第2話 終わる日常

 ライセンス証を貰い、丁度昼時ということで近くのファミレスで昼食後、中学校に向かうので再び車に乗り込む。

 ここでも、周囲の人々に注目を浴びて視線が痛かった。


 移動には、30分位掛かるのでしばらく時間がある。

 車窓から外を見ながら、これまでの事を振り返ってみる。


 3日前までは、能力のない普通の男子中学3年生だった。

 身長:175cm

 体重:68kg

 成績は、中の上

 運動神経もそこそこ

 魔力値は、悲惨だったが

 そこそこのフツメンだった。

 10月も半ば、来週には中間考査が始まるのに進路を決めかねていた。

 幼稚園時代からの幼なじみで親友の2人は、能力者で中部の訓練校「貴陽学園きようがくえん」への進学が決まっていた。

 自分だけが、地元の高校を選ばざる得ない状況に、親友2人に置いて行かれた感に強い苛立ちを感じていた。


 その日も親友たちと学校から帰宅し、普段どおり過ごした。

 20時を過ぎたあたりで、強烈な眠気に襲われたのでそのまま就寝。


 ドンドンドン

「お兄ちゃん もう、7時20分回ったよ。

 もう起きないと朝ごはん食べられなくなるよ」

 部屋の外から扉を叩く音と妹の声が聞こえた。

 普段なら7:00には起きるのに寝坊したようだ。


「お兄ちゃん 入るよー」

 そう言いながら、部屋に入ってくる妹。

 起き上がって、入ってくる妹を寝ぼけ眼に見ていると


「え、誰??」

「ん! 何を言っている?」

 あれ、声が妙に高くなってる?

「あなた誰なの?」

 かなり戸惑った声だった。

「誰って、お前の兄の優だよ。

 舞の方こそどうしたんだ?」

 そう答えると、舞は脱兎のごとく駆け出し

「お母さん 大変だよー お兄ちゃんがお姉ちゃんになったー」

 大声で叫んでいた。

「近所迷惑だから叫ばないの」

 と母さんの怒る声が聞こえた。

 家は、普通に賃貸のマンションの一室だから。

 ちなみに親友2人もこのマンションに住んでいる。


 とりあえず、起きるか。

 ベットから立ち上がると、寝巻きのズボンがずり落ちた。

「ゴムでも切れたかな?

 何故か、上着もダボダボになってないか?」

 取り敢えず、ズボンを手で押さえてトイレに向かう。

 何故か視線が下がった感じがする。

 あと、髪がウザい。伸びたみたいだ。

 トイレに向かって歩いている途中で洗面台の鏡が目に入った。

 そこに写っていたのは、小柄な少女の姿だった。


「え、誰!!」

 鏡の前に立ちまじまじと確認する。

 それは目の覚める程の美少女が写っていた。

 小顔に新雪の様な真っ白な肌

 目は、比較的に大きく目尻がややタレ気味で虹彩は血のような赤色

 鼻は、高すぎず低すぎず

 可憐な小さな唇

 さらさらな銀髪が腰より少し高い位置まで伸びている

 男物のダボダボの寝巻きを着た自分の姿だった。


 自分の姿にショックを受けていると、父さんと母さんを連れた舞がやってきた。


「ほら、おねーちゃんになって居るでしょ」


「優なのかい?」

父さんの声に我に返った。


「うん。そうだよ。」


「そうか。取り敢えず、対魔庁に連絡入れてくる」

 そう言うと、リビングに戻る父さん。


「まずは、身支度をしないと行けないね。

 服は、舞の服は入りそうにないから私のを持ってくるね」

 俺と舞の胸を見比べてそう結論つけて服を取りに行く母さん。

 舌打ちをしてそっぽを向く妹。


 なんだかいたたまれない空気の中、尿意が襲ってきた。

 慌ててトイレに向かおうとすると


「あれ、どこに行くの?」

「トイレだよ」

 そう答えると、ニヤと笑い

「じゃあ、一緒に行って確認しようか?」

「何を?」

「もちろん、付いているかどうかだよ」

「馬鹿、本当に漏れそうなんだよ」

 真っ赤になって反論すると

「終わったら、ちゃんと拭くんだよ~」

 その声を背後で聞きながら、トイレに駆け込んだのであった。

 ちなみに、やはりついていませんでした。

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