第168話 戦術課 一般隊員との模擬戦(6)

 一方、今までのランクアップは、どの様なものであったかと言うと、魔力量なら最大魔力量を維持する訓練を積むと、ある一定の所でそれ以上上がらなくなる。

 その状態で更に訓練を積むと、ある時限界を超えて一段上の魔力量になるそうだ。

 この時の増え幅には、個人差が大きいらしい。


 なので、個人差はあれど、基本的に緩やかな階段状の成長をする。


 一方、能力アビリティは、使い続けていると上がるものという認識だ。


 そのため、ゲームの様に経験値を貯め、一定値を超えるとレベルアップすると考えられていた。


 では、「経験値とはなんなのか?」という命題が付き纏っていた。

 熟練度?

 戦闘経験?

 魔力・能力アビリティ技能スキルとの親和度?

 等々、多くの研究者が提唱してきたが、仮説の域を出る事が出来なかった。


 当然、その中には、魔力量と魔力制御力の関係を提唱したものもあったが、これまでは実証出来ていなかった。


 そう、これまで実証出来なかったのは、魔力制御力を増やしても推奨レベルまで到達していなかったからだ。


 今、推定だが推奨魔力制御力値が判明した事から、全国の隊員のデータから魔力制御力を数値化して比較した結果、推奨魔力制御力値の25~30%が大半である事が判明した。


 この事から、思金おもいかねの研究者は

「戦闘隊員の魔力制御力が最低限しかない」

 と言う仮説を証明した。


 ならば

「戦闘隊員の魔力制御力を鍛えた結果、どの様に変化するのか?」

「未訓練の能力者が、魔力制御力を優先して訓練を行った場合、どの様な成長をするのか?」

 と言う課題が生まれた。


 前者は、私が隊員組や中部駐屯所で行っている訓練で、これは当初予定していなかった事だが、状況とデータは逐次報告を上げている。

 本来は、東海支局教導隊と思金おもいかねが、今回の実験に適切な部隊に招集を掛け、東海支局教導隊主導で訓練を行うはずだったんだけどな。


 後者は、田中さん達4人の訓練だ。

 こちらは、訓練校に協力依頼を容易に出せないため、私の秘匿任務になったのだ。


 後者は予定通りなのだが前者が増えた分、私自身の訓練時間が大幅に減った。

 これ以上の時間の捻出が厳しい為、より効率的に訓練を行う方法を考えないといけない。


 霜月さんと三上さんに相談しようかな。

 魔力調律状態を維持しながらそんな事を考えつつ、隊員組の訓練を続けた。


 2回目の訓練が終わった時点で、今日の訓練を終わりにした。

 時間的にはもう1回位出来る時間があるので、もう1回やりたいと言う要望もあったのだが、宿直室の改装を行う事を忘れている様で、その事を告げると大人しく終了する事となった。


 宿直室の改装は、元々置いていたベットを1階の空き部屋に移動し、新たに2段ベットを2台設置する。

 しかし、2段ベットの図面を読み違えて方向や部品を間違えて着けたりして結構ドタバタになったが、訓練生組の高圧縮学習が終わるまでになんとかなった。


 この図面と部品で、どこをどの様にしたら間違えるかと疑問に思ったが、敢えて何も言わなかった。


 全員で食堂に行き夕食を取ったが、私達5人と平田さん、南雲さんに宿直組4人+今日戻る2人の合計13人と大所帯になったので、いつも以上に注目を浴びた。


 実際、食堂の一角に陣取っているが、他の訓練生は近づく事もしない。

 遠巻きに見ながら、仲間内でひそひそ話をしているだけだ。


 こちらのテーブルは平常運転だ。

 多種多様な話題が飛び交うが、私、平田さん、南雲さんの3人だけが、言葉数少なく食事を行っている。


 南雲さんは、普段なら雑談に混ざっているが、今日は反応が薄い。

 話しを振られると、それ相応に応じているが上の空だ。

 高圧縮学習のデータの事で頭が一杯になっているようだ。


 私と平田さんは、単に話についていけないだけだ。


 食後、私と田中さん達は寮に戻る。

 私はそのまま部屋に戻るが、田中さん達は入浴するための着替えを取りに戻るだけだ。


 隊員組は着替えも持ってきているので、食後そのまま浴場に向かった。


 部屋に戻り、入浴した後に霜月さんと三上さんに、効率的な訓練方法を教えて貰うためのメールを送り、就寝時間まで室内で出来る能力アビリティの訓練に費やした。


 翌朝、メールを確認すると三上さんから、幾つかの訓練方法が記されたファイルが添付されたメールが返ってきていた。

 今朝の自主訓練の内容を三上さんから教えてもらった方法に変え行い、田中さん達と隊員組の訓練をいつも通りに行うのだった。

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