第280話・亮一視点06


身長180cmはありそうな、髪を金色に染めた男が夜の都内を歩く。


安武やすべ満浩みつひろの兄―――亮一りょういちである。


「ふ~……


 あの山本さんもととかいうガキからもらった金でしばらくは遊べるが、

 今後はどうすっかね」


まったく、東北の満浩の家を利用するのはもう無理だろうし、

かと言って実家の金も無限じゃねーからな。


一応、余裕のあるうちに計画は立てておかねーと。

しかしこういう時、家族を頼る事が出来ないってのはキツいな。

両親はともかく、満浩のヤツはいつまでも過去を根に持つタイプだし―――


「んあ?」


何か女子高生? が3人、俺の方を見ていやがるな。

以前化け猫に化かされた事もあるし、そこは注意しておかねーと。


彼女たちは何か俺の方をチラチラ見ながら話しているようだが……

そこで聞き耳を立ててみると、


『あ、あれ! あのイケメンシブオジ、今こっち見たよ!?』

『もちろんあたしの方を見たに決まっているっしょ!』

『……それはない……ワタシ一択……!』


何だぁ?

ガキに喜ばれてもあまり嬉しくねーんだが。

それに最近は条例とかうるせぇしよ。


だがまあ、悪い気はしねぇ。

ここは大人らしく注意しておくか。


「なあお嬢ちゃんたち。こんな夜中に―――」


すると彼女たちはいっせいに黄色い声を上げて、


「きゃー!! もしかして私たちの事ですか!?」


「うは~、声までシブいなんて反則ぅ♪」


「……このASMR音声は効く……!」


まいったな、モテるのも考えものだぜ。

俺はまず少女たちを落ち着かせるために両手を上げて、


「いやいや―――俺は火遊びはしねぇぜ?


 もうちょっと大きくなってからなら、遊んであげてもいいんだけどなぁ。

 それに仲良さそうだし、取り合いってのも」


すると彼女たちはそれぞれ顔を見合わせて、


「そ、その時は分け合いましょう!

 半分こ、半分こ!」


「半分ずつだったら2人分にしかならないでしょ!」


「……平日は1/3ずつ……

 休日は共同で……どや……?」


うわぁ何だこりゃ、肉食系ってヤツか?

最近の子って進んでいるんだか何だか。


「じゃーそうと決まったら、行きましょうオジ様!」


一人が俺の片腕にしがみついてくるように手を回し、


「待ってくれよ、俺は最近警察のお世話になりっぱなしだったんだ。

 当分はカンベンして欲しくて」


「おぉ!? 影がある雰囲気の人だと思ったら道理で―――」


「……分別のある、優しきヴィラン……

 イケるやん、それ……!」


次々と他の2人も参戦して来て、俺は拘束されるようにまとわりつかれる。


「まいったな。どうして欲しいんだよ」


俺がため息まじりに聞くと、


「や、やっぱり?

 今のウチに手をつけてもらうのもアリかな? って」


「大丈夫! バレたらちゃんと18才以上だって口裏合わせるから!」


「……むしろ手をつけなきゃ今泣くすぐ叫ぶここで大声上げる……!」


どういう脅迫だよ、と思いつつ―――

俺はぜんを食うため、彼女たちに引きずられていった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る