第290話・調査06


「夜分遅くに申し訳ございませぬ。


 ですが一刻も早くお伝えしたいと思いまして―――」


野狐やこと思われる少女が、息せき切って話すのを手で制し、


「まあ、お疲れ様。取り敢えず飲み物を」


「まずは一杯」


「落ち着いてからでいーよー」


家にいた俺と裕子さん、理奈がひとまず玄関内で対応する。


「あ、ありがとうございます。


 メールでも良かったのですが、間違いの無いようにと」


「もともと状況確認を頼んでいたのはこちらだから。

 それは気にしないで」


俺は彼女にやんわりとフォローを入れると、


「そ、それと……

 本来ならぬし様に真っ先にお知らせするのが筋でしょうが、その」


それを聞いた俺・裕子・理奈は微妙な表情となり、


「例えメールでも、琉絆空るきあさんと一緒にいる状況の舞桜まおさんに連絡するのは

 ちょっとなぁ」


「この時間帯の2人に連絡を入れられる勇者はいないと思うわよ?」


「まあメールや着信があっても気付かない可能性の方が高いと思うけど」


こちらの言葉を聞いた野狐が、今度は微妙な表情となる。


「緊急でも無いし―――

 舞桜さん含め他のみんなには明日こっちから話しておくよ。


 どうせ朝食か昼食はみんなで食べる事になろうだろうから」


「はっはい! わかりました。

 それでは私はこれで……」


そこで『チーン!』と音が鳴って、


「?? 今の音は……」


彼女が首を傾げると、裕子さんが奥に行って、そしてすぐに戻って来た。

その手には紙袋の包みがあり、


「ハイ、これ。ネズミじゃないけどから揚げ」


「何人かで見張っているって言ってたからさー、差し入れ。

 みんなで食べてねー」


すると彼女はブンブンと頭を下げ、


「ありがとうございます!

 みんなも喜ぶでしょう!!」


そう言って紙包みを受け取ると、闇夜に消えていった。


そして残された俺たちはというと、


「まぁ、ちょうどいいインターバル? になったという事で」


俺が恐る恐る2人に視線を送ると―――


「まあ今回は仕方ありません。

 それに満浩みつひろさんがここの家主でもありますし……」


「お預けになった分、覚悟して欲しいなー」


妖しい目付きになった裕子さんと理奈を前に、俺は長い夜を過ごす事を

受け入れた。


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