第252話 1年次夏期集中訓練 2日目(1)

 洗面室に行くと、美智子さんと都さんが歯を磨いている。

 横に並んで歯を磨く。

 郁代さんと千明さんもやって来た。

 郁代さんの顔は少し赤い。


 郁代さんと千明さんも並んで歯を磨く。

 この洗面室は、10人が並んでも余裕がある程広いので、5人並んでも問題がない。


 最後に顔を洗ってから、部屋に戻り訓練着に着替える。

 寮の食堂に行き、朝食を貰い席に着く。

 私より先に来ていた美智子さんと都さんは、もう食べ始めている。

 私も食べ始めると、郁代さんと千明さんもやって来て、朝食を貰って席に着き、食べ始めた。


 食べている最中に、郁代さんが

「もっと、普通に起こしてくれても」

 と文句を言った。


「起こしましたよ。

 声を掛けて身体を揺すりましたが、全然起きないので強硬手段を取ったまでです」

 と答えると

「うっ」

 と言葉を詰まらせた後

「でも、氷を背中に入れるのはどうかと思う。

 あれは、酷いと思う」

 と言うので

「では次は、胸元にしますか?

 それとも、パンツの中に入れますか?」

 と答えると、郁代さんは顔を真赤にて首を左右に振った。


「普通に起こされた時に、目を覚ませば良いのです。

 それが嫌なら、自分で起きれば良いのです」

 と言うと、郁代さんは

「むむむむ…」

 と唸った。


 美智子さん達は

「優ちゃんって、訓練に対しては正論で叩くよね」

「そうだね」

「しかも、ちょっと意地悪だし」

「同意」

 と小声で話している。


「これからは、自分で起きれない罰として氷を使って起こしますか」

 と言うと

『それだけは、ご勘弁を』

 と声を揃えて言った。

 お互いに顔を見合わせた後、誰と無く吹き出して笑い出した。


 早朝の訓練時間は、山奈さんが担当だ。

 山奈さんの指導の元、準備運動を行い、ランニングを行う。

 その後、体幹や筋力を着ける訓練が行われた。

 私も美智子さん達と一緒に参加する。


 1時間程で早朝の訓練を終了した。

 戸神さんに引率されて、美智子さん達は第二射撃場に移動した。

 第二射撃場で、戸神さん達から属性習得訓練を受ける。


 私は照山さんと一緒に高エネルギー射撃室に向かう。

 高エネルギー射撃室で、普段使わない能力アビリティを主体に撃ちまくる。

 昨日は、丁寧に復習しながら撃っていたので1時間も時間を掛けた。

 今日は、昨日よりも強度を強く、そして素早く連射を行う。

 ただし、余波エネルギーを拡散・吸収する装置がオーバーヒートしない様に調整しながら撃った結果、昨日よりも大幅に強化された魔力貯蔵庫を30分で満タンにした。


 その後、伊坂さんの元に行き

「伊坂さん。

 済みませんが、今日と明日の剣術訓練を中止したいのですが良いでしょうか?」

 と聞くと

「どうしてかな?」

 と問うので

「照山さんから、水中戦に必要な技能スキルを学ぶ為です」

 と答える。

 昨日の夜の技能スキルの終了後に照山さんから提案されたからだ。


 伊坂さんから

「水中戦?」

 と返ってきた。


 照山さんが

「私は、九州支局思金おもいかねに移動する前は、瀬戸内海海戦部隊に所属していたので色々教えられると思います」

 と答えると、伊坂さんは

「分かった。そういう理由なら仕方ない。

 実働経験があり、思金おもいかねに移籍出来る程優秀な人から学ぶ機会は貴重だかね。

 俺は、海戦が苦手だから、しっかり学んでくると良いよ」

 と言って、快く承諾してくれた。


 ちなみに、山本さんは一緒に居なかった。

 その事を聞くと、例の研究者達と武器の改良を行っているそうだ。

 それを聞いて乾いた笑いしか出てこなかった。


 購買に移動する。

 水中戦での技能スキルの訓練を行う以上、当然、水に入る必要がある。

 しかし私と照山さんは、水着を持っていないので買いに来たのだ。


 訓練所にあるウェットスーツは、私には大きすぎるので着れない。

 基礎の訓練なら水着でも十分という事で、私は水着で訓練に参加する事になった。

 流石に基地外に買いに行く余裕は無い。

 照山さんは、ウェットスーツの下に着るためだ。


 購買で水着を販売しているのは、訓練所内にある第1プールが福利厚生の一貫として、訓練所・研究所・病院の職員に無償開放されているためだ。

 第1プールは屋内プールなので年中使用可能だが、夏季限定で一般開放も行っている。

 その為、この時期は非常に賑わっている。


 同じ様に福利厚生の一環で、第一体育館も開放されている。

 こちらは、訓練等の予約が入っていなければ一般の人も使える様になっている。

 そして、トレーニングマシンも設置されているから、ジム代わりに利用する人もそれなりに居るそうだ。


 照山さんは、紺色のワンピース水着を購入した。

 私は、黒色のビキニを購入した。


 本当は、ワンピース水着かタンクトップ水着を選びたかったのだが、私の着れるサイズを置いてなかった。

 セパレート水着も置いてあったが、トップは問題ないのだが、ボトムがゆるいので訓練中に脱げる可能性が高いと言う事で却下。


 そんな中、購買の店員が持ってきたのが黒のビキニだった。

 上下ともに紐で止めるタイプの為、私の身体に調整可能だった。


 倉庫の奥で眠っていた物で、古い物だった。

 しかし、生地もしっかりとしていて水着としての問題は無かった。

 他の色は存在しなかったのと古いと言う事で、かなり安くして貰った。


 予備のタオルを2枚買い、第二プールに向かう。

 第二プールは、水中戦の訓練や水中装備のテストに使われる物だ。

 縦横30mの正方形のプールだが、水深は30mと深い。

 4面に壁面の内の1面に観察用の窓がある。

 この窓は、底から10mの程の高さまでアクリル板の壁になっている。

 アクリル板越しに、プール内を観察出来る仕様だ。

 水中マイクとスピーカーも設置されているそうだ。

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