第111話・お試し
「ど、どうしても行かねばならぬか?」
「じ、自分もまだ早いと思うのだが」
鬼っ子と
3時間ほど後―――
ようやく一階に降りて来た彼女たちと食事を済ませると、
二階での話し合いで何が決まったのかを知らされた。
要約すると、鬼っ子の方は自分の貧相な体に自信が持てない。
今度はそれが彼の好みであるかどうかという不安がある。
それを思い切って琉絆空さんに告げたところ、
『どんな体形になっても貴女が好きです!!』と断言されたのだが、
女性陣としては、それが愛するゆえの妥協かどうかという話になり、
『もういっそ、一度試してみたらどうでしょうか』
と、裕子さんが投げやりになって言ったところ、それに
同意し―――
互いに好き合っているのならば、と、鬼っ子の住まうトレーラーハウスに
送り出す事にしたのである。
確かに一度肌を重ねてみればいい、というのは暴論ではあるが、
それでも一目惚れした状態での経験は思い出になるだろうし、
既成事実にもなるのだから、万が一体形が大きく変わっても関係に
ヒビが入る事は無いだろう。
問題はこうまで夜の生活がダダ漏れ過ぎる事だが……
女性陣が中心になって進めている事なので、あまり介入はしないでおこう。
「でもまあ、重要な事です。
いくら人間と体力や力が異なるとはいえ、出来る事と出来ない事が
ありますから」
「そういう確認でもあるんです。
それでもし無理でしたら、改めて名前を付ける―――
という事でいいでしょう」
俺と裕子さんが並んで語り、
「兄貴、ちゃんとリードしてあげてね。
女と付き合った事が無くても知識くらいあるでしょ」
「
彼の妹の言葉を、銀がたしなめる。
「では主様―――」
「ご武運を……!」
理奈と詩音が二人に話しかけ、それを最後に主様と
山に向かって去っていった。
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