第199話 訓練と言う名の地獄(1)
夕食後寮に戻り広域探知で確認すると、共有スペースは占拠されている。
田中さん達の部屋にも、人が移動始めている。
あと2・3日で終わると思うから放置されているが、長期化もしくは過激化するなら、寮監になんとかして貰おう。
そう思い直して、部屋に戻りお風呂に入りる。
お風呂から上がりしばらくすると、田中さん達が下に集まったので迎えに行き、今日の
中間試験2日目も初日と変わらなかった。
田中さん達は、試験の結果にはそれなりの手応えを感じている様だった。
中間試験3日目、学科試験は全て終わった。
田中さん達の部屋の占拠はなくなったが、共有スペースの占拠は続いている。
中間試験以前は、談話室の一角を専有する位だったのに、どういうつもりだろう?
尾行も相変わらず続いている。
1度も成功していないとは言え、待ち伏せもしているので、毎回通る道順を変更している。
寮監とも話をするが分からないので、しばらく様子を見る事になった。
あと、変わった事は、土田さんが自力で魔力調律状態になれる様になった。
今日の午後の訓練中にあっさりと出来て、驚きで
この調子で、田中さんと都竹さんも出来る様になって欲しい。
そして、中間試験4日目。
普段通り朝訓練を行って後から、今日来ている隊員2人と一緒に駐屯地に移動する。
今日は能力訓練の試験なので私は不参加だ。
霧崎教育官には、駐屯地へ出勤する許可は取ってあるので問題ない。
残った2人の隊員に、田中さん達の午後の訓練をお願いした。
駐屯地に着くと、そのまま会議室に通された。
なんでだろうと思いながら会議室に入る。
会議室は長方形の部屋で、入り口は短辺の右端に扉がある。
会議室の机は、部屋に合せて長机がロの字型に配置されている。
扉を開けて正面の席に、久喜さん夫妻と石破さん達4人が座り、部屋の奥、窓側には、篠本さんとその左右に中之さんと高橋さんが座っている。
久喜さん達の対面の席には、伊坂さん、太和さん、霜月さんの東海支局教導隊の面々が座り、残り一辺には防衛課の制服を着た2人が座っている。
片方は見たことがある。
名城公園の魔物来襲の時に防衛課の指揮を取っていた人だ。
ならば、もう一人は、愛知方面隊の大磯司令だろう。
篠本さんに言われ、久喜さん達の横に座ると、篠本さんは
「さて、神城准尉にも分かる様に、この集まりの主旨を話しましょう」
と言って、周りを一瞥する。
「この集まりは、先日の魔物襲来時の状況確認と、愛知方面隊への懲罰的訓練の内容の確認である。
本来ならば、懲罰委員会で検討すべき案件であるが、上層部より懲罰委員会ではなく、我々に『早急に厳罰を実行せよ』と厳命が下りた。
これは、対魔庁の組織改革を断行するうえで障害であると判断されたためだ。
よって、戦術課中部方面隊と東海支局教導隊の合同によって実施を行う。
期間は72時間と短いが、奴らが2度と隊規を犯す事が無い様に躾て欲しい」
と言葉を区切った後、私を見て
「では、現場で指揮をした神城准尉には、愛知方面隊に出した指示とどの様な意図があったかを聞きたい」
と聞かれた。
「愛知方面隊に出した指示は、防衛線の構築と維持だけです。
これは、万が一にも魔物の後逸を防ぐためです。
特に後逸の可能性が高かったのは、第一次増援部隊の到着までと、第二次増援部隊との交代の際です。
幸い、第二次増援部隊到着前に事件の終結が出来た為、問題になりませんでした。
また、愛知方面隊を戦線に投入しなかった明確な理由は、戦場の規模と魔物の出現数に対して戦闘可能エリアが限定的だったからです。
初動対応者と第一次増援部隊で、戦闘エリアのほぼ全てをカバー出来ていました。
そこに愛知方面隊を戦力として投入する場所が存在しません。
それに、愛知方面隊を戦力してカウントするには、能力不足です。
彼らの戦闘能力指標は、瞬間最大能力であり、継戦能力では有りません。
また、防衛課の戦闘経験のほとんどが、通常空間での戦闘です。
瘴気の満ちた空間での戦闘能力は未知数です。
瘴気の満ちた空間での戦闘は、本来の実力を出せない事は既知の事実です。
なので、瘴気の満ちた空間の戦闘評価を1クラス下として扱うのが常道です。
そして、今回出現した魔物は、多種多様なうえ、ランクF5からE8までと幅広く出現しました。
愛知方面隊には、荷が重いと判断しました。
また、文化財を守るうえでも、不要な損害を与える可能性が高い外乱要因の排除という側面もあります。
以上です」
と答えると、大磯司令から
「愛知方面隊隊員が文化財を破壊すると言いたいのかね」
と問われたので
「逆に大磯司令に尋ねたい。
血気盛んな隊員が、文化財を守って戦う事が出来ると思われますか?」
と問い返すと
「確かに、思わない」
と深いため息と共に返答された。
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