第196話 テスト前の出来事(6)

 中之さんの話が終わると、会議室は静かになった。

 ちょっと考えてから

「今回の合同訓練に参加するのは、先日の件に出動した部隊の2部隊だけなんですか?」

 と問うと

「ああ、出動した4部隊の内の2部隊だ。

 正確には、1部隊と半部隊だな」

 と山本さんから返答が帰っていた。


「参加部隊を、先日出動した4部隊に変えられますか?」

 と問うと

「それは出来るが、どうしてだ?」

 と不思議そうに聞かれた。


「まとめて叩きのめす為です」

 と言うと

「まあ、神城さんなら余裕で出来るだろうが、叩き潰してどうするんだ?」


「決まっています。

 我々対魔庁の理念を忘れた愚か者共を野放しには出来ません。

 下らないプライドで騒いでいるゴミ隊員なんて、魔物と大差ありません。

 2度とふざけた事が言えなくなるまで、力で捻じ伏せ、徹底的に躾を行い心を折り、誰が主人上官であるか分からせる必要があります。


 ああ、それと、彼らを扇動した者もいるはずです、其の者には厳罰を、その他全員にもそれなりに重い罰を下しましょう」

 と言うと、山本さんは顔を引きつらせて

「ああ、分かった。その様に取り計らう」

 と答えた。

 その様子を見ていた伊坂さんが

「それはいいが、実際どうするつもりなのだい?」

 と何処かワクワクした感じで聞いてくる。


「取り敢えず、1対340の殲滅戦でも行いましょう。

 彼らの実力からして5分と保たないと思いますが、無理やりでも1時間位は戦闘を継続します。

 骨の10本や20本折れても問題無いでしょう」

 と言うと

「いや、十分問題だからな」

 と山本さんが冷静に突っ込む


 中之さんが

「一応聞くが、それは馬鹿共全体でか?」


「いえ、一人当たりですね。

 なに、壊したそばから直せば、いくら破壊しても問題はありません」

 と言う私の言葉に

「それ、十分に問題だからな」

 と、山本さんが突っ込む。


「そうか、分かった。

 大隊長には、俺から話しておく。

 あと、教導隊にも共同訓練から懲罰訓練に変える事を伝えておく」

 と言って、会議室を出てい行った。


 ちなみにその後ろで

「おーい。俺の事は無視ですかー」

 と山本さんが一人吠えていた。


「さて、吾郎は放って置いて、日程の調整をしたいのだが、希望の日にちはあるか?」


「そうですね。来週から中間試験なので、その期間を避けて欲しいです」


「それなら、学科試験が終わった4日目に設定したらいい」

 と山本さんが口を出した。


「訓練校は、中間・期末問わず、学科3日、能力アビリティ1日の試験日程だ。

 神城さんに能力アビリティのテストは不要だから、4日目を当てたらいい」

 とアドバイスをくれた。


「それで良いか?」

 と伊坂さんが問うので

「はい、それで問題ありません」

 と答えた。


「吾郎、懲罰訓練だと何日必要だっけ?」


「たしか、最低3日だな」


「取り敢えず、3日分の計画を立てて提出するか」


「そうだな、神城さんを初日に当てて、他の訓練内容も過去の懲罰訓練から抜粋して、大雑把に決めて提出しよう。

 細かい修正は、教導隊の反応を見てから修正で良いんじゃないか」


「取り敢えず、そうするか。


 ん! 待てよ。

 神城さんが訓練校と往復する時間があるから、丸一日は割り当てられないな」


「確かに割り当てられないな。

 でも、大した問題にならんだろう」


「どういうことだ?」


「神城さんには、9時から15時まで担当して貰えば良いだけだ。

 朝は、訓練内容等の説明もあるから9時位からしか始められないし、15時過ぎてもまともに動ける奴は残って居ないだろう。

 だから、そこからは別の誰かが担当すれば良いだけだ」


「それで良いか。

 まだ計画段階だし、反応を見てから詳細を詰めよう。


 取り敢えず、大雑把な方向性が決まったから、神城さんは規定訓練に戻って良いよ」


「分かりました。それでは、失礼します」

 と言って、席を立ち、会議室を出る。

 扉を閉めると、扉の向こうから

「神城さんも、やっぱり教導官なんだな。

 俺ですら躊躇ちゅうちょする判断も、即決だったからな」

 と言う山本さんの声に続き

「技術だけでなく、即断即決ができ、必要なら非情な判断も下す事ができるから教導官なのだろう。

 でなければ、今頃は他の部隊の所属になっていたはずだ」

 と伊坂さんは冷静に返す。

「確かに、違いないな。

 思わず、金玉がちぢがっちまったよ」

 と山本さんが言った後、二人して声を出して笑っている。


 扉から静かに離れ、規定訓練の続きに向かった。


 規定訓練後、普段通り駐屯地に居る隊員の魔力調律の訓練を行ったのだが、全員、異常な程気合が入っていた。

 自主訓練も積んでいるらしく、全員が5分以上維持できる様になっていた。

 最長で10分と、かなり維持できる様になったと言って良い。

 30分を超える様になれば、目に見えた成果が見れる様になるだろう。


 そう思いながら訓練を終了し、駐屯地で夕食を食べていると、以前訓練校に護衛役で来た事のある3人の女性隊員がやって来て

「神城教導官、今度の共同訓練に参加されるそうですね」

 と聞くので

「ええ、参加しますよ」

 と答えると

「防衛課の馬鹿共の根性を叩き直して下さい」

「無能なくせに口を開けば、上から目線のうえ、嫌味しか言えない連中の叩きのめして下さい」

「協力が必要なら、何でも言って下さい。

 喜んで協力させて貰います」

 と言うと、食堂に居る隊員達が全員が賛同する。


 どれだけ愛知方面隊は嫌われているんだ?

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