第17話 検査 Side:太和 勲(2)
Side:太和 勲
午後、被験者が魔力測定と能力鑑定を行っている間に測定準備を行う。
同僚の応援を貰い衝撃吸収マット壁等の安全装置の準備を進める傍ら、研究課の連中が測定機器を大量に設置していた。
もう少しで準備が終わるという処で被験者がやって来た。
準備が終わるまでの間に、念入りな準備運動をさせた。
準備運動後、ちょっと冗談的な雑談はしたがな。
能力の発動訓練に移る。
第1段階は、自身の魔力塊の感知だ。
これが出来ないと能力の発動は出来ない。
この部分で多くの子供が躓く。
なにせ、今まで感じたことのないものを感知しなければならないからだ。
それに、発露したてでは魔力塊もパチンコ玉サイズなので余計に感知しにくい。
その場合の処置は、外部から魔力塊に干渉する事で感知させる。
第2段階は、魔力塊の回転方向の感知だ。
魔力塊の回転方向は、大抵体の重心線に対して時計方向に回っている。
極一部の人間は、反時計方向回転だったり、重心線と回転軸がズレていることがある。
こういう人間の魔力は、一般的な時計方向回転の人間に比べて重い傾向がある。
同量の魔力を正面からぶつけ合った場合、必ず極一部側が勝つのだ。
何故この様な差が生まれるのかは不明だが、そういう事実があるのだから仕方ない。
この回転方向を知ることは、魔力運用について重要で、回転を速める事で魔力を強め、逆に回転を遅くすることで魔力を弱める事が出来る。
魔力のアクセルスロットの役目を果たしているのだ。
第三段階は、魔力を必要な部位に必要な量集めることだ。
全身の血流に魔力を載せて集める。
この運用が能力の質を決めると言っていい。
後は、必要な能力に見合ったイメージで能力を発動すれば良いだけだ。
で、この被験者は、発動方法を指示しただけで発動してみせた。
しかも身体強化の基礎、
そして、気付いてしまった。
このまま動かれたら、ここの設備は崩壊するどころか周辺を巻込んだ大惨事が発生する。
だから、まずは出力を半分にさせてみた。
それでも、ランクA上位陣に迫る量だ。
さらに半分、全体の1/4にしてランクA下位相当になった。
取り敢えず、この量ならなんとかなるか。
この状態で安定させるように指示を出すが、上手く安定できないようだ。
ちょっとしたアドバイスを与えると安定し始めたので、出力安定訓練を軽く行って本来の検査を行う。
ただ、出力を1/4に押さえているから参考データにしかならないのが残念だな。
全力で測定するとなると、離島にある専用設備でないと測定不可能だから仕方ない。
訓練校に入れば年1回は専用設備での能力値検査を受けるのだから問題ない。
魔力を制限させた状態での能力検査(身体能力)を開始した。
◯100m走。ランクA相当なら3秒は切ると思う。
走る前に走り方の注意点を教えた。
あの力で明後日の方向に飛んでいかれたらたまったもんではないから。
1本目、3.42秒 なかなのタイムだ。
ただ、ゴール直後、ゴール20m先に設置した衝撃吸収マット壁に盛大に突っ込んでいた。
あのマット、わずか10cmで三階から飛び降りた人間の衝撃を完全に吸収出来る程の優れもの、しかも壁として設置してあるのは3mも厚さがある代物だ。
それを、1m以上めり込むとか、どういう威力だ。
俺が全力で試しても30cmもめり込めないというのに。
しかも、マットから出てきたも
2本目、3.09秒 もう少しで3秒を切りそうだ。
今度も全身がめり込んでいるが、1本目より浅そうだ。
3本目、2.88秒 3秒きったか。
今度は、止まりきれず頭からダイブしたな。
上半身だけ呑み込まれている。
普通、こういう光景ありえないからな。
研究者連中もうちの連中も言葉無くして見てやがる。
◯垂直飛び 15m位は飛べるはず。
3本飛んで、18.1m、16.4m、19.0m
まあ、想定範囲内だ。
◯握力・腕力・脚力・背筋力 体格と能力比だからどうなるか?
握力:220kg
腕力:380kg
脚力:1201kg
背筋力:834kg
被験者の表情が死んできているな。
まあ、気持ちはわかる。人間辞めてる値だからな。
取り敢えず、身体強化の試験は終了だ。
射出系の試験の為、第一屋内射撃訓練場に移動することを告げ移動を開始しようとして気づいた。
被験者がまだ
普通、気を抜けば自然と解除されるはず、こいつも身体強化の試験終了を告げた瞬間気を抜いていた。
なのに
ベテランでも相当難しい事を無意識レベルで実行している。
こういうのを天才と言うんだろうな。
当然、解除するように忠告はした。
射撃場に着いて、放出系能力の発動方法を説明した。
普段なら、この後発動方法の手本を見せて各工程ずつ確認しながら行うのだが、この天才がどう反応するのか見てみたくて自由にやらせてみることにした。
掌までは順調に魔力を集めることが出来ている。
この後、イメージを魔力を用いて大気に干渉して実体化させる必要があるのだが、その工程が上手くいかず苦戦しているようだ。
よく観察すると、漏れた魔力が風に変換され動いているのが見て取れるが本人は気づいていない。
しばらく悪戦苦闘していたので、見本を見せることにした。
おそらく、一度見せれば直ぐに使えるようになるだろう。
見本を見せた後、予想通り空気弾を撃てた。
ただ威力が、ランクE上位かギリギリランクDに入るかなという威力だ。
しかもこれが、最大魔力の1/4程度で実行できてる事自体がすごい。
全力なら、最低Cランクだな。ひょっとしたら、ランクBに届くかもしれない。
空気弾が撃てたことで喜んでいる姿を見ていると、外見年齢相当にしか見えない。
色々と試してみろと言ったら、嬉々として何発もの空気弾や真空刃を撃ち始めた。
しかも、全て的に当てている。
やはりこの被験者は、天才だ。
なんとなく微笑ましく見ていると、いきなり風を纏い始めた。
その後、10cm程度とはいえ宙に浮いてみせた。
飛翔系の技は、既に使っている者も居るが軒並みランクC以上だ。
現状の被験者の出力では到底不可能のハズなんだが。
多くの飛翔系の技が、ロケットのようにエネルギーの噴射の反動で飛んでいる。
重力系は、原理不明の反重力で浮いてる。
風を纏って浮くなんて前代未聞だ。
全くもって、天才と言う奴は意味不明な事をやってくれる。
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