第13話 検査(5)

 能力鑑定が終わって、実技会場に移動かなと思っていると、

 看護師さんが、大:1中:2小:2の金属の輪っかが載った台車を押してきた。

 輪っかの幅は、大が13cm位、中が8cm位、小が5cm位。

 厚さは全て2mm位だった。


「済まないが、実技に行く前にこれを着けてくれ」

 三上さんが台車を指差して言ってきた。


「これは、なんですか?」


「バイタルメーターと言って、生体データと魔力データをリアルタイムに測定する装置だ。

 実技中の運動状態測定に使う。

 正直、君の場合外部測定だけでは測れそうにないからな。

 それと、平常時と運動時の状態データを取得するから退院するまで着けていてくれ」


「よく分からないですけど、これを着ければいいのですね?

 どう着ければよいのかな?」

 輪っか(大)を持ち上げて、答えた。


「取付を行ってくれ」

 三上さんのその言葉で、看護師さんがバイタルメーター(大)を私から受け取ると、輪っかが2つ(半円)に分かれ「失礼します」と言って首にはめた。


 はめられた輪っかは、サイズは勝手に変わって、ピッタリと首に張り付いた。

 両手足にもバイタルメーターを取り付けられたが、全て隙間なく張り付いていた。


「苦しかったり、痛かったりかはしないか?」


「あーあー、大丈夫そうです。

 ぴったり張り付いているのに苦しくもありません」


 首を触ってみたが、バイタルメーターの表面はつるっとしていて、首との境目に隙間は感じられなかった。


 指で接触面を押してみても、声を出してみても、皮膚とバイタルメーターの間に隙間は出来なかった。

 まるで皮膚と一体化したみたいだ。

 手に着けられたバイタルメーターを見たが継ぎ目がわからなかった。


「そうか、それでは第一体育館に移動して、太和たいわの指示に従ってくれ」

 そう言われたので、第一体育館に移動した。


 第一体育館に着くと、太和さんと数名のスタッフがいた。

「来たな。まずは準備体操からだ」

 到着早々、午前中と同じ準備体操・ストレッチをこなした。


「準備体操とストレッチだけで、結構疲れた」

 そう呟くと


「まあ、当然だな。

 準備運動でも真面目にやればかなり疲れるが、それなりに効果もある。

 体が柔らかくなり運動に適した状態になり、怪我もしにくくなる。

 それに、体調管理もやりやすくなる。

 日頃から、行っていればいざっと言うときの備えにもなる。

 魔物共は、こちらの都合なんて考えてくれんからな」


「なるほど」

 と感心していると

「特に女性の場合は、基礎代謝が上がり太りにくくなる。

 さらに、ボディーラインが良くなるぞ」

 笑顔でサムアップしている。


 返答に困って固まっていると。

「ゴホン、それでは能力の発動訓練に移るぞ。

 まず、自分の魔力塊を感じられるか?」


 意識を体内に集中すると、昨日同様魔力塊を感じ取れた。

「はい、感じます」


「それでは、その魔力塊の回転方向を感じ取れるか?」


「はい、感じます。

 体の中で、反時計回りに回っています」

 それを聞いた大和さんが驚いた様な表情になった。


「次は、魔力塊の回転を早めて、溢れ出る魔力を全身に、頭の天辺から手足の爪先まで満たしてみろ」


 目をつむり、魔力塊の回転を早めて全身隅々まで魔力が満たすようにイメージして見ると、体に魔力が満ち始めた。


「もっと速く回転させろ、もっと全身を魔力で満たせ」


 さらに強くイメージして、魔力を満たす事に意識を集中した。


「もっと速く、もっと強く」

 自然に言葉が漏れた。


 丁度、三上さん達5人が第一体育館に入ってきた時だった。

「おい、嘘だろ。何なんだ、この魔力量・・・更に増えていくぞ」


「ん! 魔力が可視化し始めた。彼女の体が輝き始めたぞ」


「一部の魔物で観測された現象に似ているな」


「おい、データはちゃんと取れてるだろうな」

 上級鑑定士の人達が騒ぎ出したが、私は彼女らが来た事にも気が付かなかった。


「おい、太和どういう事態だ」


「おお、三上か、どうもこうも無い。

 身体強化の基礎、魔力纏身まりょくてんしんをさせただけだ。

 なんだこの嬢ちゃん。

 最初っから、魔力塊マナ・コアの感知が出来てたぞ。

 しかも、回転方向が反時計回りときた。

 指導も何も無しに、指示だけでこれだけ出来る奴なんて初めてだ。

 まだ強くなってやがる」

 引きつった声で答えていた。


 私は、周りが騒いでいる事にも気付かず魔力を練り纏いに集中していた。

 自身の限界まで魔力を高めていた。

 これ以上は無理だと思い目を開けて前を見ると、引きつった顔の太和さんと三上さんが写った。


「これが限界のようです」


「そうか、魔力の状態はどうだ」


 答えながら、手を見た

「全身に満ちて安定している感じです。ん!! 手が光ってる??」


「魔力の発光現象だ。高密度な純魔力でなければ起こらない現象だよ。

 ちなみに、手だけでなく全身で輝いているからな」

 三上さんが解説してくれた。


「あれ、いつの間にかに三上さんが居る!?」

 首をかしげながら返答していた。


「まあ、三上の事はどうでもいい。

 それより、その状態ではあまり動かないでくれ。

 ここの施設では、今の君の力に耐えられないからな」


 太和さんからの言葉に三上さんがムッとした顔になったが、何も言わなかった。


「今の状態を、魔力纏身まりょくてんしんという。

 文字通り、魔力を自身の体に纏う技術で身体強化の基本だ。

 普段なら、全力状態で能力判定する所なんだが、君の場合桁が違いすぎる、設備が保たない。

 まずは、今の半分にしてみてくれ。

 魔力塊の回転速度を半分にして、全身の魔力が魔力塊に吸込まれる感じで減らしてみろ」


 言われた通り、今の出力を半分になれと念じならが減らしてみる。

「大体、半分になったと思います」


「まだ、高いな。もう半分。全力の1/4にしてみてくれ」


 最大出力の1/4になるようにイメージし直して念じてみた。

「どうでしょうか?」


「その強さで維持してくれ。

 途中で解除したり、強化しないよう気をつけてくれ」

 言われた通り、維持しようとするが、出力がなかなか一定にならない。


「全体量の1/4ではなく、今の量が1/4だと意識してみろ」

 太和さんからアドバイス通りに意識してみると、安定してきた。


「そのまま、5分維持」

 5分 なんとか維持すると

「5分経過、魔力纏身を解除」

 魔力纏身を解除する。


 ホッとしていると

「30秒後、再び1/4量で魔力纏身を5分

 それを、あと5回やるぞ。

 魔力纏身にある程度なれないと次の試験に行けないからな」

 そう言われると何も言えないので、魔力纏身と解除を言われた通り熟すのだった。

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