第4話・生活費×3


「ふようかぞく?」


「って何だべか」


倉ぼっこと川童かわこが同時に首を傾げる。


「要は俺がお前たちを養わなければならないって事だよ」


実際、都会に住むより居住費は格段に下がったしそれまでの蓄えもある。

だけどさすがに誰かを養うまでは想定していない。


一応正社員ではあるが、何せこのご時世のソシャゲー業界。

給料は安いしボーナスは雀の涙で、何かの拍子に会社の仕事が無くなれば

あっという間に生活が傾く。

実際、この前同期のプロジェクトが2つ爆死したのを見ているしな……


「そういや、飯は今までどうしてたんだ?」


人間の食事は久しぶりという事だったけど、じゃあいったいそれまで

何を食べていたのか疑問に思い聞くと、


「まあ基本食べなくてもいいんだけど。お腹減らないし」


「普段は木の実とか川の魚とかカニとかだっぺなぁ。

 昔は馬を水中に引きずり込んで食べた事もあったべ」


両極端過ぎるだろ! と思うのと同時に―――

さすがに川童かわこだけ食べさせて倉ぼっこは無視、

というわけにもいかない。


「でも、家にいてもいいの?」


不安気に俺の顔を見上げる少年に頭をかきながら、


「爺さんに最後まで寄り添ってくれていたんだろ?

 それを追い出すってのはさすがに薄情だからな。


 出来る事があればやって欲しいけど……

 そういやお前たち、何が出来るんだ?」


俺の質問に2人は考え込んで、


「僕はアレかなー、倉や家を守る能力? あと幸運?」


現時点で俺が幸せじゃない気がするのは何故かな。

いきなり無駄飯食らいを2人抱える事になったんだし。


「オラは川の生き物を捕まえられるっぺよ。

 あと相撲なら負けないべ!!」


川童は食材調達ならある程度役にたちそうか。

完全ニート扶養状態にはならなそうだ。


俺は少しホッとすると、


「そういえば川童、もう少し匂いどうにかならねーか?」


急に五感が戻って来たかのように鼻が匂いを認識する。

あまりにいろいろな事が引っ越し初日からあり過ぎて、

知覚出来ていなかったのか……

地味に生臭さが漂っている事に気付いてしまった。


「ふ、風呂に入れさせてもらえれば少しは匂いが取れると思うっぺ」


「そっか! お風呂も入れるんだー♪」


そう倉ぼっこが喜ぶ姿を見て―――

今後は光熱費もかさむなあと思いつつ、とにかく今日は休む事に決めた。


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