第53話 訓練所女子寮(3)

 寮の前で、霜月さんと分かれて部屋に戻る。

 時刻は、17時を少し過ぎている。

 研修は、17時に終わると言っていたから、後15分もすれば皆帰ってくるだろう。だから、食後直ぐにお風呂に入れる様にお風呂道具と着替えを出し、洗い物のカゴと洗濯用具を一緒にしてから食堂に向かう。


 丁度食堂の前で、皆が帰ってきた。

「おかえりなさい」って言ったら、「ただいま」って返してくれた。

 そして、一緒に夕食を食べようと言うお誘いが多かったせいで、早いもの勝ちと言う事になり、全員部屋に走っていった。

 私は、先に夕食を貰い席に着くと、次々にやって来て直ぐに席が埋まった。


 一緒のテーブルに座れなかった人は、近くのテーブルの席に座っている。

 お互いに今日有った事を話しながら、夕食をいただきました。

 岩倉長官の件と能力の確認内容は、極秘扱いなので喋らない様に言われているので話していない。

 ちなみに、今日の夕飯はチキンステーキでした。


 食後に入ったお風呂では、湯船に浸かると人形の様に抱っこされ、一緒に入った人達にリレーされてました。


 お風呂の後は、洗濯機を回して、先日干した洗濯物の取込みを行い。

 左海さんの指導で、ダメ出し貰いながら洗濯物を畳んでいました。


 19時を少し回って、自主学習の時間になりました。

 会場は、昨日歓迎会が行われた談話室です。

 此処には、TVもホワイトボートも置いてあるから都合が良いそうです。

 本日のカリキュラムは、能力アビリティの講習が1時間、数学・英語が30分ずつの計2時間です。


 最初の授業は、勉強に役立つ能力アビリティです。

 講師は、水谷みずたに 陽葵ひなたさんと増井ますい 七海ななみさんです。

 水谷さんが戦場治療師を、増井さんが戦術指揮官を目指している。

 よく分からないけど、機動戦略隊にそういう役職があるのではなく、戦闘スタイルの分類としてそういうのがあるらしい。


 水谷「さて、講義を始める前に、優ちゃんも私達を名前呼びしましょう。」


「え!、でも、皆さんの方が年上だし、私は教わる立ち場だし・・・」


 水谷「ダメよ。」

 笑顔で圧力を掛けてくる。


「でも・・・」


 水谷「

 助けを求めて、周りを見ると、笑顔の圧力が周囲から降り注ぐ。


「!」


 水谷「分かりましたか?」


「わかりました。」

 うだなれて、答えた。


 水谷「はい、言質取りました。皆もいいわよね?」


 その言葉に私以外が頷いている。

 今日が初回と言う事で、全員集まっている。


 七海「時間も無いから、先に進むよ。

 さて、勉強に役立つ能力アビリティという事で、学問に絞って解説していくよ。

 では、ずばり、勉強に必要な能力ってなんでしょう?」

 そう言うと私を指さした。


「えーと、記憶力と考える力とかですか?」


 七海「その通りだよ。

 私が知っている限り、学問に役立つ能力アビリティは次の物がある。」

 そう言うと、ホワイトボードに次々と能力アビリティ名を書き出す。


 記憶力

 記憶

 完全記憶


 高速思考

 分割思考

 並列思考


 演算

 高速演算


 分析

 解析

 分析解析


 七海「これ以外にも在ると思うけど、私が知っている物はこれだけね。

 基本的に、下に在る物の方が上位よ。

 それじゃ、各項目を説明するわよ。


 ・記憶力は、使用者の記憶力を高めるだけで、ちょっと物覚えが良くなるだけ。

 ・記憶は、事象を体系化して記憶する事が出来る、覚えたいものだけを記憶する事が出来る。

 ・完全記憶は、全ての行動、感覚、事象を全て憶えるらしい。

 習得者が極端に少ないから、資料も少なくてあまりよく分かっていない。


 ・高速思考は、文字通り頭の回転が早くなる。

 ・分割思考は、一つの思考を分割して行う事が出来るけど、あくまで同じ思考を複数に分けるだけだから、分けた元と先では同じ事しか出来ないの。

 だから、同じ思考から分岐で分かれて行ってもある程度思考が剥離はくりすると強制的に解除されてしまうわ。

 ・並列思考は、思考そのものが並列で動くから、分割元と先で違う事が出来る。

 だから、片方の思考で数学の問題を解きながら、もう片方の思考で英語の問題を解くことも可能よ。


 ・演算は、数値計算が早くなるわよ。

 ・高速演算は、演算の数倍の速さで計算出来るようになる。

 数学や物理学では、圧倒的に有利になる能力アビリティよ。


 ・分析は、現状の状態を細かく要素ごとに知る事が出来る能力アビリティよ。

 ・解析は、分析結果の各要素に対して、原因を探る事が出来る能力アビリティよ。

 ・分析解析は、文字通り、分析と解析を併せた能力アビリティよ。」


 陽葵「これから習得を目指すのは、記憶力、高速思考、演算の3つね。

 この3つの能力アビリティは、魔力の働きかける場所が違うだけだから習得出来る人が多いの。

 習得出来なくても、十分な恩恵を受ける事が出来るから安心してね。」


 陽葵さんは、かばんから脳の模型を取り出した。

 陽葵「模型を見ながら説明するよ。

 ます、記憶から始めようか。

 記憶で強化が必要な部位は、大脳皮質と海馬です。

 大脳皮質は、脳の表層にある灰白質部分です。

 海馬は、脳の内側、模型を分解してっと、この大脳辺縁系にくっ付いているタツノオトシゴちゃんが、海馬です。

 模型を優ちゃんの頭の位置に合わせると、この辺の内側に海馬があるので実際に魔力で強化してみましょう。

 あ、最初に海馬だけでお願いね。

