第259話・移住者2号3号・04


「いらっしゃいませー」


「ようこそお越しくださいました」


老舗旅館『源一げんいち』―――

そこではいつものようにお客様を出迎えていた。


駐車場はとても広く、田舎で土地だけはふんだんにあるせいか、

普通乗用車はおろか大型バスを何台も停めても支障はなく……


そして人外の3人もそこで働いていたのだが、


「ん? んんん?」


猫又ねこまた』の麻夜マヤが鼻をフンフンと鳴らし、

気になる匂いの方向へ視線をやる。


そこにはいかにもな、40代くらいのビジネスマンと思われる男性が2人。

彼女は『一つ目小僧』の人見ひとみの肩を指先でつつくと、


「あれ、わかるかにゃ?」


「やってみます」


姫カットの女性に言われた、髪で片目を隠した小学校高学年~

中学性くらいの少年は、彼らが持っている荷物を凝視する。


そして麻夜に振り向くと、コクン、とうなずき、


「あー、やっぱりダメなヤツかにゃ」


「……そうですね。

 この旅館には似つかわしくないかと」


2人にしかわからないやり取りをした後、


「後で時雨しぐれに伝えておくにゃ」


「銀さんがいませんが、大丈夫でしょうか」


「まあ多分大丈夫にゃ。

 相手は2人だけだし、いざとなったらアタシが加勢するにゃ」


そこまで話していたところで、離れから女将さんの声がして、


白波瀬しらはせさーん! 人見くーん!

 料理を運んでー!」


「はーい!」


「今行きまーす!!」


そこで2人はパタパタと旅館の廊下を早足で移動していった。




「……誰もいないな?」


「いたところでこの暗さだ。

 それに客が深夜、旅館の庭園に出ていたところで何が悪い?


 それより、さっさとブツを渡せ」


昼間、麻夜や人見が目を付けた男性客2人は―――

人が寝静まったであろう時間帯に、何やらやり取りをしていた。


だが、彼らが持っているものは武器、それにどう見ても非合法な

もので……


「田舎になればなるほど、警察の目も緩むからな」


「ああ。それに公共機関じゃなく車での移動なら、何を持ち運んでも

 調べられる恐れはない。


 しかしここはちょうどよいな、かなりの東北で、それでいて

 車があるなら持ってこいの場所だ。


 今後はここを取り引き拠点として使うか」


男たちがそう話していると、


「そいつぁ、ちょっとゴメンこうむりたいものでござんす」


満月の下に何者かの影が現れた。


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