第89話・6人そろって


「あ~……やっぱり自然豊かだと空気が美味しいですねえ、武田部長!」


「ここで部長とは言わなくていいわよ。

 とにかく荷物を置かないと」


金曜の深夜―――裕子さんと弥月みつきさんが家に到着すると、眼鏡の女性は

二階へ、ポニーテールの子は土蔵へ向かう。


「じゃ、俺はこっちを」


「オラはこちらを持つだべ」


俺と銀はそれぞれの彼女のため、車から荷物を運ぶ。

まあこの作業も慣れたものだ。


俺の恋人である裕子さんは二階を自室としており、弥月さんは

川童かわこが寝泊まりしている土蔵二階にいつも泊まる。


同室ではあるがそれなりに広いので……

プライバシーは保たれているらしい。


そして荷物を置き終わった二人が戻ってくると、


「軽く何かお腹に入れるー?

 僕たちが作っておいたけど」


「裕子様に教えて頂いたおかげで、料理の腕も上がって

 おりますわ」


理奈と詩音が出迎え、同じ女性陣をいたわる。


「ありがとう。長時間の移動はこたえるから……」


「新幹線でも東京から3時間以上って、結構キツいです~」


会社を定時で上がったとしても―――

主要駅に到着してからさらにここまで、下手をすると0時近くに

なるものなあ。


最寄りの駅からレンタカーを借りて、小一時間くらいかかる場所だし……


「それよりすいません、いつも車で出迎えて頂いて」


「いいよ。いちいちレンタカー借りるのも面倒だろうし」


弥月さんが頭を下げてくるので、俺は気にするなと伝える。

せっかく足があるのだから、それでお金を使わせるのも

馬鹿馬鹿ばかばかしい。


「食べ終わったらお風呂に入って―――

 今日のところはゆっくり休んで」


「あ、それなら先にお風呂の方がいいかも」


「そうですね、早くさっぱりしたいし」


俺と裕子さん・弥月さんとのやり取りに理奈と詩音が、


「それはダメだよー。ゆっちー、加奈かなちゃん」


「就寝前の食事は美容の大敵だと、おっしゃっていたではありませんか」


二人の言葉に人間の女性陣は黙り込み……

先に食事をとる事になった。


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