第255話・雲外鏡視点06


「そーえいば『雲外鏡うんがいきょう』様。

 『飛縁魔ひのえんま』さんや『雪女』ちゃんはどうしてるにゃ?」


姫カットの二十歳前後に見える女性……

猫又ねこまた』の『麻夜マヤ』が白米を口に入れながら聞いてくる。


「あいつらにも今、大人しくしてもらっている。

 ただそれぞれ『表』の仕事を持っているからな。

 しばらくはそれに専念しているだろう」


「なるほど。

 しかし人間の姿になったのはいいですが、あっしに出来る事って

 何ですかねえ」


続けて時代劇に出てきそうな、ボサボサ髪の二十代の青年―――

唐傘からかさお化け』の『時雨しぐれ』が、飲み物を口にしつつたずね、


「それも含めて、安武やすべさんのところに行ってもらうんだ。


 聞けば川童かわこの銀さんは、向こうで旅館の手伝いをしている

 ようだし、うまく人間の生活に溶け込んでいる。


 それよりお前たち、変化は無いか?

 妖力ようりょくが格段に上がると聞いたのだが」


考えてみれば『一つ目小僧』の『人見ひとみ』は、そのあまりの変わりように

どう能力が変化したのか、聞きそびれてしまったからな。


「うーん……まあ、身体能力は上がったような気がする。

 視覚や聴力、嗅覚も」


「あっしはただの傘でしたからねえ―――

 一応、飛行能力はあるでしょうが。


 あとは雨に関する能力でも加わっていりゃあ、御の字でございやしょう」


『麻夜』と『時雨』は、自分の手やお互いを交互に見ながら話す。


「フン、雨でも降らせてみるか?」


俺は苦笑しながら提案すると、


「やってみやしょうか……むむむっ」


と、『唐傘お化け』が何やら念じると―――途端にゴロゴロと鳴り始め、

空模様が怪しくなる。


「おい、まさか」


「何か、すごい水の匂いがしてきたにゃ~」


ベランダのガラス戸越しに、外が暗くなってきた事がわかり、

そして滝のような豪雨がバシャッ!! と振って来たかと思うと、


「あ、あれ? もうおしまいかにゃ?」


「どうも、このマンションだけに一瞬強烈な雨が降ったようだが……

 超局所的集中豪雨とでも言えばいいのか」


「う~む、うまくいかないもんでやすねぇ」


『時雨』は残念そうに語るが、天候を操るあやかしなど聞いた事がない。

予知したり、その前触れであったりする妖怪はいるが。


「とにかく、朝食を終わらせよう。

 その後、『麻夜』の能力も詳しく調べてみるか」


もしかしたらコイツら、かなり『化けた』かも―――

そう思いながら俺は、二人に食事の続きを促した。


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