第124話 治療

 夕食後も、平田さんの現状維持に努めつつ、魔力塊マナ・コアを出来るだけ詳しく調べて記録を取っていた。


 23時を少し過ぎた位に、羽佐田うさださんと葉山さんが訪れた。

 二人は三上さんに呼ばれてここに来たそうだ。

 二人は早速平田さんの状態を私から聞いた後、平田さんの魔力塊マナ・コアを確認する。

 その後、羽佐田さんが持ってきたバイタルメーターを平田さんに取り付けた。

 取り付けたバイタルメーターは、私が今着けている物の予備だそうだ。


 このバイタルメーターには、魔力塊マナ・コアの状態をリアルタイムに取得する機能が付いている。

 羽佐田さんが手元の端末でリアルタイム表示される状態と平田さん本人の状態を見比べて

「東海支局の環境試験室に比べると数段落ちるが、十分実用範囲だ」

 ということで、端末を見ながら対策を考えることになった。


 検討を始めると、三上さんと医院長の一ツ山さんが一緒に来た。

 一ツ山さんも優秀な治癒師という事で、治療方法の検討に加わる事になった。


 4人共、平田さんの魔力塊マナ・コアを見た感想が

「瓢箪と言うより串刺し団子だな」

 だった。


 治療方針としては、魔力塊マナ・コアの融合と狂戦士の能力アビリティの停止の2つだ。

 能力アビリティの停止方法は、三上さんが既に知っているので可能という事。

 問題は、魔力塊マナ・コアの正常化だ。


 まず、魔力塊マナ・コアを繋ぐパスの強化と魔力塊マナ・コアの封印は却下されて、魔力塊マナ・コアの融合を検討する事になった。

 パスの修復強化はただの問題の先送りだし、魔力塊マナ・コアの封印も時間経過と共に弱まるし、封印の内側で魔力が圧縮される可能性もあるので短期的には良いが、長期には向かないので却下となった。

 ただし、魔力塊マナ・コアの融合方法が見つからない、もしくは難しい場合は一時的に魔力塊マナ・コアの封印も検討する事になった。


 検討の結果、段階を踏んで融合させる方法になった。

 第1段階:既存のパスを強化短縮する事で、魔力塊マナ・コア間の距離を半分に縮め、追加のパスを3本追加する事で安定化を図り、パスに流量制限機能を付ける事で、基礎魔力塊ベース マナ・コア(通常見える魔力塊マナ・コア)の修復を行う。


 第2段階:基礎魔力塊ベース マナ・コアが安定したら、パスを広げ、流量を増加して、2つの魔力塊マナ・コアが同じ大きさになるまで基礎魔力塊ベース マナ・コアを強化する。

 この段階で、狂戦士の能力アビリティを封印する。


 第3段階:基礎魔力塊ベース マナ・コアにもう一つの魔力塊マナ・コアを取り込ませて、狂戦士の能力アビリティを消去する。


 治療期間は、1年から10年が予想される。

 治療期間が長いのは、第2段階終了までにどれだけの時間が掛かるかの予想の振れの為だ。

 それほど、基礎魔力塊ベース マナ・コアの疲弊が激しいのだ。

 それなら大きい方の魔力塊マナ・コアに統合すれば良いと思うかもしれないが、平田さんの魔力回路が存在するのは、小さい方の魔力塊マナ・コアなので、大きい方の魔力塊マナ・コアに統合した場合、能力アビリティの喪失の可能性が高いうえ、自我を失う可能性が高いので却下となった。


 治療方法が決まったので、ここからは治癒師の仕事だ。

 治癒の能力アビリティには、魔力に強く干渉する力ある。

 この能力を使って、パスの短縮と強化を行い。

 追加のパスと流量制限機能を追加する。


 私が主施術を勤め、一ツ山さんと三上さんが補佐を勤める。

 私が主施術を勤めるのは、治癒が使え直接魔力塊マナ・コアが見える事と魔力回路を書き込めるからだ。

 一ツ山さんは、直接見る事が出来ない為、端末情報を見ながら行う。

 その補助を三上さんが行う。


 葉山さんは、平田さんの体の状態管理を行い、羽佐田さんが状況のモニタリングと流量制限機能の魔力回路設計を行う。

 第1段階の手術が完了した時には、5時40分を過ぎていた。

 平田さんの状態は安定したので、魔力塊崩壊マナ・コア ブレイクダウンの心配も無くなった。

 脳死状態も快方の方向に向かっており、早ければ今日中に目を覚ますだろう。


 手術の成功を5人で称え合った後、仮眠を取るべく部屋を出ると、山本さんが三上さんに詰め寄って平田さんの状態を聞き出そうとした。

 三上さんは、山本さんに当面の危機は去った事と治療に時間が掛かる事を告げた。

 詳細は、本人の意識が戻った時に神城がするからそれまで待つ様に言ってから、私達を連れて仮眠室に移動した。

 目が覚めたら、9時になっていた。

 他の人達も起き出したら、高月さんが様子を見に来た。

 流石に、そろそろ起こさないと不味いと思って見に来たそうだ。

 職員用のシャワー室を借りて、シャワーを浴びて目を覚ます。

 その後、休憩室で高月さんが買ってきた朝食を食べながら、三上さんが伊坂さんと高月さんに平田さんの治療方針を伝えた。


 基本的に、平田さんの治療は私が行う為、訓練校の宿直棟にて療養を行ってもらう事と、私が朝晩の検診を行い、私の判断で治療を行う事になった。

 困ったり判断に迷ったら、三上さんに相談する事という制約はついています。


 で、肝心の移動は平田さんが目を覚ましてからと決まり、宿直棟の部屋の準備は伊坂さん達が行う事になった。

 10時前に解散となり、三上さんはこの後、家族と共にレ○ランドに行くそうだ。

 これを聞いた伊坂さんと高月さんは、ポカーンと呆けていた。

 なんでも珍しく家族全員の休日が合った日だったので、娘さんの大好きなレゴのテーマパークに行く計画をずいぶんと前から立てていたそうだ。

 なので、旦那さんと娘さんも連れて来たそうだ。

 羽佐田さんと葉山さんも奥さんが付いてきていて、名古屋観光をしてから帰るそうだ。

 3人からは、何かあったら遠慮なく連絡を寄越すように言ってから帰っていった。

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