第227話 1年次 6月総合試験(4)
「ミットを打ち上げるまでは、上手く行ったんだけど、その後を止められた」
と千明さんが言うと
「私なんて、全部躱されたよ。
あんなに気持ち悪い視線や痛みにも耐えたのに」
と胸の横をさすりながら、郁代さんが落ち込み気味に言う。
「ああ、アレは気持ち悪いよね」
「ほとんどの人が見てたよ」
「うん、凝視している人も結構居たよ」
「あのニヤケ顔。思い出しただけでも鳥肌が立つ」
「ねぇ、逆に見ていなかった人って居た?」
「山田君が、足元見てたね」
「厳島教育官も足元見てたね」
やはり、皆気づいているよね。
でも、霧崎教育官も足元見てたのには気づいていなかったので
「霧崎教育官も足元を見ていました」
と補足して置いた。
「うっ。やっぱり予備動作無しで使える様にならないとダメか」
と郁代さんが言う。
「まあ、通用しないのは、最初から分かっていた事でしょう。
それに、どの程度通じるのか分かっただけでも、十分な収穫だと思う。
悪かった点は改善して、良かった点は伸ばせば良いだけなんだから」
と私がフォローを入れる。
「そうだね」
と皆納得していたが、私が見ていた範囲では、結構いい線をいっていた。
むしろ、郁代さんの初見殺しの連脚を躱した厳島教育官の反射神経を褒めたい。
普通なら回避を諦めて防御に徹する場面で、回避してみせたのだから見事な反射神経だ。
霧崎教育官が、教室に入ってきたので席に着く。
ホームルームが終わり、放課後になった。
試験最終日なので、授業はお昼終わりだ。
お昼を食べた後は、いつも通り、宿泊棟での訓練を行った。
そうそう、平田さんの回復は順調に進んでいる。
いや、順調すぎるペースで回復している。
現在は、ランクD2まで出力を上げても問題がなくなった。
予定では、ランクE5位のはずだったんだけどな。
それと、美智子さん達の訓練も順調に進んでいる。
身体強化もある程度使える様になり、まだ不完全だが、高速走法も一部使える様になった。
今日の試験で厳島教育官に接近した時には、4者4様の高速走法で接近していた。
美智子さんは、基本の走法である足の関節と筋力強化して走った。
千明さんは、美智子さんの走法に背中から魔力を放出する事で、推進力に変えた。
郁代さんは、千明さんの方法に魔力を使って、足の関節の反発力を上げ、魔力をバネの様に使って、更に加速を得る事が出来た。
そして都さんは、まだ未熟だが、高速走法を正しく習得した事で、他の3人よりも速く走れる様になった。
他にも、格闘技術でも差が出た。
美智子さんと都さんは、打撃・投げ・極めをバランス良く習得出来ているが、美智子さんが防御寄り、都さんが攻撃寄りだ。
千明さんは、蹴りと投げを苦手としているが、拳撃と関節技が得意だ。
郁代さんは、拳撃と関節技を苦手としているが、蹴りと投げが得意だ。
あと、彼女達が使える
今日の試験で使ったのは
硬化:魔力で、体の部位や装備を硬化させる。
彼女達は、この
ただし、この
放出:魔力を一定方向に放出する
千明さんと郁代さんは、この
美智子さんのハイキック、千明さんの左ストレート、郁代さんの蹴り技に使用された。
放出する魔力に指向性を持たせ、収束する事で、
都さんが右ストレートに使い、厳島教育官に防御で硬化の
それ程威力があった。
彼女達の訓練進捗度を、訓練校の標準進捗度に当てはめると、3学期末相当になる。
ちなみに、訓練校の1年次の標準進捗度は
1学期が、魔力制御訓練と
2学期が、基礎の身体強化の習得と運動
3学期が、基礎の身体強化と初歩の
となるので、彼女達は3ヶ月でほぼ1年分の訓練を熟した事になる。
そろそろ、属性訓練も始めて良いかもしれない。
夏期集中訓練時には、放出系・具現化系・特殊系の訓練を始められそうだな。
では、他のA・Bクラスの訓練生の実力は、標準進捗度より進んではいる。
Bクラスは、標準進捗度より1ヶ月程度進んでいた。
これはこれで、十分優秀と言って良い。
他のAクラスの訓練生6人内、上位3人(零士・章・伊吹さん)は、夏期集中訓練完了位まで進んでいる。
この3人も、十分突出した才能を示している。
下位の3人は、標準進捗度より夏期集中訓練前位まで進んでいた。
Aクラス下位の人達は、例年トップと言われる人達と同じ程度しかない。
そして、彼らが、各派閥の1年生の中心人物達だったりする。
今後、彼らがどの位巻き返してくるか楽しみだ。
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