第241話 1年次夏期集中訓練 1日目(4)
私は、大きなため息をつき。
「そうなる可能性があると言うだけでしょ」
と突っ込むと、安藤さんは声を詰まらせた。
「え!そうなの?」
と驚いた様子で郁代さんが聞く。
「今までの話から、仮説は立てたけど実証実験はまだと見ました」
と言うと
「その通り」
と武井さんが答えた。
「と言う事は、美智子さん達で実証実験をしたいと言う事ですか?」
と問うと
「
と再び武井さんが答え
「ごめんなさいね。
今、この理論が正しいかを検証出来る人が、貴方達しか居ないの」
と照山さんが謝る。
私が伊島さんを見ると、ニコニコとしている。
ああ、これは確信犯だな。
「新しい魔力スペクトル分光を発見したから、調査・検証した結果を実証したい。
だから、私達がここに来るのに合わせて無理な解析をしたのでしょう」
と言うと、伊島さんは
「うんうん。その通り。
この機会を逃せば、次の機会はいつになるか分からないからね」
と一切の迷いも
美智子さん達は、よく理解出来ていない様でポカーンとしている。
「どういう事」
と郁代さんが問う。
「新しい事を発見し理解出来ると、次に行う事は?」
と問うと
「え!次?
新しい発見をして、理解できたら、……実践?」
と答えたので
「その通りです。
その実証実験の為に、貴方達が選ばれました」
私が疲れた様に言った。
郁代さんは、自分を指差し
「私達が実験台?」
と言うので、頷くとそのまま固まってしまった。
しばらくして再起動した美智子さん達に、改めて状況を説明して検証に付き合うかどうかを確認する。
悩んでいた4人だが、戸神さんの
「貴方達に害もデメリットも有りません。
従来の方法より早く強く成れる可能性が高いですよ」
の一言で検証に参加する事になった。
まあ本人達の意思を尊重するとして、一体どの位無茶をしたのか問いただすと、2ヶ月も不眠不休で解析したそうだ。
解析に参加した延べ人数は、1,000人を超えてるとか何を考えているのだろう。
郁代さんが
「それって凄いの?」
と聞くので
「普通ならデータ収集に数ヶ月から数年。
データの分類・解析に数年。
仮説の立案に検討・検証で数年掛ける事もザラです。
それをたった2ヶ月で行うとか。
狂気の沙汰ですよ」
と言うと、郁代さん達の目が点になり
「おお、三上主任と同じ反応だ」
と照山さんが嬉しそうに言う。
これは頭が痛いではなく、頭痛が痛い案件だ。
「
だから研究者達のお願いは、重々慎重に判断して下さい」
と忠告を与えた。
美智子さん達は、お互いに顔を見合わせてから
「気をつけます」
と返答した。
しかし、私が怒っているのに伊島さんはずーとニコニコしている。
そんな様子を千明さんが
「なんだが、孫に怒られているおじいちゃんみたい」
と呟くと、伊島さんは
「保育園に通っている孫の居る身ですからね」
と言って、ニコニコしている。
妙にほんわかとした空気が流れた。
安藤さんが咳払いをし
「話を戻したいんだが、良いかな」
と言って衆目を集めた。
「まず、測定が終わったので測定子を置いて下さい」
と言われ、机の上に測定子を置く。
隣の部屋から数人の研究者が出て来て、測定端子と測定機か中継ボックスか分からない器具を片付けると、私達各人に1枚の紙が置かれた。
用紙を見ると、測定結果が書かれている様だ。
「その紙には、今回の測定結果が記載されています。
各項目の意味は、あとで説明します。
先に数値の見方を教えます。
数値は、最小値0から測定限界の255までの範囲で表しています。
この数値は、その能力に対する適応性を表しています。
なので魔力量と違い、現状のランクが上がったからと言って変わるものではありません。
その事を踏まえた上で聞いて下さい。
まず、魔力の性質から説明します。
現状分かっている魔力の性質は、5種類有ります。
強化、放出、具現、変質、操作の5種類です。
強化は、身体強化や武具強化や魔力強化等の強度と威力を上げる性質です。
放出は、放出系の攻撃に関する性質です。
具現は、具現化系に関する性質です。
ここまでは、既存の分類と重複するので分かり易いと思います。
今回の解析で判明した新たな性質。
変質は、魔力の質そのものを変化させます。
この性質により、魔力をゴムの様に伸ばしたり、接着剤の様にくっつきやすくしたり出来ます。
なので、具現化系の
最後の操作は、魔力の操作に関する性質です。
放出系の攻撃で、途中で軌道を変えたり離れた位置で
そして重要な事は、これらの性質の相関関係がまだ十分に分かっていない事です。
なので現状は、数値が高い程習得し易いと思って下さい。
と言う事で、魔力の性質から我々の解析結果を説明しましょう」
と安藤さんに言うと、大型モニターが隣の部屋から運び込まれた。
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