第228話 1年次 6月総合試験結果(1)

 総合試験が終わった翌日の金曜日。

 普段通りの朝の訓練を終えて教室に入ると、多くの訓練生がソワソワしている。


 今日は、月例の能力検査といくつかの発表がある為だ。

 発表されるのは、7月の能力訓練のクラス分けと寮の部屋替え、そして総合試験の上位者、優等生の発表が行われる。


 その為、今日は授業が行われない。

 1年生全員(私を除く)が、訓練着に着替えてグランドに集合した。

 1年生の月例の能力測定は、11時過ぎになる為、先に他の発表を行う為だ。

 それでも時間が余るので、そのまま訓練をするのだろう。


 私は、宿泊棟に移動して自主訓練を行っていると、10時過ぎに美智子さん達がやって来たので、発表内容を聞いてみる。


 美智子さん達4人は、優等生に無事になれた。

 それに伴い個室を与えられたので、今日中に移動しないと行けない。

 そうしないと、その後の部屋替えに影響がでるからだ。

 だから、今日の午後の訓練は行わない。


 この寮の部屋替えは、総合試験毎に行われる。

 毎回、全員が移動する事は無いが、優等生が出た部屋や同居人との相性が悪い部屋が対象となる。

 この場合の相性とは、性格や生活習慣や成績も考慮される為、毎回結構な数の人が移動する事になる。

 相性の悪い部屋の選定と部屋割りは、寮監の一存で決まるため、寮に帰って発表を見るまで分からない。


 優等生の状況は、

 男子:零士、章、能力訓練Aクラス下位1名、Bクラス5名、Cクラス2名

 女子:美智子さん、都さん、千明さん、郁代さん、伊吹さん、能力訓練Aクラス下位1名、Bクラス3名、Cクラス1名

 となった。


 能力訓練Aクラス下位に居た男子1人が優等生に成れなかったり、逆に能力訓練Cクラスでも3人も優等生になれている。

 この事は、能力訓練クラスの上位の方が優等生に成りやすいが、学業を疎かにすると優等生に成れない事が良く分かる。


 また、1年生は、総勢152名で男子70名、女子82名と男女比に偏りがあり、女子の方が多い。

 私が数に入らないと言っても、美智子さん達4人と伊吹さんの学業の成績上位者が5名もいたので、実質的な枠は5名であり、5/76と厳しいものだった。


 そんな中で、優等生に成った能力訓練Cクラスの女子は、なんと皐月さんだった。

 本人の驚きも凄かった様だが、いつも一緒に居る栗下さん達も大いに祝福していたそうだ。

 一方、対象的に宮園さん達の落ち込み具合は、かなり激しかったそうだ。


 なので、1-Aからは5人も優等生が出た。

 男子?

 1-Aの男子からは、優等生が出なかったよ。

 だから、飯田君達も激しく落ち込んでいたらしい。


 男子は1/7だし、何よりあの章が優等生に成れたのだから、1人位出てもおかしくなったのにな。


 そうそう、能力訓練クラスについては、大きく変わったそうだ。

 新たにSクラスが追加され、美智子さん達4人と零士達3人が対象。

 新Aクラスは、旧Aクラス下位3人と旧Bクラス上位が対象。

 新Bクラスは、旧Bクラス下位と旧Cクラスの上位が対象。

 新Cクラスは、残りのCクラスが対象

 Dクラスは変わらず。


 そういう訳で、飯田君、宮園さん、皐月さんもめでたく新Bクラスになれた。

 頑張って欲しいものだ。


 状況を聞いた後は、11時まで魔力制御訓練を行ってから能力測定に送り出した。

 今行っている魔力制御訓練は、手の上に5cm位の魔力の球を作って維持する訓練だ。

 これは、彼女達が体の部位に魔力を集中させる方法と身体強化の基本を覚えたので、次の段階として始めた。


 この魔力球を維持出来る様になれば、放出系と具現化系の基本を覚える事が出来る。

 そして、この魔力球を撃ち出す事が出来る様になれば、技能スキル魔力弾を使える様になる。

 4人共、まだ始めたばかりなので、発散が酷く、形も歪で、維持するだけで手一杯になっている。

 まあ、それでも形には成り始めている。

 ある程度形になり、適正属性が判明すれば、能力アビリティ化しやすくなる。

 千明さんと郁代さんにどの様な属性に適正があるか楽しみだ。


 能力測定が終わる時間を見積もって、自己鍛錬を行ってから教室に戻った。

 教室から怒声が聞こえたので教室内を覗くと、美智子さん達を自称エリート共が取り囲み恫喝していた。


 周りを確認すると、栗下さん達が離れた位置からスマホを構えて撮影している。

 他の人達は、遠巻きに見ている。


「どんな不正をしたんだ。ささっと言え」

 と飯田君が、大声で怒鳴りつけた。

 美智子さん達が、思わずビクっとした。


 それを見た宮園さんが

「貴方達みたいな、無能な人間が私達より上のはずが無いのよ。

 一体、どんな卑怯な手を使ったのよ」

 と金切り声を上げる。

 それに乗っかる様に取り巻き達も騒ぎ立てる。

 一部は、呆然立ち尽くしたままだった。


 私が、栗下さんの元に近づくと

「あの2グループの様子が可怪しかったから、なにかあるかと思って構えていたら、難癖をつけはじめたのよ。

 だから、証拠映像は撮っているの。

 あと、(小鳥遊たかなしみどりに霧崎教育官を呼びに行って貰ったわ」

 と教えてくれた。


 当然、美智子さん達は

「不正等していない」

「いい加減な事言わないで」

 と反論しているが、12人対4人では声の大きさが違う。

 その為、美智子さん達が押されている。

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