 大脳皮質を強化されると、海馬が強化されたどうか判定出来ないから。」


 魔力で強化、判定、位置を修正を何回も繰り返す。

 20分位は、これを繰り返していた。

 その御蔭で、海馬の強化を出来るようになった。

 大脳皮質は、表層なので10分位で出来るようになったけど、両方を同時にというのが結構難しくて、時間内に成功しませんでした。


 続きは、明日に持ち越しになりました。

 休憩の内に、トイレと洗濯物を干しに行ってから、数学の講習になりました。


 数学の講師は、土方ひじかた みやこさんです。

 芽依「優ちゃん、意外って顔してるっすよ。

 都って、背も高く、筋肉質で、男口調で、口より先に手が出るから脳筋と思われても仕方ないっす。」


 芽依さんがニシシと笑いながら一気に言い切った直後に、拳骨が頭に落ちた。

 今は、頭を押さえてうずくまっている。


 葵「まあ、たしかに意外よね。近接戦闘系って脳筋の人が多いからね。」


 七海「それに、感覚派が多くて困る。

 擬音を多用して説明されてもよく分からん。」


 都「お前らな、それを霜月教導官相手に言えるかのか?」


 七海「霜月教導官は別。

 近接戦闘系の中でも、理論や技術を大切にしているし、直感的に感じたことも出来るだけ分かりやすく伝えようとしている。


 典型的な脳筋は、太和教導官の方。

 超感覚派なのに、教える事が正確なのが不思議でたまらない。」


 都「・・・・」


「ひじ・・・都さんは、どうして数学や物理が得意なんですか?」


 都「ん、私が得意になった理由か?

 そんなの強くなるためだよ。

 どんなに頑張っても、女である以上、純粋な筋力では男に勝てないからな。

 かと言って、ボディービルダーの様な筋肉にしてしまうと、まともに戦えなくなるから柔軟かつ強靭な筋肉を作り、身体強化の能力アビリティを上乗せして最適な攻撃を行うことで男共を圧倒する事を目標にしている。


 そのために、常に最適な動きを行うには、敵味方の情報を素早く把握して、最適解を出さなければならない。

 感覚的な先読みと数学的な予想を合わせて最適解を出せるように訓練していたら、得意になってしまっただけだ。」


 芽依「要は、どう動くのが最適なのかシミュレーションをするために数学を覚えて、どうやったら効率的に破壊できるか、突き詰めていったら物理が得意になったことっすか?」


 都「まあ、その通りだ。」


 やや、ため息交じりに

 七海「発想が、突拍子もないな。

 運動科学を学ぶのなら分かるんだが、数学と物理に考えが行くとは。」


 そっぽを向き、少し恥ずかしそうに

 都「まあ、途中で違っている事に気づいたが、その時には数学と物理が面白くてどっぷりとはまっていただけだ。

 それでも、今役に立つんだから良いじゃないか。」


 中学1年生の数学から復習をしながら、つまずきやすい所を教えてもらいました。

 意外な程、丁寧かつ分かりやすい説明で、七海さん達を唸らせてました。

 初日なので余り進まず終了。


 英語の講師は、河合かわい さくらさんです。

 英語以外にもスペイン語も話せるそうです。


 さくら「次は、私が英語を教えるね。

 まずは、質問。

 海外では、英文の読み書きが出来ないのに喋れるの人が多いのは何故でしょう?」


 そう言われれば、どうしてだろう?

「わかりません。」


 さくら「それは、決まった英短文の組み合わせしか使っていないからです。

 なので私の講座では、英文法はやりません。

 英短文の発声と聴き取りを行います。」


 時間一杯まで、英短文の使い方と発声、聴き取りの練習を繰り返しました。


 時刻は21時20分、今日の自主学習が終了した所で神谷かみたに うたさんから質問が来た。


 詩「自主学習は、どうだった。」


「面白かったです。」


 詩「そう?

 貴方位の年頃なら、TVとかYouTube等を見たり、SNSに嵌ったりするもんだと思っていたから、どうなのかなって。」


「うーん、以前の私男の頃ならそうだったんですけど、今の私女性化してからはそういうのに興味が無くなってしまって、好きだったお笑い芸人のネタとかも今だと全く面白く感じなくなって、見なくなりました。

 SNSも興味が無くなったので見てないです。

 だから、以前からの友人からも返事がないとか怒られたりしましたね。」


 詩「そうなんだ。でも、友達は大切にした方が良いよ。

 無理のない範囲で付き合ってあげようよ。」


「はい、そうします。」


 部屋に戻り、放置していたスマホを見るとメッセージが入っていた。

 どうやら私が保護施設に居る事を知らないで、家に遊びに来たらしい。

 そこで初めて保護施設に居る事を知って心配してメッセージを寄越していたらしいが、私がスマホを放置していたから荒れているな。


 取り敢えず、簡単に何も問題が無い事と検査等があるとスマホを放置しているから夜寝る前に少し返答が出来る位だから、気にしないでと返した。


 すると、直ぐに返信が来て、あーだこーだ言っている横で、適当に返信しながらストレッチを行い、ストレッチが終わったら、もう寝るからと言って話を切上げた。

 22時前だから早いとか騒いで居たけど、消灯が22時だからと言って切った。

 多分その後も色々言い合っているだろう、メッセージの着信音がするから。

 寝る準備を終わらせてから、メッセージの着信音の設定を消音ミュートにしてから寝ました。

 私が守護者になった事で、戦争が回避出来たら良いな。

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