第270話 1年次夏期集中訓練 3日目(4)

「なんで、エロい格好になっているの?」

 とちょっと顔を赤らめた千明さんが尋ねる。


 私が答えるより先に梅原さんが

「それは水着が脱げない様によ」

 と答えるが、美智子さん達は理解出来なかった様で首をひねっている。


「水中戦闘訓練は、ウェットスーツを着て行うものなんだけど、神城さんのサイズの物は置いて無くてね。

 水着のまま訓練に参加して貰っているのよ。

 水中戦闘訓練では、結構激しく動き回るから水着が脱げない様にキツく身に着けてもらっているのよ」

 と説明すると郁代さんが腕を組んで

「だからエロい格好になっていたんだ」

 と言って、ウンウンと頷いていた。


「エロいって連呼しないでよ。

 意識しない様にしていたのに。

 それと、ジロジロ見ないで」

 と文句を言うと、郁代さんは

「だって、エロいんだもん。

 それに、こんなにエロ可愛い格好しているんだから見ないと損でしょう」

 と返された。


 私が口を開きかけた時に両肩に手を置かれた。

 思わず振り返ると、照山さんが

「だったら、さっさと更衣室に向かいましょう」

 と言って、肩を掴んで押される。


「え!。ちょっと」

 と声を漏らすと

「待たないわよ。それ」

 と言って、勢い良く押されて更衣室横のシャワー室に直行する。

 シャワーで頭を冷やしてから着替えた。

 照山さん達と一緒に美智子さん達と合流して食堂に行く。


 食堂で、ちょっとムスッとしながらご飯を食べている。


「そろそろ機嫌を直してよ」

 と郁代さんが言うので

「何のことでしょう」

 と淡々と答える。


「うう、まだ怒ってるよ」

 と嘘泣きをしながら、美智子さんに寄り掛かる。


 千明さんが

あんた郁代がからかい過ぎたからでしょ。

 自業自得」

 と突っ込むと

「だって、あんなにエロ可愛い姿見せられたら、弄りたくなるのは当然でしょ。

 そう言う千明はどう思ったのよ」

 と返すと

「そりゃあ、確かにエロかったし、仕草は可愛かったわよ。

 って、何を言わせてるのよ」

 と頬を染めながら答えた。


 郁代さんは、ニヤリと笑い

「美智子と都はどうだったのよ」

 と声を掛ける。


 美智子さんが頬を染めながら

「ノーコメント」

 と返すと都さんは明後日の方向を向いて

「私もノーコメントで」

 と返す。


「えー、なんで、二人共逃げるのよ。

 ずるい」

 と千明さんが美智子さんと都さんに突っかかると、都さんが

「あの水着姿は、見ていても恥ずかしかったし、もし自分であの水着着ていたと考えると」

 と言って顔を真赤にして俯いてしまった。


「あの水着は、ちょっと無理」

 と美智子さんも顔を赤くして言う。


「むー。折角の優ちゃんの水着姿なのに」

 と郁代さんが言うので

「そんなに言うなら、郁代さんと千明さんも着てみますか?」

 と言うと、千明さんは

「へ?それは、ムリムリ」

 と拒絶され、郁代さんは

「私が着てもただエロくなるだけだよ。

 昔から散々男共が陰口叩いていたし」

 と返ってきた。


「え!」

 と思わず声を漏らすと

「私は、小学校の頃から発育が良かったから、同級生からはからかわれるし、変な大人からはジロジロ見られて辛かった。

 中学に入ってからは、同級生にも露骨に人の胸ばかり見つめる気持ち悪い男が増えたし、影で色々とエロい事言っていたのも知っていたわ。

 その中には、優ちゃんが着た水着みたいに布面積が少ない水着を着たら、エロくて抜けるとか言っている連中も居たわよ。


 だから、私が着たらエロくなるだけと言っただけよ。

 でも優ちゃんは、女の私が見てもエロくて可愛くてきれいだった。

 私だとそうはならないわね」

 と返ってきた。


 私が返答に困っていると、後ろから

「ずいぶんと騒がしいな」

 と笑い声が聞こえた。


 振り返ると、三上さんがお昼ご飯を載せたお盆を持って立っていた。


「うるさくして、申し訳有りません」

 と謝ると

「いや、気にしていない」

 と言うと、微笑み。


「むしろ年相応の反応で良い。

 お前は真面目で大人の対応を過ぎる。


 うち思金の連中よりよっぽど大人だ。

 だが、もっと年相応の事をした方が良い。


 君達も存分に神城を振り回すといい」

 と言うと、近くに座った。


 三上さんは、食事を食べながらふと思い出した様に私を見た後

「神城も大分ふっくらとしてきたな」

 と言われ、思わず

「太った?」

 と声を漏らすと

「太ってはないな。

 肉付きが良くはなったがまだ細い。

 だから、ダイエットなどは考えなくて大丈夫だぞ」

 と返された。


 すると、千明さんが

「以前はもっと痩せていたんですか?」

 と質問する。


 三上さんは

「ここに来た頃は、酷く痩せこけていてな。

 腕なんかも簡単に折れそうな位細かったよ。

 食も極端に細くて、いつ倒れるか心配したものだ」

 としみじみと言った。


 美智子さんが

「ど、どうして、その様な状態に?

 もしや虐待?」

 と、驚きながら言うと三上さんは

「いや違うぞ。

 虐待ではない。


 ただ能力アビリティが発露して、身体に影響がでてしまっただけだ」

 と返答した。


「どういう事ですか?」

 と美智子さんが問うと三上さんは

能力アビリティの発露時に心身に影響があるのは知っているか?」

 と逆に質問する。


 都さんは

能力アビリティの発露時に、暴走したり、昏睡状態になったりする現象ですよね」

 と答えると

「その通りだ。

 そして、少数だが身体に直接影響が出る場合もある。

 神城もその症例で、今の姿になった」

 と言った。

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