第254話 1年次夏期集中訓練 2日目(3)

「では、次は都さん」

 と呼ぶ。

「はい」

 と返事をして、美智子さんの隣の射撃位置に立つ。


 美智子さんと同じ様にして、火球ファイヤーボールを撃つ。

 今度は、ハンドボールより少し小さい位の火球ファイヤーボールが撃ち出された。

 その後、自分で撃たせると、ゴルフボール位の大きさの火玉になった。

 風も同様に誘導を行った後に自分で撃たせたると、大きさはゴルフボール位の大きさの風玉になった。


 誘導が終わった美智子さんと都さんは、的に向かって撃ちまくっている。


「次は、郁代さん」

 と呼ぶ。

「はーい」

 と返事をして、都さんのとなりの射撃位置に立った。

 同じ様に誘導して、火球ファイヤーボールを撃つ。

 今回は、野球ボール位の大きさの火球ファイヤーボールが撃ち出された。

 自分で数発撃たせた後、再び誘導して、土玉アースボールを撃ち出す。

 大きさは、野球ボール位で、火球ファイヤーボールと同じ位だ。

 土玉アースボールは、的に当たり周辺に土がばら撒いた。

 具現化系は、意図的に解除しない限り物質として残り続けるから、こういう現象が起こる。

 再び自分で撃たせる。

 郁代さんが撃った火玉と土玉の大きさは、ピンポン玉位だった。


 私が次を宣言する前に、千明さんが射撃位置でワクワクしながら待っていた。

 千明さんの側に行く。


「彼女が、一番難しいよね」

 と伊島さんが声を掛けて来た。


「ええ、4人の中で一番厳しいです」

 と答えると

「ええ、私は無理なの?」

 と落ち込み気味に聞いてくる。


「難しいと言いましたけど、無理だとは言ってません。

 地・火・水・風・光の5種類の発露可能があり、光の発露の可能性が高く、残りの風・地・火・水の4種は、現状では厳しいと言うだけです。


 ですが、やれるだけやってみましょう」

 と言うと、千明さんは慌てて構えを取る。


 これまでと同じ様に誘導をして、5種を撃った。

 その結果、光玉と風玉を自分で撃てる様になった。

 光玉はピンポン玉位だが、風玉はBB弾位の大きさだ。

 これには、本人も乾いた笑みを浮かべていた。


「習熟が進めば、大きくなりますよ」

 と声を掛けたが

「うん。頑張る」

 と落ち込み気味の声で返事が返ってきた。


 言い方は悪いが、私の実験が終了したので、お昼に行く事になった。

 その際、伊島さんは私の誘導技術をベタ褒めしていた。


「凄い事をした訳ではありません」

 と言うと、伊島さんは

「謙遜しないて良いよ。

 間違いなく、素晴らしい精度だったんだから。

 あれ程の精度は、私では無理だね」

 と返された。


 すると

「室長、だからと言って俺達に、あの精度を要求されても無理ですからね」

 武井さんが言う。


 伊島さんは

「そうかね?

 退官間近の私はともかく、君達なら習得出来ると思ってるよ」

 と返す。


 武井さんは

「まあ、がんばります」

 と答え、照山さんは苦笑いをしていた。


「優ちゃんのどこが凄いのですか?」

 と千明さんが聞くと、武井さんが

「俺達が属性取得の訓練誘導をする時は、手に集まった魔力に干渉して、属性変化を起こさせているんだ。

 これ基本な。


 一方、神城さんが行った方法は、魔力塊マナ・コアに干渉して属性変化を誘導した魔力を、手まで持ってくる高等技術なんだ。


 結果は、体験したから分かるでしょ」

 と説明する。


「他人の魔力に干渉して、属性変化を行うのも高等技術よ。

 でも、神城さんは、その数段……10段上の技術を使ったのよ」

 と照山さんが補足する。


 千明さんは、私を見ながら

「そんな、凄い事をしたんだ」

 と呆れた様に呟く。


「そこまで高等な事をしていませんよ」

 と言うと

『え!』

 と声が上がった。


魔力塊マナ・コア付近で、魔力の波長を似せた魔力で属性変化を行い。

 魔力塊マナ・コア付近から手まで、魔力を移動させただけです。

 移動させた魔力に、魔力塊マナ・コアからも引っ張られる様に属性化した魔力を引き出しただけです」

 と言うと、武井さんが呆れた様に

「十分高度な事だよ。

 10段上が、9段上に変わっても、俺達には大差ないって」

 と言ってお手上げポーズを取る。


 伊島さんが

「流石、三上君が鍛えただけある」

 と言うと、武井さんが

「三上主任が関係しているんですか?」

 と尋ねた。


「三上君の主研究は、魔力塊マナ・コアと魔力の関係性だからね。

 魔力塊マナ・コアの研究については世界一だよ」

 と伊島さんが言う。


 凄い人だとは思っていたが、やっぱり凄い人だった。

 その三上さんは、今研修島に行っている。


 三上さんに毒島君達の魔力塊マナ・コアの事を伝えると

魔力塊マナ・コアの奇形が原因で落ちこぼれの事もあるのか。

 魔力塊マナ・コアのリアルタイムスキャナーの試作機が出来たばかりだ。

 ちょうど良いから夏期集中訓練のDクラス連中に試してみよう。

 早速交渉だ」

 と驚きながらも嬉しそうに言った。

 教育課と交渉した結果、早々に能力の頭打ちした者達への検査が実施される事になった。

 検査自体は、三上さんの部下の人達がするそうだけど、監督の為、三上さんも研修島に同行している。

 検査自体は、2日間で終わるそうだから明日には戻って来る。


 武井さんは

「はぁー。そんな人の弟子なら要求能力が高くて当たり前か」

 とボヤきながら、大きくため息をついた。

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