第88話・弥月琉絆空視点01


自分の名前は弥月みつき琉絆空るきあ


表向きは中堅どころの会社に勤めるどこにでもいるサラリーマン……

だが裏の顔は、あやかしを狩る一族の末裔まつえいだ。


そして最近、プライベートな事だが困った事が起きた。


自分には加奈かなという妹がいるのだが―――

最近、協力者を1人増やしたらしい。


一族としても妖を見る事が出来る人間は大歓迎だ。

さらに戦闘能力の高い人材というのだから、言う事は無い。

何せそこまで出来る人間は万年人手不足だからな……


新たな協力者―――武田裕子氏は妹の会社の上司であり、表の仕事でも

尊敬・信頼出来る女性のようだ。

この前も一緒に妖の討伐に向かい、狩る事に成功したとの事。


非常に良い。それに女性という事がこの上なく良い。

協力者とはいえ、悪い虫がつくんじゃないかと思っていたお兄ちゃんとしては

一安心だ。


だがそんな妹が最近、外泊をするようになってしまった。

聞くところによるとその女性上司と一緒に行動しているようだが……


それとなく探りを入れてみたが、『子供扱いしないで!』と怒られた。

ちょっとお兄ちゃんショック。


まあ加奈も立派な成人女性だ。

兄の自分がどうこう言う立場でないのは理解も自覚もしているが―――


それに男に会いにいくのであれば、上司同伴なんてしないだろう。

あまり心配性になるのも良くない。


……いや待て。


同世代の子と一緒に旅行とかならともかく、上司と一緒に

宿泊旅行なんてするだろうか。


確かに聞く限り男の気配は無い。しかし―――


加奈はその上司の人をとても尊敬・信頼出来ると言っていた。

『狩り』をする時も一緒だ。

通常、妖を相手にする時のパートナーは、それこそ命を預けられるほどの

絆が無ければならず……


ま、まさか……男の影が見えないという事は『そっち』に行って

しまったのか!?


そんな事、お兄ちゃんは許しません!

百合な展開は二次元だけで十分!!


次の宿泊時には尾行しなければ!

もし『そっち』の道に行ってしまった時は、何としてでも

引き戻さなければ……!


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