第264話 1年次夏期集中訓練 2日目(13)

 都さんが

「虚数空間ってなに?」

 と聞かれたが

「分かりません」

 と答える。


「え?わからないの?」

 と聞かれたので

「ええ、以前、説明してもらったのですが、全く理解出来ませんでした。

 実空間と空間ベクトルがズレているとか言っていたかな?」

 と、首を傾げながら答える。


「うん、それは分からないね」

 と都さんも答えた。


 そうしている内に洗濯機が止まったので、洗った衣服を持って干場に移動して干していく。

 そして水着を干すと

「それって、水着よね?」

 と都さんが、指を差しながら聞かれたので

「そうです」

 と出来るだけ素っ気なく答えると

「へぇー。大胆な水着だね」

 意外って感じで言われた。


 美智子さんは私と見比べながら

「うん。似合うけど、かなりセクシーだね」

 と言葉に含みを持った感じで言われた。


 千明さんは、ストレートに

「ブラジリアン水着を選ぶなんて大胆」

 と驚きを表し、郁代さんはニヤニヤしながら

「小さすぎない三角形の布地2つのトップと食い込みのきついボトム。

 セクシーよりエロいよね」

 と言われ、顔が赤くなるのを自覚する。


「もう、言わないでよ。

 気にしない様にしていたのに」

 と拗ねた様に言うと

「ごめんごめん。

 でもなんで、この水着を持ってきたの?」

 と郁代さんが問う。


「持ってきたのでは無く、売店で買ったのです」

 と言うと

「売店? ここの売店って、水着も売っているんだ」


「ええ、売っていますよ。

 第1プールは、福利厚生の一環で開放されていますから職員ならいつでも利用できますし、夏季限定で一般人も利用出来ます」


「そうなんだ。

 だったら、もっと別の水着を選べば良かったのに」


「売店に置いてある水着で、私が着れる水着がコレしか無かったんです。

 しかも、倉庫の奥にあった物を引っ張り出して貰ったので、選択肢もありません。

 それに訓練所の外に買いに出る程、時間も無かったので仕方なく」

 と言うと、千明さんは私を上から下まで見てから

「そうか、大人サイズはまだ大きいんだ。

 だから、全部紐で止めるサイズフリーの水着なんだ」

 と言うと、美智子さんと都さんは

「ドンマイ」

「あはは、それは仕方ないわね」

 と言うが、郁代さんは

「お店でも見つけるの難しいじゃあないかな。

 エロ可愛いから、良かったじゃん」

 と言われ、赤い顔のまま絶句するしか無かった。


 その後は、黙々と洗濯物を干した。

 洗濯物を干し終わると夜間訓練の時間だ。


 美智子さん達が、照山さんと香山さんの指導で、魔力回復向上と魔力吸収の技能スキル訓練を行っている横で、影の能力アビリティの訓練を行う。


 正直、この能力アビリティで出来る事は、影を伸ばす事と他人の影に干渉して動きを縛る事位しか出来ていない。

 拘束時間は、対象者が使用者の魔力に抵抗レジスト出来るまでだ。

 いわゆる影縛りや影縫いと言われる物の1種だ。


 希少な能力アビリティだけど、現状足止め位にか使えない。

 その為、熟練度は低めになっていた。

 なので、取り敢えず熟練度を上げつつ他にも使えないか試してみる。


 試行錯誤を繰り返すが、特に進展しないままだ。

 そうしている内に、後ろから美智子さんに

「何やっているの?」

 と声を掛けられた。


 振り向くと、美智子さん達4人と照山さんと香山さんが見ていた。

能力アビリティの訓練です」

 と答えると、郁代さんが

「何の能力アビリティ?」

 と、前のめりに聞いてきた。


「影です」

 と答えると

「かげ?」

 と美智子さんが、首を傾げながら自分の影を指差しながら返す。


「その影です」

 と答えると、郁代さんが一気に詰め寄って

「ねえ、その能力アビリティで何が出来るの?」

 と興奮気味に聞いてくる。

 その後ろでは、照山さんと香山さんが

「影の能力アビリティって知ってる?」

「いえ、知りません」

 と話している。


「今出来るのは、自分の影の形を変えて伸ばす事」

 と言って、実際に影を伸ばす。


「おお、凄い」

 と大げさに驚いている。


「後は、相手の影に干渉して動きを封じる位ですね」

 と言いながら、郁代さんの影に干渉して動きを封じる。


「え?動けない」

 と言って、必死に身体を動かそうとする。


 干渉を解除すると

「あ!動く」

 と言うと、首と腕を回している。


「ねぇ。

 影で干渉した相手に強制的に自分と同じ動作を取らせる事とか、実体化して縛ったり串刺しにする事も出来ない?」

 と聞かれたので

「無理ですね。

 さっきの様に、身体の大きな動きを封じるので手一杯です。

 しかも、1度に1体しか出来ませんし、動きを封じている最中は自分も動けません」

 と答えると

「そうか~。残念。

 動きを封じれるのだから、動作を強要出来るかと思ったんだけどな」

 と言われたが

「そこまで干渉出来る感じがしませんから、無理だと思います」

 と答えると

「そっか~。残念」

 と悔しがると、何か思いついた様だ。


「ねぇ。影に潜れる?」

 と言われた。


「え?影に潜る?」

 と聞き直すと

「そう。影から水に潜るみたいに亜空間に潜るの。

 その時の出入り口が影になるの」

 と言われた。


「影から亜空間に潜る?」

 と聞くと

「出来ないかな?」

 と返され

「どうだろう?」

 と答えつつ、能力アビリティを発動しながら自分の足元にある影から水に落ちる感じを想像すると、前触れも無く落ちた。

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