第289話・調査05
「なあ、どうする?」
「何がだ?」
夜になり、例の調査に来た3人組は―――
旅館の一室で並んで布団に入りながら、天井を見上げていた。
「調査報告だよ。何て言えばいいのか……」
「見たままを言えばいいんじゃねーのか?」
「それであのジジイどもが納得してくれるかねえ?」
1人が口から、大きなため息と共に疑問を吐き出す。
「もう知ったこっちゃねーよ。
そもそもカップル組はすげー仲良さそうだったし」
「馬に蹴られるくらいなら、ジジイたちの小言の方がマシか」
「そもそも調査に来ただけだから、内容にケチつけられてもなー」
上層部のいないところで、彼らはのびのびと悪口を交わす。
「だが俺たちはいいとしてもよ。
お前のところの
「そーなんだよなあ……」
指摘された青年が、仰向けの体をうつ伏せにする。
「呼吸するようにアイツら、妖怪と会ったら即せん滅!
みたいな感じだからなあ」
「いや、実際俺みたいに若いヤツはそんな通り魔思考じゃねぇよ。
ただ親父の代から上はどうしてもなあ」
「はぁ……報告するの、気が重くなって来たぜ」
意気消沈する彼らは、誰からともなく上半身を起こし―――
「なあ、いっそあの鬼娘……
彼女だけにでもこっそり教えておかねぇか?」
「だが、まだ別に敵対すると決まったわけじゃない。
それで逆に鬼を刺激しちまったらどうする?」
「鬼との全面戦争になる可能性もある。
下手をすれば、情報を漏らした俺たちから、って事にも」
すると誰からともなく大きく息が吐かれ、
「うまく行かねぇなあ……」
その言葉に、他の2人も無言でうなずいた。
「なかなか難しい立場のようだにゃ」
「とかく浮世は生きづらいでござんすねぇ」
夜の旅館の中庭―――
そこにいたのは、
「何か同情します……」
さらに一つ目小僧もおり、彼らはそこで正確に情報を収集していた。
「取り敢えず
若い連中にゃ敵対する意図は無い事、また十六夜一族という
武闘派がいる事―――
そうザンバラ髪の青年が言うと、足元にいた狐たちがパッと散っていった。
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