第265話 1年次夏期集中訓練 2日目(14)
短い落下感の後、特に衝撃も無く浮遊感に包まれていた。
幸い、息が出来るので慌てる必要は無い。
周囲を見渡すと、黄色みを帯びた茶色の世界だった。
琥珀色の世界から真上を見ると、薄い透明な板の天井(床)が有り、その上に郁代さん達が座り込んで天井(床)を触ったり叩いたりしている様子が見れる。
その天井には、所々に半透明の黒色の場所がある。
本当に影に潜れたのかも知れない。
取り敢えず天井(床)に向かって移動しようとしたが、手足を動かしても移動できない。
魔力を噴出させたりや風や重力の
さてどうしたものかと考える。
取り敢えずココが影の世界だとして、どうやって入ったかを思い返す。
そう、影の
そうだ、あの時は、足元が水だったらドボンと落ちるよなと思ったんだ。
なら、逆に影の
影の
取り敢えず想像が当たったので天井まで浮上したが、ココで新たな問題が出た。
天井(床)に邪魔されて戻れない。
影の
全力で殴っても
さて、困った。
周囲を見渡すと、半透明の黒い場所が近くにあった。
そこに近づき、手を触れるが硬い天井(床)のままだった。
試しに、影の
今手を引っ込めた影は、郁代さんの身体の下に出来た影なので、郁代さんの身体にふれる事なく私の身体が抜ける程大きく無い。
影から抜ける最中に影が無くなると、身体が切断されるなんて事があったら嫌なので、手を引っ込めて周りを確認する。
少し離れた場所に、十分な大きさの影があった。
あれは、ソファーの影だ。
その影に向かって、影の
琥珀色の世界は、どこを見ても同じだ。
上を見れば、皆の様子を下から見る事が出来る。
影の
ソファーの影から顔を出し
「よいしょ」
と掛け声で影から抜け出す。
自分の体を確認する。
取り敢えず問題は無さそうだ。
「えー!なんでそこから出てくるの?」
千明さんの絶叫が聞こえた。
そちらを振り向くと、千明さんが床に膝を着き私を指差している。
美智子さん、都さん、郁代さんは、床に両手両膝を着いた状態で、顔だけを私の方に向けている。
照山さんと香山さんは、千明さんと都さんの後ろから中腰の姿勢で顔だけ私の方を向けている。
「何でって言われても、出れる大きさの影がココに有ったからです」
と言うと、6人共間抜けな顔になった。
「一体、何処に居たんだ?」
香山さんが、声を震わせながら言う。
「うーん。たぶんですけど、影の世界?」
と言うと
『影の世界?』
と皆の声が重なって返ってきた。
「郁代さんに言われた事を試したら、水に落ちるみたいにドポンと落ちたんです。
気がついたら、周りが琥珀色の空間に浮かんで居ました。
上を見ると、たぶん私が落ちた所に皆が集まっているのが見えたので、影の世界から見上げていたと思います。
影の世界では、影の
と言うと、照山さんが
「下から見上げていたのか?
周りには何があった?」
と聞かれたので
「周囲は琥珀色の為、遠くまでは見通せませんでしたが、天井(床)以外の見える範囲には何も有りませんでした。
その天井を全力で殴っても、ただただ硬い壁を叩いただけでした。
影を下から見ると、半透明の黒色の場所になっており、その影からは影の
なので、ソファーの影から抜け出ました」
と答えると
「じゃあ、影の世界で他の
と聞かれた。
「ええ、使いました」
答えると、真剣に
「使ったらどうだった?」
と聞かれた。
「
と答える。
すると照山さんは
「影の世界でも発動したのに影響を及ぼさなかった?
それは何故だ?
状況的に影の世界は異世界か?
いや、この世界に接していたから、亜空間もしくは異空間だと仮定すると、その空間は物理法則が異なるのかも知れない。
これは興味深い。
ひょっとしたら、他の
これは調査を行う必要があるぞ」
考え込みながらブツブツと言っている。
手を叩き「パン」と音を出す。
全員の視線が集中する。
「はい、考察はここまでです。
今は訓練時間です。
訓練に戻りますよ」
と言うと、照山さんは
「そうだな。
考察は一旦終了だ。
訓練に戻るよ」
と号令を掛ける。
美智子さん達が訓練に戻ったのを確認後、談話室を抜け出して自分の部屋に戻る。
筆記用具とメモ用紙とスマホを持って談話室に戻る。
影の
机の横の床に座り、影の
普通に入った。
では、スマホを持って手を突っ込もうとすると弾かれた。
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