第137話・場所決定


「なるほど。ここで弥月みつきさんのご両親と舞桜まおさんを

 会わせたいと―――

 俺としては、別に構いませんよ」


「ありがとうございます!」


「恩に着ますぅ~!」


東北の俺の実家で琉絆空るきあさんと加奈かなさん、兄妹が土下座せん

ばかりに頭を下げる。


「ミツ殿! 報酬はこれくらいでよいか!?」


見事なプロポーションの赤い肌の鬼娘が、ガチャガチャと

小判が入ったであろう箱を床に置くが、


「いやしまってください」


「し、しかしだな。

 アタイと琉絆空殿の両親の顔合わせの場を提供してもらったのだ。

 これくらいさせてもらわねば」


そこで裕子さんが割って入ってきて、


「以前、税務署に目をつけられていろいろあったんですよ。

 今のところは大丈夫ですから。


 何か困った事があれば頼らせて頂きますので」


彼女の大人の対応で、取り敢えず報酬は引っ込められる。


どうしてこうなったのかというと、弥月兄妹の両親に舞桜さんを紹介する事が

決まった後、


あやかしは自らの縄張りや住処すみかを離れられない事情がある者もいるので、

会う場所はそちらに合わせる、とご両親が言ってきたらしい。


確かに舞桜さんはここ一帯の妖のぬしであるため、そうおいそれと現場を

離れるわけにはいかなかったのと、


覚醒した理奈・銀・詩音の代わりになるような野狐やこたちの育成には

未だ間に合っておらず、


そうなると覚醒人外3人組を残して、舞桜さん単体で出向くしか無いわけだが、


「うぅう~……理奈、詩音。

 両親と会う時は側にいてくれ、絶対じゃぞ」


「わ、わかっていますって」


「『協力者』でもありますし―――」


鬼は倉ぼっこと野狐の着物のすそを握って離さない。

この手の事は初めてなので、同性の味方が欲しかったようだ。


「オラはどうするべか?」


川童かわこである銀がたずねると、


「銀様は話の流れによっては……ですかね。

 主様とお兄ちゃんが付き合い始めた後、私も―――

 という流れが望ましいですけど」


褐色肌の青年の妖はふむふむとうなずく。


「ま、どちらにしろトレーラーハウスで会うのはどうかと俺も

 思っていたし……


 この家は広さだけはあるからな。

 その日が決まったら教えてくれ。いろいろと準備もあるから」


それを聞いた弥月兄妹と舞桜さんはまた頭を下げ―――

『その日』を待つばかりとなった。


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