第110話・弥月加奈視点05


「あ~……」


「お~……」


あれから早くも一時間が経過しようとしていたけど―――

これといった決定打は出て来なかった。


ぬし様の悩みは一人の同性としてわかる。

愛する人にしてあげられる事なら、何でもしてあげたいと思うのが当然。


私も部長ももう成人しているので、多少の差はあれど、たいていの事は

出来るだろう。

だけど彼女は自ずから身体的制限がつく。


「ま、まあでも……

 体格差のある方が出来るプレイ? も多いですよね?」


「それにもともと主様は小柄でありますれば、命名により成長したところで

 影響もほとんど無いのでは」


理奈さんと詩音さんが言葉を選びつつ鬼である主様に話すが、

彼女の表情は複雑だ。


確かにそこは究極の選択でもある。

私も銀様が望むのであれば、と思えるけど―――

そのために今の体形を捨てる決心が出来るだろうか。


そりゃ一方的にされるのが好きな人もいるにはいるだろうけど、

私としては愛し愛される関係でありたい。


「いっそ、弥月みつきさんのお兄さんに聞く事が出来たらいいんですけど」


武田部長が解決策を提示してみるが、


「んなっ!? ななな、でもそれは……あうぅう~」


彼女は赤い顔をさらに真っ赤にさせて、慌てふためいて口ごもる。

うん。この子にドストレートに聞く事は多分無理だろう。


「でも条件としては、『地位がある』というのはクリア出来て

 いますよね?」


「とすると後は―――

 どこらへんまでが彼の許容範囲内なのか、という事になります」


人外である二人も、部長の案を推すように続ける。

そこで私は軽くため息をついた後、


「仕方ないですね……

 ここはひとつ、兄貴と主様、お二人に覚悟を決めてもらいましょう」


私の言葉に、同室の4人の視線が集まり―――


「あ、アタイにもか!?」


当事者である鬼っ子に、私はうなずいて返した。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る