第154話 中部駐屯地 週末訓練(1)
私も重量装備を返却してグラウンドに行くと、300名位の隊員達が整列して待機していた。
この駐屯地所属隊員で今日来れる隊員(休暇中の隊員も含む)の殆どが集まっている様だ。
戦闘職だけでなく、衛生部隊や支援部隊の人達も並んでいる。
ここまで大勢が来るとは思ってもいなかった。
彼らに前に立つと
『よろしくお願いいたします』
と揃えた声が返ってきた。
「これより教導を始めます。
全体、両手間隔に広がれ」
私の号令で一斉に移動する。
私は声を張り上げ
「最大出力で
始め」
隊員達に動揺が走るが、なんとか実行しようと四苦八苦し始める。
戦略機動隊の隊員は、短時間ながらも魔力調律状態を作り出せているが、一般隊員は
普段彼らが訓練で行っているのは、安静状態で魔力調律状態を行う訓練だけだ。
精神と魔力を落ち着かせ、体を巡る魔力を調律する事で魔力感知領域の増大や魔力の体への浸透率を上げる為に行っている。
それでも一般隊員なら10分、機動戦略隊なら30分が平均維持時間だ。
私の指示は真逆。
魔力の最大出力を行いながらの
これは、全力疾走しろと言っているのと同じ。
一般隊員なら30分、機動戦略隊なら60分が平均維持時間だ。
しかもその状態で瞑想をやれと言っているのに等しいと感じているだろう。
実際は違う。
最大出力の
言葉で説明しても彼らには理解出来ない。
何故なら、彼らは既に出来ているつもりなっているからだ。
全身の
現実には、全身に巡らされた魔力の密度に
魔力密度と流れを均一化する事が出来て初めて調律状態になるのだ。
だから、外部から強制干渉をして魔力調律にしていく。
そして、強制的に魔力調律状態を作り出されても30秒と維持出来ない。
隊員達の間を歩きながら何度も強制的に魔力調律状態にしていく。
田中さん達4人は、強制的に魔力調律状態にされた状態を10分以上維持出来る様になっている。
才能云々以前に、既存の知識と訓練を受けていない為、変な癖が付いていないので出来ていると思う。
貴重なデータを得られているので、
隊員達を教導しながら、不謹慎にもそんな事を思ってしまった。
30分たった所で10分間の休憩を入れた。
全員、かなりの疲労が見て取れる。
2回目の30分では、全員が強い疲労感を漂わせていたので休憩時間を20分に変更。
3回目の30分では、疲労困憊になっている。
4回目の30分が終了した時点で、死屍累々と化した。
時間的にも良い時間だので、この日の教導を終了した。
教導結果は1分程維持出来たら良い方で、殆の隊員が30~40秒だった。
一番長く維持できたのは高月さんの3分24秒だった。
周りは凄いと褒めていたが、当人は田中さん達にまだまだ届かない事を嘆いていた。
この訓練で文句を言う隊員は一人も居なかった。
何故なら、私自身が訓練最初から終了まで休憩中を含めて一度も切らすこと無く魔力最大出力(制限値最大)で魔力調律状態の
眼の前で実現不可能と思える事が実行されていては誰も文句を言えない。
それに、先週の模擬戦で圧勝しているのも一因だろう。
それと伊坂班の面々の参加も大きいと思う。
伊坂さん達は、最初は居なかった。
1回目の訓練途中で、グランドに来て見学していた。
なんでも、訓練に来ているはずの私の所在が分からないうえ、殆どの隊員が居ない状態になったので、模擬戦でもやっているのではないかと思ってグランドに来たそうだ。
1回目の休憩時に何をやっているかを聞かれたので、教導内容を伝えると高月さんが参加を表明したので、伊坂さんが久喜さんと山本さんを強制参加させた。
伊坂さん本人は、事務仕事が残っているからと言って事務所に戻っていった。
まあ、伊坂さんは普通に出来る事なので不参加なのは理解できる。
ただ、強制参加させられた久喜さんと山本さんは、ちょっと不満そうだった。
この3人が今日参加した隊員の中で、最長維持時間トップ3だった。
その3人も、私が教導中一度も魔力調律状態を崩す事がなったので、自分達の実力不足を理解した様だ。
シャワーを浴びて、食堂で夕食を食べる。
一緒のテーブルには、伊坂さん、山本さん、高月さん、都竹さんのお母さんと澪さん達3人の8人だ。
周辺の席には、こちらに興味津々と言った方々が座っています。
都竹さんのお母さんの圭子さんが
「神城教導官、今日の訓練は魔力制御を鍛える訓練ですよね?」
「その通りですよ」
「全力の
「魔力運用効率が良くなります」
「魔力運用効率が良くなると何が良いのですか?」
「訓練時を100%とした時、作戦時行動時の魔力運用効率は30~50%です。
魔力運用効率の低下は、全ての
その低下の改善が期待できます。
また、魔力運用効率が改善されれば、魔力量とランクが変わらなくても威力と継続時間が増えます。
これ程、効率の良い訓練課題は無いでしょう」
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