第261話 1年次夏期集中訓練 2日目(10)
美智子さん達の訓練も終わりにして、高エネルギー射撃室に向かう。
移動中は、美智子さん達の感想を聞いた。
「的まで届かず、途中で失速して落ちてしまう。
まずは、的に届く様に勢い良く射出する方法を身に付けないと」
と美智子さんが言うと
「私も失速するから、もっと強く撃ち出さないといけないな」
と郁代さんも追従する。
「私は、的に届く前に霧散するから、魔力の収束力を上げないとダメだね」
と都さんが言う。
「私は、命中精度かな。
取り敢えず的に当たる程度だから、全て中央に当てたい。
その次が威力を上げて射程を伸ばしたい。
後は、もっと連射速度を上げたいかな」
と千明さんが言うと、都さんが
「千明に置いて行かれない様に頑張ろう」
と言うと、美智子さんが
「うん。頑張ろう」
と返し、郁代さんが
「私は、ほどほどで追いかけるよ」
と返す。
それを聞いた武井さんが盛大なため息をつき、照山さんが苦笑いをしている。
「どうかしましたか?」
と聞くと、武井さんは
「どうかしましたかかじゃ無いよ。
遠距離攻撃を学び始めたて、2日目の人間が言うセリフじゃない。
2日目と言うと、不完全な魔力弾の生成が出来れば上出来って言うのが普通なんだ。
なのに、初日で完璧な魔力弾は作れるわ。
2日目には、属性基底玉を作れる様になるだけでなく、
この非常識な天才共が」
と吠えた。
すると、戸神さんが武井さんの肩に手を置き
「吠えたく気持ちも分かります。
ですが、まだ普通の天才の範囲ですから気落ちしないで下さい」
と意味深に言う。
武井さんが
「普通の天才とは?」
と聞くと、戸神さんが
「ええ、たまに出てくる天才の範囲ですよ」
とにこやかに答える。
「それでも、大概だと思いますよ」
と武井さんが言うと、戸神さんは私を見ながら
「発露直後の能力診断で、空気弾や真空刃なんてものをランクE8で撃ったそうです。
あと、風を纏って10cm程ですが浮遊し、3分程飛んでいたそうですよ」
と言うと、武井さんと照山さんは私を凝視した。
伊島さんは、変わらずニコニコとしている。
美智子さんが
「優ちゃんだから」
と謎の言葉を呟くと、都さん達は同意していた。
「そんな、大天才と一緒に居る人達が普通のはず無いでしょう」
と戸神さんが言うと、武井さんと照山さんは納得していた。
一方、美智子さん達は微妙な表情をしている。
「私達を天才呼ばわりされてもね」
と千明さんが言うと
「いやいや、あんたは
と郁代さんが突っ込むと、美智子さんと都さんはウンウンと頷いている。
「えー。酷い。なんで」
と千明さんが言うと、都さんが指折り数えながら
「まず、光、火、風、水、地の5種属性の習得。
各属性の基底玉と
私達とは比べ物にならない速度で撃ち出す。
10m先の的に全弾当ててる」
と言うと、郁代さんが
「あと、手順の統合だっけ?
それも出来てたよね。
私なんて、手順を1つ1つ順番に追うので手一杯だよ」
と言うと、美智子さんと都さんも
『私も』
と返す。
千明さんが沈黙すると、武井さんが
「いや、君達4人共間違いなく天才だから」
どっと疲れた感じで言った。
納得していない美智子さん達に、照山さんが
「魔力弾の習得に1ヶ月。
属性変換で1ヶ月。
撃ち出せる様になるのに2週間。
5m先の的に当たる様になるのに2週間。
普通、この基本の習得には3ヶ月は掛かるものよ。
一方貴方達は、訓練校で魔力弾の習得に2週間。
ココに来て2日で基本の習得を終えたわね。
その上、
いくら習得難度1だと言っても、基本を習得した直後から使えるものでは無いよ。
習得には、1~2週間位は掛かるわよ」
と言って、美智子さん達を見渡し
「これで天才って評価されない方が、おかしくない?」
と言う。
4人共、なんとも複雑な表情をしている。
「言葉もありません」
と美智子さんが言うと千明さんを見る。
「天才って言われても、実感ない」
と都さんが言葉を続け、千明さんを見る。
「同じく実感ない。
むしろ、一人遅れているから余計に無い」
と郁代さんが言うと千明さんを見る。
「きっと、ちょっと射撃適正が高かっただけだよ」
と千明さんは、目を泳がせながら言った。
「優ちゃんも何か言ってよ」
と千明さんが助けを求められる。
「諦めましょう。
こういう評価は、一度付くと覆すのが難しい」
と答えると
「そんなー」
と千明さんの落ち込んだ声が返ってきた。
「それに、訓練校でも天才呼びされているのだから今更でしょう」
と補足すると、がっくりと頭を垂れた。
彼女達を連れて高エネルギー射撃室に入ると、私に気付いた研究員達が一斉に準備を始めた。
計測器の調整をしている研究者の元に移動し幾つか要望を伝えると、快く理解を示し設定を変更してくれた。
完全に見学モードの千明さんの元に行き
「さあ、行きますよ」
と言って、彼女の手を取り射撃位置に向かって歩き出す。
「え、え、ちょっと、なに?なに?」
と慌てているが、無視して引っ張って行った。
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