第109話・守備範囲
「おー、これが彼らの戸籍ですか」
週末となり、今度は裕子さん、
最寄りの彼らを駅で出迎え車に乗せると、信号待ちの間に俺に見せてくれ、
「まあ戸籍を常に持ち歩くのも変でしょうから―――
これをもとに、マイナンバーカードか顔写真付きの何かの証明書を
作ろうかと」
「そうですね。
でもこれで人間社会で生きていくのは、各段に容易になるでしょう」
「あ、そういえば顔写真のための写真も撮らないと」
「確か
そんな会話を彼らとしながら、俺の車は山中の実家へと走った。
「ま、待っておったぞ」
「あれ?
自宅に到着すると、あの鬼っ子が待ち構えていて、
「待っててくれたんですかー!!」
と、
横にかわしたかと思うと、
「二人とも、ちと相談に乗って欲しいのじゃ!
あ、理奈と詩音もついてまいれ!!」
「?? はい?」
「え、ええ」
そう言って彼女は弥月さんの妹と裕子さんを両手で引っ張ると、
そのまま二階へと上がっていき、
「えーと……」
「大丈夫だべか、お兄さん」
顔面から地面に突っ込んだ彼に、俺と銀が心配で声をかけた。
「あー、兄貴に名前を付けて欲しいと」
「そ、そうなのだ。だがちと不安があってな」
「それはどういう―――」
二階、いつも武田氏が泊まる部屋に女性陣(一部男の娘)が集まると、
さっそく鬼から
「もしアタイが名付けられ、ぱわーあっぷし……
『ぼんきゅっぼん』となるならそれでよい。
アタイもそれを望んでおる。
じゃがそれを琉絆空殿が望んでおるかどうか―――
それが気になってのう」
その問いに彼女たちは顔を見合わせる。
「確かに兄貴、外見は年下好みだろうけど」
「好みの属性がややこしいんでしたっけ?
地位があって頼りがいのある、しかし外見は幼いお姉さんとか」
「なるほど。ボンキュッボンになった時、彼の好みから外れて
しまうんじゃないかと」
「主様はそれを恐れているのですね」
悩みが具体的に伝わったのか、彼女たちはう~んと眉間にシワを寄せる。
「実際、どれくらい変わるんですか?」
弥月の問いに武田が口を開き、
「確か、理奈さんは小学校高学年くらいから中学生くらいに……
詩音さんは中学生くらいから高校生くらいになりました」
そこで理奈と詩音の人外二名が鬼っ子に視線を向け、
「となると、今から2・3才程度成長するって事?」
「でも人間からすると、その年頃の数年は大きいですから」
二人の言葉に彼女はため息をついて、
「そこが問題なのじゃ。
あの時彼がアタイに告白したのは、好みがど真ん中だったからと
いうのもあろう。
それをこちらでわざわざ変えるというのも―――」
そこから意見が飛び交い、話し合いは長期化する様相を見せた。
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