計測器が多数取り付けれた試験機を使って指示された通りに、榴弾グレネードを撃っている。

 30発程撃って計測終了。


 破壊小銃ブラスターライフル開発担当の深山みやまさんの説明だと『榴弾グレネードを撃とうとすると上手く収束しないで発散する感じだ。』と、対策として私専用に作った部品の予備と差し替えたりしたり、設計、回路、材質まで見直したが、一般隊員用破壊小銃ブラスターライフル試作機では榴弾グレネードが再現出来ないとの事。

 私が、一般隊員用破壊小銃ブラスターライフル試作機で撃ってみる。

 この銃にも計測器が多数取り付けられている。

 普通に撃つ分には、問題がなかった。

 榴弾グレネードは、生成されずに出っ放しになった。


 深山さんに、一般隊員用破壊小銃ブラスターライフル試作機が壊れるかも知れないけど、試したい事があると言うと了承がでたので、実行したら不安定だけど榴弾グレネードが生成出来た。

 榴弾グレネードを撃ったら銃口が裂けた。


 深山さんを始めとして、破壊小銃ブラスターライフル開発陣は驚いていた。

 開発陣は、大急ぎでデータを確認始めた。


 深山さんにどうして撃てたのか聞かれたので、「銃身の外側にも魔力を流したら撃てた」と答えたら目を皿の様に開いて絶句して固まっている。

 周りを見ると、開発陣もこちらを見たまま固まっている。


 太和さんが手を叩いて「パン」と音を鳴らした。

 音を合図に、全員が復帰した。


 そこから追加実験が行われた。

 まず私専用破壊小銃ブラスターライフル榴弾グレネードを撃った際の銃身内外の魔力変化を測定後、一般隊員用破壊小銃ブラスターライフル試作機で強引に榴弾グレネードを撃った際の銃身の内外の魔力変化を測定した。


 この時、試作品の一般隊員用破壊小銃ブラスターライフル30丁を壊した。

 後に専用回路が開発されて一般隊員用破壊小銃ブラスターライフルでも榴弾グレネードが撃てる様になったそうです。

 ちなみに、破壊光線を放出しっぱなし現象から、ビームサーベルが出来るかもしれないと研究中らしいが、消費魔力量やビーム刃の形成が難しいらしく、開発に難航しているそうだ。


 この後は、第二体育館に移動して基礎のトレーニングと対魔格闘術を習う。

 この格闘術は、能力アビリティを使用せず対人・対魔物を無手・短剣で討伐する事を前提にしており、技能スキルを使用した殺傷能力の高いのが特徴だ。

 対魔物戦術課所属の人間は全員習う事になっているそうで、若桜さんも習得していて、師範クラスの実力者だった。

 訓練で対戦したけど、手も足も出ませんでした。

 ちなみに、研究室の面々も習得者で、最低でも週2回で、1回1時間以上の訓練が義務つけられているそうです。

 一方、地域防衛隊の方は、自衛隊格闘術を習うそうだ。

 今日の訓練は、太和さんの訓練で終了した。


 普段、私の指導してくれるのは、

 氷室さん、雛元さん、山下さんが、対魔庁で必要な一般教養や事務等

 太和さんが、体つくり、身体強化、対魔格闘術

 戸神さんが、放出系、銃火器

 霜月さんが、魔力操作、具現化系

 三上さんが、能力鑑定

 若桜さん、植松さん、望月さんが、医療関係

 を担当している。


 戸神さんが銃火器を教えてくれるのは、銃火器の扱いは霜月さんの次に上手くて、霜月さんより造詣ぞうけいに深いからだそうだ。

 とは言え、対魔物戦術課で実弾を使用する事はほぼ無いので基本的な扱い方と有効射程と範囲、オプション装備等を把握する事の方が重要らしい。

 私も拳銃とライフルの射撃訓練を受けて、毎週100発は撃っている。

 私の場合は、能力アビリティ>>>技能スキル>>>銃>>>素の攻撃力の為、個別行動の際に携行する事になりそうだが、銃を携行して活動する状況が思いつかない。


 今は、開発室に麻痺銃パラライザーガンの開発依頼が出ているらしいが難航しているそうだ。


 訓練所での私の訓練は、非常に密度と内容が濃い物になっている為、学校で1日を過ごす時間よりも長いはずなのに、半日程度の時間にしか感じれない。

 今日の訓練も終わったので、寮に戻りいつも通り過ごすのだった。











 Side:伊坂、三上

 私達は、先程終了したオンライン会議で報告された事実に頭を痛めていた。

 報告内容は、前政権が秘密裏に行っていたある計画の全容だった。

 内容が内容のため、一般公開は行わない事が決定し、データの管理と検証は思金おもいかねが行うことが決定した。


 問題は、この計画の被験者の処置についてだ。

 100%問題しか無い実験の被害者の処置に苦慮くりょしている。

 正直、生きていると言えるのか疑問符がつく状態の者もいるからだ。

 一部は、処分さぜる得ないだろうが、そちらはクーデター政府の特別機関が対応する事になった。

 そして、私達が担当する事になったのは、この計画の生き残りの被験者の一人だ。

 保護は当然として、真実を当人に伝えるかどうかでお互いに意見が割れた。

 私(伊坂)が、本人には伝えない方が良いと思うが、三上君は誠実に真実を話し理解を求める方が後々に禍根かこんを残さないと言う。

 結局、三上君の言う通り真実を話す事になった。

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